コンビニが食品ロスに積極的に取り組んだら、なんだか美味しいらしい

コンビニが食品ロスに積極的に取り組んだら、なんだか美味しいらしい

私たちが利用しない日はないといっても過言ではないコンビニ。日々どんどん便利なサービスが増えているし、いつ立ち寄っても食べ物や飲み物が置いてあって、ありがたい存在ですよね。しかし、便利なサービスの裏にはたいがい歪みがあるものです。例えば、節分の恵方巻きの売れ残りが大量に廃棄処分になった件を覚えている方も多いのではないでしょうか。

このような以前までは特に問題とされていなかったことも、人々の意識が変化するにつれて見直されようとしています。企業ももちろん、食品の大量廃棄を見直す取り組みを積極的に進めているのです。

日本にはどれくらいの食品ロスがあるの?

日本では、年間2,759万トン(※)の食品廃棄物等が出されています。例えば飲食店での残り物、食品を製造する際に捨てられてしまうもの、家庭でゴミとして捨てられてしまうものなどです。このうち、まだ食べられるのに廃棄されてしまった食品、いわゆる「食品ロス」は643万トン(※)。これは、日本人ひとりあたり、約お茶碗1杯分の食べ物が毎日捨てられているのと同じくらいの量なのです。そう考えるととてももったいないことですよね。

でも、食品廃棄の見直しが始められた理由は、なにも「もったいないから」だけではありません。食品ロスには様々なデメリットがあるのです。

(※農林水産省及び環境省「平成28年度推計」より)

食品ロスはどんなデメリットを生んでいる?

(1)ものの値段が高くつく

「賞味期限のすぎた食べ物は売れない」「売る機会を逃さないために、余分に食料を用意する必要がある」。こうした事情によって、まだ食べられるはずの食品は捨てられていきます。すると、企業としては売れずに捨てられてしまう分の費用を見越して価格を設定する必要があるのです。つまり、食品ロスが発生しない場合に比べて商品の価格が高くなってしまうのです。

食べ物を捨てるということは、その食べ物をつくるためにかけた費用をすべて捨てることです。さらには、それらを廃棄処理するためにも余分にお金がかかってしまいます。私たちは食品を買いながら、捨てるための費用をも支払っているといっても過言ではありません...。

(2)環境への負担が大きい

食品を作るためには、様々なエネルギーが使われています。生産段階では、畜産や肥料として。製品を加工するにしても電気や燃料を使い、包装材を作るにしても工場が動くわけですから、エネルギーが必要です。さらには、出来上がった商品を保管し、輸送し、販売するそれぞれの段階でもエネルギーが使われます。私たちの手元に食品が届くまでにはたくさんの工程があり、その全てでエネルギーが使われているのです。つまりは、エネルギーが使われて二酸化炭素や温室効果ガスといった地球に有害なものが排出されてしまっているのです。

私たちが食品を捨てるということは、そうしたエネルギーを全て無駄なものにしてしまいます。さらには、せっかくエネルギーを使って作ったものを、エネルギーを使って捨てるという本末転倒なことに...。

(3)資源効率が悪くなる

日本は先進国であり食べ物に困ることはほぼありませんが、世界には満足にものが食べれず飢餓に苦しんでいる国があります。冒頭で述べたとおり、日本の食品ロスは643万トン。これは、世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食糧援助量(平成29年で年間約380万トン)の1.7倍に当たるのです。

食料を育てていくらでも生産できるからといっても、資源は有限ですから無駄な消費をしていては無くなります。こうした偏った資源の消費の仕方は、人道的な観点からも、環境的な観点からも、決して良いものとはいえないでしょう。

食品ロスをなくすための企業の取り組み

消費者の我々としても、食品を取り扱う企業としても、あまり良いことがない食品ロス。日本では、5月に国会で食品ロス削減推進法が成立され、現状を改善させる動きが出てきています。これを受けて、各企業にも動きが見られるようになりました。

以前からある取り組みのひとつが、「フードバンク」。これはまだ食品として消費が可能な余剰食品を引き取り、必要な個人や施設に届ける活動や、そういった活動を行う団体のこと。大手スーパー、例えばコストコや西友などは10年以上も前から活動しています。大手以外の地元密着型のスーパーや小売店、生協などもフードバンク活動をしているところは多いようです。

また、食品リサイクル工場で食品廃棄物を飼料や肥料に再生化するという取り組みもあります。ファミリーマートでは、フライドチキンなどの揚げ物に使われた廃食用油は100%、リサイクルしているそうです。

しかし、今までコンビニ業界では、賞味期限切れのおにぎりやお弁当、お総菜などで、食品リサイクルに回せないものは、基本廃棄するということになっていました。そして、賞味期限内のものは、定価販売。見切り販売や値引きなどはしなかったのです。

そんなコンビニの食品ロスへの取り組みが、大きく変わってきました。以前からスーパーなどでは、賞味期限間近の食品に値引きシールが貼られ、見切り販売がされるため、それを狙って購入する人が群がるといった光景がありました。それに近いことがどうやらコンビニでも始まるようです。

あの身近なコンビニで改善の取り組みが!

セブン-イレブン・ジャパンは今年秋から、全国の加盟店を含む全約2万店で、販売期限の迫った弁当やおにぎりの実質的値引き販売を始めます。販売する値段は変わりませんが、対象の商品を購入すると、ポイントがその分還元される仕組みです。

ローソンでも同じく本部負担の実質的値引きの仕組みが導入される予定。今までは、各店舗へ、売れ残った食品に関しては夜になったら値引き対応をし、なるべく売り切るように、としていたそうですが、新たにポイント付与型の取り組みを開始します。現在愛媛県で先行実験されており、その内容は、ポンタ会員が午後4時~翌日午前1時に、印つきのお弁当やおにぎりを購入した場合、100円につき5ポイントが付与され、同時に5%を県の「子育て応援」支援に寄付するそうです。ポイントも寄付も負担は本部。食品ロスの削減と、子どもの貧困改善の両立をポンタが担っているというわけです。

ファミリーマートでは、加盟店が賞味期限間近の食品の値引き販売をしたいと希望した場合、値引きの実施が可能だそうです。それに加え、新たな取り組みとして、賞味期限が通常の倍の時間というチルド弁当の品揃えを増やし、食品ロスを削減する取り組みを始めるそう。各社ともそれぞれの方法で食品ロスを削減するために取り組んでいるんですね。

食品ロスが減って嬉しいのは環境だけではありません。コンビニでは、これまで賞味期限切れの食品廃棄にかかる費用は、加盟店が負担していました。実質値引きがはじまることで、その廃棄量が減れば、加盟店オーナーの負担も減ります。食品ロスが減り、ユーザーにはポイントなどで値引きが還元され、加盟店オーナーの負担も減る、素晴らしい仕組みになるのです!

消費者である私たちにも協力できることがある!

食品ロスは、私たちが賞味期限間近のものを選んで買うという行動をとるだけでも少しは改善されます。しかもこれからはそうした方がお得になるなんて、とても良いことですよね。これまでは商品棚の奥から出来るだけ賞味期限の長いものを選んでいた、なんて方も、これからは積極的に期限の近い、手前に陳列された商品から購入してみてはいかがでしょうか。

また、食品ロスの半数は家庭ごみ。賞味期限が切れたからといって捨てない、食べ残しをできるだけ少なくするなど、1つ1つの工夫でロスは大きく減ります。そしてその方が家計にもお得ですよね。ぜひ、環境に良い活動を通して節約もまとめてしちゃいましょう!

プロフィール

回遊舎(かいゆうしゃ)

"金融"を専門とする編集・制作プロダクション。お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで一手に引き受ける。マネー誌以外にも、育児雑誌や女性誌健康関連記事などのライフスタイル分野も幅広く手掛ける。
近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」、「J-REIT金メダル投資術」(株式会社秀和システム 著者酒井富士子)、「NISA120%活用術」(日本経済出版社)、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点10」(株式会社ダイヤモンド社)、「子育てで破産しないためのお金の本」(株式会社廣済堂出版)など。

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