長澤まさみさんのキャリアデザインに見る、<br>幸せに生きるための選択・本気力とは?

長澤まさみさんのキャリアデザインに見る、<br>幸せに生きるための選択・本気力とは?

2019年上半期の映画興行収入ランキング、特に目を引く長澤まさみさんの活躍

今年に入りすでに半年以上が過ぎ、この間、明るい話題から暗い話題に至るまで、様々な出来事がありました。エンターテインメントの世界においても、悲喜こもごも、多様なニュースが報道されましたが、そうしたなかで、映画の世界に焦点を当てると、今年前半は『飛んで埼玉』のヒットを始め、明るいテーマが多かったように思います。

2019年上半期の映画興行収入ランキングベスト10では、興収100億円を超えた『アラジン(実写版)』を筆頭に、ワクワクする作品のランクインが目立ちます。そして、このランキングで特に目を引くのが、ある女優さんの活躍です。4位の『キングダム』、6位の『マスカレード・ホテル』10位の『コンフィデンスマンJP』と、いずれも主役もしくは主要な役を演じているのは長澤まさみさんでした。

長澤さんは半年で3本の作品に出演し、しかもジャンルはバラバラ、そのどれもがヒットするという偉業をさりげなく成し遂げていたのです。『キングダム』での出で立ちも素晴らしかったですが、コメディエンヌとしての力量を発揮した『コンフィデンスマンJP』の存在感と言い、どの物語においても、熱い女優魂と本気度の高さが感じられ、スクリーンの中の長澤さんを観ていると、ドイツの詩人・ゲーテの言葉が浮かんできてしまいました。

『君は本気で生きているのか?』
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ (ドイツの詩人・劇作家・小説家)

いったいどれだけの人が「はい」といえるだろう?
日々を惰性のまま生きてはいないと、
胸を張って全力で、ゲーテに答えることができるだろう?
「君はどうなんだ?」「もちろん、自信なんかないさ」
そうだよ、そう答えるのが当たり前だよ。
心の中で君はそう叫ぶ。そしてまた明日から、惰性で送る日常にまみれる。
でも、本当にそれでいいのかい?限られた人生を、一度は本気で走ってみないのかい?
長いようで短い、本気で走れる時間なんて。
だから必死で走ろうよ。今この瞬間で構わないから。
本気で走って汗を流す。流した汗は、君を絶対に裏切らないはずだ。

『自分らしく幸せに生きるための100の言葉』(細谷知司著/シャスタインターナショナル/1,512円(税込み))より

(『自分らしく幸せに生きるための100の言葉』)

「脱・清純派女優」のきっかけとなった映画『モテキ』

長澤さんは12歳の時に第5回「東宝シンデレラ」でグランプリを獲得し、その後は映画『世界の中心で、愛を叫ぶ』(2004年)や『タッチ』(2005年)などで清楚で可憐なヒロインを好演し、10代で清純派女優としての地位を確立しました。

転機を迎えたのは24歳の時。「脱・清純派女優」のきっかけとなる映画作品『モテキ』(2011年)で、大人の色香も漂う小悪魔的なヒロインを能動的に演じ、数々の賞を受賞、女優としての新たなる一面を開花させました。その後は、ヒロインだけでなく脇役を演じることも増え、演技力と存在感を示しながら着実に独自のキャリアを築き上げています。

カンヌ国際映画祭で称賛された『海街diary』(2015年)では、四人姉妹のなかでも最も気が強い次女役を好演し、数々の助演女優賞を受賞しました。NHK大河ドラマ『真田丸』(2016年)では、アクティブに力強く主人公を支えるヒロイン役を好演しています。またその後は、声優としても頭角を現し始め、『君の名は。』(2016年)のミキ先輩の声は、「イメージにぴったりだ!」とアニメ映画ファンからも高評価を得た他、『SING/シング』(2017年)では、見事な歌声も披露しています (『SING/シング』では、前出の書籍「自分らしく幸せに生きるための100の言葉」の巻末対談に登場する声優・歌手・ミュージカル女優(菊田一夫演劇賞受賞)の坂本真綾さんとも共演)。

どの役柄においても、役者としての存在感を示す

多様な作品にチャレンジするなかで、長澤さんは、どの役柄においても、単なる美人女優としてだけではなく、役者としての存在感を示してきました。清純派女優のイメージから始まった長澤さんの軌跡は、それまでの成功体験に執着せず、自身に訪れた転機のタイミングを逃すことなく、自身の役割を上手にシフトさせながら、自分らしいキャリアデザインを描いているように思います。

長澤さんが清純派から脱する転機を迎えた24歳は、一般社会で言えば、ちょうど一通りの仕事の流れも覚え、会社における大方の人間関係についても把握し、社会の現実と厳しさを実感し始める頃かもしれません。ここで、リセットするのかどうかの決断は、各々の環境によって異なりますが、長澤さんの場合は、『世界の中心で、愛を叫ぶ』(2004年)の可憐な少女のイメージからなかなか脱却できず、その後の代表作となるような作品と出会えずに迷走していたものの、24歳で、「脱・清純派女優」のきっかけとなる作品『モテキ』と出会うことができました。この作品では、大人の色香も漂わせつつ、恋愛に積極的なヒロインを能動的に演じ、それまでとは別のファン層を獲得しています。

その後も「脱・清純派女優」として、実力派女優のキャリアを積み重ねていき、脇役であっても存在感を示すまでになった長澤さんは、清純派時代とは方向性を変えたキャリアを構築してきました。

このような20代の着実な選択のもとで描かれてきた長澤さんのキャリアデザインは、多くの若手ビジネスパーソンにとっても、一つの見本であると言えるのかもしれません。

常に本気で挑み続ける長澤さんは、「自分らしく幸せに生きるための選択」を見極める眼を持っているのでしょう。その眼力を活かした女優道・キャリアがどのようにデザインされていくのか...興味を持って注目しつつ、今後も様々な出演作品を楽しみたいと思います。

プロフィール

鈴木ともみ

経済キャスター・MC。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所 招聘研究員。
ファイナンシャル・プランナー、日本記者クラブ会員記者、多様性キャリア研究所副所長
和洋サウンドシアターユニット『未来香音』(津軽三味線・清水まなみ、ピアノ・斎藤タカヤ、パーカッション・宮本仁、語り部・平山八重、ストーリーテラー・鈴木ともみ)として、ラジオやライブで活動中。
ラジオドラマにおけるデビュー作が「日本民間放送連盟賞」エンターテインメント部門出品作品となる。
来日する各国大統領や首相、閣僚、ハリウッドスター等を含む取材・インタビューは3000人を超える。
キャスターとしてTV、ラジオ、各種シンポジウムへの出演の他、雑誌やニュースサイトにてコラムを連載中。
主な著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。

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