グローバル・リンク・マネジメント(GLM)が2019年1月1日に設立した「グローバル都市不動産研究所(以下、同研究所)」は、調査・研究の第二弾として、東京都などへの人口流入について分析した結果を発表しました。
3大都市への人口流入・流出の状況(2018年)
3大都市(東京都・大阪府・愛知県)への転入・転出超過数を見ると、東京都は8万2,774人の転入超過となっており、前年に比べ7,276人拡大しています。一方、大阪府は5,197人の転入超過、愛知県は2,159人の転入超過となりました(図1)。
東京都は1997年以降、22年連続で転入超過しています。一方、大阪府および愛知県の転入超過数は2009年以降1万人を超えることがなく、東京都への人口集中が加速していることが分かります。
【図1】 3大都市の転入超過数の推移
東京都への人口流入の状況、女性が男性を大幅に上回る
東京都への転入超過数は2009~2012年は一旦落ち込みましたが、その後急激に増加しています。男女別に見ると、1997年以降の男女の転入超過数はほぼ同数でしたが、2009年以降は女性が男性を大幅に上回るようになりました(図2)。
東京都への転入・転出超過数を年齢階層別にみると、15~29歳の年齢階層が大きく転入超過となっています。これは進学・就職を機に東京都に流入したことが想定されます(図3)。
20~24歳の年齢階層に着目すると、この年齢階層の女性を中心に転入が年々増加し、転入超過数も女性(30,667人)が男性(25,216人)を大きく上回っています。この結果から、20~24歳の女性の転入が、東京都への転入超過数増加の重要なポイントとなっているといえます(図4)。
【図2】 東京都への転入超過数の推移(男女別)
【図3】 東京都の年齢階層別転入超過数(2010~2018年)
【図4】 東京都への転入・転出状況(20~24歳)
地方から政令市へ、政令市から東京都へ
地方の中心的な都市である政令指定都市(札幌市、仙台市、名古屋市、京都市、大阪市、岡山市、広島市、福岡市など)では、地方の郊外から人口が流入しています。しかし、政令市からも東京都に対して転出超過となっています。とくに札幌市、仙台市、福岡市などでは女性の転出超過が高い結果となりました(図5)。大学進学を機に政令市に引っ越し、就職のときには東京都に転出していくパターンが多いと推測されます。
【図5】 政令市から東京都への転入超過数(20~24歳、男女別)
東京都に上京した理由、女性は「新しい生活をはじめたい」「都会への憧れ」が高い結果に
上京経験のある男女を対象にGLM独自に意識調査を実施しました(※1)。これによると、東京都に上京した理由・上京するにあたって重視したことは、学生時代に上京した人も含まれるため、「東京に進学したい大学や専門学校があったから」(39.8%)が最も高く、「東京で働きたかったから」(25.2%)、「異動や家族の都合」(20.6%)と続きました。
男女別でみると、女性は男性と比較して「新しい生活を始めたいと思ったから」、「地元や親元を離れたかったから」、「都会に憧れがあったから」、「交通の便が良いから」、「趣味をより楽しみたかったから」が特に高い結果となりました(図6)。
【図6】 東京都に上京した理由・重視したことは何ですか?(複数選択可)
地元の就職先を選ばなかった理由、女性は「東京都で仕事をする」「親元や地元を離れる」を重視
同研究所では現在東京都で働いている人に対し、地元の就職先を選ばなかった理由を調査しました。その結果、男女ともに「東京都で仕事をしたかったから」(48.8%)、「東京都で暮らしたかったら」(33.1%)が多く、男女で比較すると男性は「東京都で仕事をすること」をより重視し、女性は「親元や地元を離れること」をより重視していることが分かりました(図7)。
【図7】 地元の就職先を選ばなかった理由は何ですか?(複数選択可)
東京に住む場所を考えるときは、女性は「日常生活のしやすさ」「治安の良さ」を重視
同調査によると、東京に住む場所を考えるときに重視したことは、男女ともに「都心や仕事場に近く通勤時間が短いこと」(55.4%)、「鉄道の最寄り駅に近いこと」(39.4%)が多く、アクセスを重視していることが分かりました。女性は「買い物などの日常生活がしやすい」、「治安が良く安心・安全」、「家賃が手頃な価格か」を特に重視する傾向がありました。
20代上京者のうち、約半数が将来地元に戻る予定はない
同調査によると、現在東京都に在住している対象者のうち、男女ともに全体の約半数にあたる46.4%が「将来地元に戻る予定はない」と回答。特に女性の方が東京に残りたい傾向にあることが分かりました。「具体的な時期は未定だがいつか戻りたいと考えている」は20.4%という結果になりました。
地元に戻りたい理由、女性は「東京での暮らしに疲れたから」がトップに
「将来地元に戻りたい」と回答した対象者の理由を調査したところ、女性は「東京での暮らしに疲れたから」が最も多いことが分かりました。また、男性は女性と比較して、「Uターン就職・転職のため」、「インターネットを使ってどこでも仕事ができるから」が多い結果となりました。
(※1)調査対象:上京経験のある東京都在住の20~29歳の男女を対象に、インターネットによるアンケート調査を実施
調査期間:2019年9月13日(金)~9月19日(木)/有効回答数:500人(男女250人ずつ)