小学館新書『上級国民/下級国民』が、ベストセラーとなっています。『言ってはいけない』シリーズも話題の人気作家・橘玲氏が、世界レベルで現実に進行する分断の正体をあぶり出す内容となっていますが、その分断の正体とは何なのでしょうか。そこには、現代社会を生きる苦しみが、「知識社会化・リベラル化・グローバル化」からきていることが明確に示されています。
「いったん「下級国民」に落ちてしまえば、「下級国民」として老い、死んでいくしかない。」
橘氏は「まえがき」で、「いったん「下級国民」に落ちてしまえば、「下級国民」として老い、死んでいくしかない。幸福な人生を手に入れられるのは「上級国民」だけだ──。これが現代日本社会を生きる多くのひとたちの本音だというのです」と記しています。
「下級国民」が生まれるに至ったのは、何が原因なのでしょうか。橘氏は、上流/下流は「学歴格差」とし、大卒か非大卒で幸福度が異なっている現状を指摘しています。
また、異性との関係も、「モテ」と「非モテ」で分断されているとしています。「年収の低い男は結婚できない」とし、今の日本は、実質上の"一夫多妻制"であると分析しています。
世界的レベルで進んでいる分断
では、こうした分断は日本だけのものなのでしょうか。橘氏は、世界を揺るがす「上級/下級」として、分断は世界的レベルで進んでいると指摘します。
そのキーワードは、「知識社会化・リベラル化・グローバル化」です。リベラルとは「自由」のことです。現在の先進国では、「自由主義」に基づいて、国家が運営されています。「自由主義」は企業活動に多くの利益をもたらしてきましたが、個人にとって自由とは、「自己責任」が伴います。つまり、自由になった分、国家はあまり面倒を見てくれなくなり、お金儲けの才能や技術のある人はどんどん富裕化していく一方、そうでない人は、貧困化していくというのです。
さらにそれに輪をかけるのが、「知識社会化」です。現代は、テクノロジーがものすごい勢いで発達していますが、それを人間が使いこなすには、それ相応の知識が必要となります。ですが、そのテクノロジーの進歩についていけなくなっている人が増えているのが現代です。
本書を読んで感じて最も恐ろしいと感じるのは、この「知識社会化」です。本書では、アメリカのトランプ大統領選出、イギリスのブレグジット(EU離脱)、フランスの黄色ベスト(ジレジョーヌ)デモなど、ポピュリズムは「知識社会への抵抗運動」であるとし、欧米社会を揺るがす出来事はどれも「下級国民」による「上級国民」への抗議行動だとしています。
ぜひ、本書を手に取って、現代社会の危機の真相を、多くの人にしってほしいと思わずにはいられません。
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