分断される日本<br>―住民の満足度は千葉など大都市圏が高く、<br>東北が低い結果に

分断される日本<br>―住民の満足度は千葉など大都市圏が高く、<br>東北が低い結果に

ブランド総合研究所は、住民目線による悩みや社会の課題、および幸福度や定住意欲度に関する「地域版SDGs調査2019」を実施した結果を発表しました。

「地域版SDGs調査」は、住民が感じている「悩み」、「社会の課題」について全100項目と、幸福度や定住意欲度、満足度などからなる調査を都道府県の住民を各350人、計約16,000人の回答を集めて実施、都道府県別に数値化したもので、日本の地域が直面している課題を明らかにし、それに取り組むことで住民の満足や幸福感を高め、地域の持続性を高めることを目的としています。

住民の最大の悩みは「低収入・低賃金」

自分や家族の問題として抱えている悩みがあるかを、16のジャンル(SDGsのゴール)の内容をもとに独自に設定した48項目の中から選んでもらったところ、83.2%の人は1つ以上の悩みを抱えており、回答者1人あたりでは3.36個の悩みを抱えているという結果になりました。なお、「不安や悩みはない」と答えた人は16.8%でした(数字は47都道府県ごとの結果の平均)。

悩みの中で最も多かったのは「低収入・低賃金」で35.8%、次いで「ストレス」、「貯蓄・投資」、「運動不足」がいずれも20%以上となりました。SDGsのゴール(ジャンル)別では、「(1)貧困」、「(3)健康・福祉」に関連する項目で上位10を占めており、国内の住民視点でSDGsの16のゴールを考えたときも、これらの項目が重要であるという結果になりました。

なお、選んだ悩みの中で「特に深刻に感じている」ものを聞いたところ、最も多かったのは「低収入・低賃金」で23.8%。これは悩みとして「低収入・低賃金」を選んだ人のうち3人に2人に相当しています。

悩みが最も多い県は秋田県--秋田含め10位以内に東北5県

住民の悩み48項目のうち、回答者が1人当たり何個の不満や悩みがあるかの個数を算出し、その数の多い順に並べたところ、最も多いのは秋田県で、1人あたり4.26個でした。岩手県、山形県が4位、福島県が7位、青森県が9位と東北の各県ともに悩みの件数が多かったです。秋田県は「低収入・低賃金(46.0%)」が半数に迫り、「貯蓄・投資(34.0%)」、「ストレス(31.1%)」が3割を超えています。悩みが最も少ないのは愛知県で、2.51個でした。同県は「不安や悩みがない」と答えた人が27.4%で、これも全国で最も多い結果となりました。悩みが少ない県としては神奈川県、大阪府、兵庫県、埼玉県、東京都など大都市圏に位置する都府県が多く並んでいます。

社会の課題は「少子化」がトップ

「社会として取り組むべき課題だと思うもの」を聞いた設問では、85.8%は社会が取り組むべき課題があると答えました。具体的な課題として、同様に16のジャンル(SDGsのゴール)をもとに独自に設定した48項目の中から選んでもらったところ、1人平均では5.28個が選ばれ、その中で最も多くの人が指摘したのは「少子化」で27.5%。「人口減少・過疎化」、「高齢化」、「老老介護」など上位4つが少子・高齢化に関する課題となりました。次いで、「いじめ・校内暴力・学級崩壊」、「働き方改革」、「自然災害(地震・津波・台風・竜巻等)」がいずれも20%を超えました。

20%が生活に不満--満足度1位は千葉県

現在の生活について「満足しているか」聞いたところ、13.1%が「とても満足」、46.0%が「おおむね満足」と答えるなど、6割近くが「満足している」と答えました。一方で、「全く満足していない」が6.3%、「あまり満足していない」が14.0%など計20.3%が「満足していない」と答えています。

年代別で満足度が最も高かったのは60代以上で、12.8%が「とても満足」、57.2%が「おおむね満足」と答えるなど、合計で70%が生活に満足しています。

次に高かったのは20代で「とても満足」との回答は18.1%と60代以上よりかなり多くなりましたが、「おおむね満足」が45.3%と60代以上より少なくなりました。満足度が最も低かったのは40代で、次いで50代でした。

都道府県別で最も満足度が高かったのは千葉県で、次いで兵庫県、埼玉県・愛知県、滋賀県・福岡県の順(埼玉県と愛知県、滋賀県と福岡県はいずれも同順)で、大都市圏の都府県の順位が高い一方、秋田県など東北の各県が全般的に低い結果となりました。満足度と、上記の「悩み」の中で「電車やバスの路線廃止・減便」との相関係数は-0.71、「病院・医療施設の不足」は-0.70といずれも強い負の相関があり、これらの項目が満足度を低下させる影響が大きいことが推測されます。

定住意欲度は地方に課題

現在居住している都道府県に「今後も住み続けたいと思うか」を聞いたところ、37.6%が「ぜひ住み続けたい」、32.5%が「できれば住み続けたい」と答えるなど、7割以上が「住み続けたい」と答えました。一方で「すぐにでも他県に移住したい」が3.1%、「機会があれば他県に移住したい」が10.0%など計13.1%が「移住したい」と答えています。

年代別では、年代が高いほど定住意欲が高い傾向になりました。「ぜひ住み続けたい」と答えたのは、60代以上では48.9%に対し、20代では31.8%でした。都道府県別では北海道がもっとも高く、次いで福岡県、大阪府、沖縄県という順になりました。一方で、東北や北関東、山陰地域の各県が低く、持続性への課題が大きい可能性があることが分かりました。

なお、定住意欲度でも満足度と同様、「電車やバスの路線廃止・減便」や「病院・医療機関の不足」の項目と強い負の相関があり、これらが定住意欲度を低下させる影響が大きいことが推測できる結果となりました。

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