気象庁の3カ月予報によると今年の夏は平年並みの暑さという予報がでています。また、エルニーニョが発生しているので、猛暑にはならないという予測もある一方で、気象のおかしい昨今では平年並みといっても、焼けつくような暑さにゲリラ的に降るスコール。日本はほとんど温暖湿潤気候と言われていますが、これはもう亜熱帯的な暑さに感じられます。
そんな、過酷な夏に気をつけたいのが熱中症。ともすれば命の危機にさらされる怖いものです。夏が本格的になる前に、熱中症についてよく知って対策をしておきましょう。
まずは、熱中症の基本を押さえよう
熱中症は、高温多湿な環境に、私たちの身体が適応できないことで生じるさまざまな症状の総称。症状としては、めまいや顔のほてり、筋肉痛や筋肉のけいれん、体のだるさや吐き気、汗のかきかたがおかしいなどがあげられます。ひどい場合には、呼びかけに反応しない、まっすぐ歩けない、水分補給ができないなどの症状が現れ、医療機関の受診が必要になることもあります。
こんなシーンは要注意!
(1)屋外での仕事
屋外で長時間にわたり作業をする場合、夏場は常に熱中症の危険と隣り合わせであることを意識するようにしましょう。たとえば、建設業、製造業、運送業、警備業、商業、清掃などの職業に従事している人は特に注意が必要です。つなぎなど通気性の悪い衣服やマスクなどの保護具を着用しなければならなかったり、無風の場所で作業する必要があったりと、熱中症になりやすい悪条件が揃っているのです。
(2)スポーツをしている時
スポーツをしている時には、動かした筋肉が熱を発するため、熱中症の危険がより高まります。 湿度と気温の高い夏場には、そうした熱が発散されずにこもってしまいます。夏場の環境で運動する際には、水分補給をこまめにとったり、運動の方法を変えたりするなど、注意を払う必要があるでしょう。屋内スポーツや気温が高くない場合でも、湿度が高く風通しの悪い環境であると十分に熱中症になる危険がありますから、油断は禁物です。
(3)室内でも要注意!
室内でも気温と湿度が高い環境では、熱中症にかかりやすくなります。自宅などでも、キッチンでは火をつかったとき熱と湿気が発生して、熱中症になりやすい環境が生まれてしまいます。また、お風呂場・洗面所にも要注意です。洗濯機や乾燥機などの熱や湿気もこもりやすい環境ですから、掃除などで長時間過ごす場合にはエアコンを強めにかける、窓をあけるなど気を付けるようにしてください。
具体的に危なかったケースってどんなもの?
熱中症に気をつけるべき場面は多くありますが、特に油断しがちなのがお酒をのんでいるとき。私たちの身体は、水分補給と発汗などを通して、体に入ってくる水分と出ていく水分のバランスをとっています。過度な発汗などでこうしたバランスが崩れた状態が脱水症。
この脱水症が熱中症を引き起こす一因になるのですが、飲酒によりこの状態を招きやすくなります。アルコールによる利尿作用によって水分がどんどんと出て行ってしまううえに、アルコールを分解するには水分が必要で、どんどんと脱水が進んでしまうからです。
ですが、暑い夏にはキンキンに冷えたビールなど、ついついお酒がすすんでしまうもの...。たとえばこんなシーンには注意して。
- 皇居ランを走り終えてホッと一息...
熱中症対策は万全! 皇居ランを走り終えていい気分になった日には、ビールの一杯でも飲みたくなりますよね。しかし、油断は禁物。疲れている体に自覚がないままお酒を体に入れてしまうと、アルコールの作用も相まって熱中症にかかる危険が高まります。 - ビアガーデンで盛り上がりすぎて...
夏といえばビアガーデンで楽しむが定番ですよね。ビアガーデンは、場所にもよりますがせまいスペースに人も多く風が通らず、ジメジメしているところも。そうした環境にお酒がプラスされると、思いもよらず熱中症になってしまうかもしれません。 - BBQ(バーベキュー)奉行に精を出していたら...夏のレジャーの定番一つBBQ。思わずお酒がすすむ楽しいイベントですが、炎天下、火の近くと熱中症にとって悪条件が揃っている中、お酒を飲むことは危険だと自覚して。みんなのために、せっせと肉を焼いている間に、あなたの体からどんどんと水分が奪われているのです。
熱中症を予防するにとるべき対策とは?
熱中症を予防するためには、まず暑さに負けない体作りが大切。熱中症の危険が高まる夏前から、運動をするなどして基礎体力を高めておきましょう。また、普段の食事や睡眠などの生活習慣の見直しをすることも有効です。
本格的に暑くなってきたら、暑さを和らげるために身の回りの環境を整えることを意識して。空調を適切に使って室内の温度を快適に、涼しい服を身につけるなどをすれば、熱中症にかかりにくくなります。また、屋外にいる場合には直射日光を避けることも重要。積極的に日陰にはいるなど、熱中症対策行動を習慣化してリスク回避しましょう。
また、スポーツ時や仕事中などどうしても熱中症にかかりやすい環境にいる必要がある場合には、適度な水分と塩分の補給をおこない、こまめに休憩をとるようにするなど工夫するようにしてください。
それでも熱中症にかかったらどうする?
熱中症が疑われる場合には、まずは空調の効いた屋内など涼しい場所へ移動しましょう。屋内が近くにない場合には、風通りのよい日陰に移動し安静にして。体を冷やすには、衣服をゆるめて、体の熱を逃す必要があります。さらに氷枕や保冷剤で両側の首筋やわき、足の付け根などのポイントを冷やすと、より体温が低下します。また、体に水をかけて、風を吹きかける方法も効果的です。
飲むことができるなら、極力水分を取る必要があります。特に、スポーツドリンク、経口補水液などを飲むようにして。ただし、第三者が熱中症にかかり、おう吐や意識がないなど、症状がひどい場合は、水分を飲ませると喉に詰まってしまうことがあるので避けるように。応急処置を施して救急車を呼ぶことが先決です。
自分は大丈夫だと思っていても、さまざまなことが原因となって熱中症にかかってしまうことがあります。予防方法や対処法などをしっかりと知っておき、自分の体が危険な状態にならないよう注意して夏を快適に過ごしましょう。
プロフィール
回遊舎(かいゆうしゃ)
"金融"を専門とする編集・制作プロダクション。お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで一手に引き受ける。マネー誌以外にも、育児雑誌や女性誌健康関連記事などのライフスタイル分野も幅広く手掛ける。
近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」、「J-REIT金メダル投資術」(株式会社秀和システム 著者酒井富士子)、「NISA120%活用術」(日本経済出版社)、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点10」(株式会社ダイヤモンド社)、「子育てで破産しないためのお金の本」(株式会社廣済堂出版)など。