日本人はチームプレーが得意といわれています。スポーツでも、個人戦より団体戦でより高い成果をあげる例があります。チームビルディングは、人材の寄せ集め集団をハイパフォーマンスのチームへと変貌させる手法です。
目次
1.チームビルディングとは
2.成功するチームの特性
2-1.心理的安全性
2-2.相互の信頼性
2-3.目標と計画の共有
2-4.目標の価値を信じられる
3.公私ともに役立つチームビルディング
1.チームビルディングとは
チームビルディングとは、一人ひとりが主体的に個性や能力を発揮しながら、ゴールをめざす組織づくりの取り組みです。コミュニケーションを円滑にしたり、チームメンバーの役割分担を明確化したりすることで、組織に一体感が生まれ、目標達成への推進力が強化されると注目されています。
日本の会社組織では、チームと似た意味の「グループ」が使われますが、この2つは「共通の目的、目標」の有無によって区別することができます。一般的には、共通の目的・目標を持っているのがチームであり、持っていなければグループです。部署名として「グループ」という名称を使用している場合も、本質としては「チーム」である場合があります。チームビルディングの目的は、組織のパフォーマンス向上であり、そのために、コミュニケーションの活性化、組織のビジョン共有、協力して目標達成するマインドを形成するためのアプローチが必要です。
メンバー一人ひとりがチームの目的とメンバー個々の役割を認識し、目標達成に向けて互いにサポートしあえる関係を築くこと、問題を解決できる組織になることが期待できます。
<チームビルディングのアプローチ>
①目標の共有と調整
②チーム内の関係構築
③メンバー個々の役割の明確化
④チーム内の問題解決の発見
2.成功するチームの特性
Google社は、人事戦略へのデータ活用に積極的であることで知られています。Google社は、2012年から約4年かけて、プロジェクトアリストテレス(Project Aristotle)という調査を行いました。生産性の高いチームの共通点の洗い出しと成功因子の見きわめを目的とし、同社内のプロジェクトチームの活動成果と所属メンバーの言動を細部に至るまで調査分析しました。そうした調査などから、成功するチームの特性と言われている要素をご紹介します。
2-1.心理的安全性
心理的安全性とは、チーム内で安心して本来の自分を出せると感じられる状態や雰囲気をさします。心理的安全性があれば深い話し合いや議論を行うことができます。
・自分の意見やアイデア、質問や感情などを気兼ねなく発言できる
・自分のミスを認めることができる
・自分とは異なる意見であってもお互いに受け入れる土壌がある
2-2.相互の信頼性
仕事への意欲や能力を共有する仲間として、メンバー同士が信頼し合うことが不可欠です。メンバー間の信頼関係がない状態では、仕事の相談や依頼が難しくなります。
2-3.目標と計画の共有
「チーム全員が同じ目標に向かって頑張っている」という意識を共有することです。全体の目標や計画だけでなく、メンバー個々の目標や計画も共有され、共通の認識が保たれていることが大切です。その意識があるからこそ、自分とは異なる意見を尊重できるのです。
2-4.目標の価値を信じられる
「チームの仕事が社会や事業に対して良い影響力を持つ」と信じられることが、仕事へのモチベーションを高めることにつながります。
チームビルディングの理論としては、心理学者のタックマンによる「タックマンモデル」が広く知られています。タックマンが提唱した原典では、チーム形成の段階は4段階でしたが、現在では5段階とされています。 人材の寄せ集めに過ぎない集団が、これらのプロセスを通過することで「チーム」になるという理論です。この理論を応用し、課題やアクティビティなどを通じて、チームビルディングを体験する研修を取り入れる企業も増えています。
Froming | 形成 | メンバーが互いを理解せず、共通の目的などもわからない。模索している状態。 |
Storming | 混乱 | 目的、各自の役割と責任などについて意見が交わされる。 状況によっては対立も生まれる。 |
Norming | 統一 | 行動規範が確立される。各々の考え方が受容され、目的、役割、期待などが一致する。チーム内の関係性が安定する。 |
Performing | 機能 | 結束力と一体感が生まれる。チームの力が目標達成に向けられる。 |
Adjourning | 散会 | 時間的な制約、事態の急変、目的の達成などの理由で、メンバー間の相互関係を終結する。 |
3.公私ともに役立つチームビルディング
個人主義といわれる欧米でも、組織開発や人事制度にチームビルディングの考え方が取り入れられています。企業の成長には、個人の能力だけでなく、チーム単位で生産性をあげていくという考え方が主流になりつつあります。イノベーションや社会環境が加速する現代社会では、個人よりもチームで価値を共創することが有効と考えられるようになってきています。
個の力をチームに集約させる理論ですから、スポーツやボランティア活動など、ビジネス以外でも活かせるでしょう。チームビルディングを通して、多様性への理解や受容性、対人スキルなどが身につくことで人間力の向上も期待できます。
プロフィール
Misa
ITベンチャーで企画、人材開発、広報などを経て独立。現在はコンサルタント、ときどきライター。ライターとしては、IT系以外、アニメ・マンガ、車から美容・健康まで何でもチャレンジ中。