東京五輪・パラリンピックの暑さ対策として発表された、頭にかぶるタイプの傘が話題になりましたよね。自分がかぶるとなるとちょっと抵抗感がある...という方も多いかもしれませんが、国を挙げて製品を生み出すほどに深刻に捉えられている日本の暑さ。甘く見ていると熱中症によって命の危険を落とすこともあります。夏が近づく前に暑さ対策を確認しておく必要があるでしょう。今回は、酷暑対策について改めて考えてみたいと思います。
記録的猛暑の夏にご用心!
昨年2018年の夏は記録的な酷暑でした。その深刻さは統計にも表れており、5~9月に熱中症による救急搬送された人数が、統計開始以来最大数の9万5137人を記録しました。また、搬送された人のうち13.4%は道路で倒れています。この事実から、夏の炎天下に遮熱対策なしで出かけるのは命を縮める、いや命を失うかもしれない行為といえることがわかるでしょう。
実は今年2019年4月29日~6月16日までの間にも、全国で6,377人(速報値)が熱中症により緊急搬送されており、そのうち10人が命を落としています。もはや油断はできません。また、政府としてもこの暑さによる国民生活への影響が重大性・緊急性等が高いものとして位置づけられていて、暑さ対策の推進が求められています。今や暑さ対策はただ快適さを求めるだけの行為ではありません。命を守るために必要な行動なのです。きちんとした知識を身につけ、初夏早めのうちからしっかりと暑さ対策に向けて行動することが必要です。
ついに国まで本気で「日傘」普及に乗り出した?!
ニュースなどでも取り上げられましたので、知っている人も多いかと思いますが、環境省は日本百貨店協会(会員数:79社201店舗)、日本洋傘振興協議会等と連携し、「日傘の活用推進」を目指すとともに、熱中症対策の促進に向けた呼びかけを実施しています。
それだけ今の日本の暑さはシャレにならないということなんです。
発汗量もだいぶ変わる、すごい効果
暑さ対策をするなら、室内での扇風機やエアコンによる温度調節はもちろんのことですが、野外での照り付ける厳しい暑さと日差しへの対策は必須です。「日傘」はそのために非常な有効な手段です。その根拠は以下になります。
まず、日傘を指しているだけで、日向に比べて温度が1~3℃程度変わってきます。最近ニュースなどでよく見る暑さ指数(WBGT)という尺度がありますが、これは3〜4℃の幅で人体にとって危険な暑さかどうかを判断することができます。「たかが2、3℃で体感が変わるの?」と思う人もいるかもしれませんが、たかが2、3℃でも警戒レベルが一段階変わってくるほどの差があるということです。30℃が28℃に変化しただけでも、熱中症リスクはグッと下がります。
また、日傘は日射を遮断してくれることもあり、さすとささないでは発汗量なども変わってきます。その効果を示すため、人工気象室(気温30℃、湿度50%、日射量1.2kW/㎡、風速0.5m/s)で15分間の歩行運動を2回繰り返したという実験があります。男性6名により帽子のみをかぶった場合と日射を99%以上カットする日傘を使った場合との比較を行った結果、日傘を使った場合には帽子の場合より汗の量が約17%減ることが分かりました。
汗をかくことは、体温を適切に保つために大切なことですが、発汗で水分が奪われすぎると、体内の水分バランスが崩れ、熱中症を引き起こす原因に。水分補給はもちろんの事、日傘を活用し、暑さを防いで適切な体温管理が必要なのです。
男性が持ち歩くのは恥ずかしい?そんなことない!
とはいえ、日傘にはなんとなく美白を意識した女性のものというイメージが結びついていて、男性にはなかなか広まっていないというのが現状です。しかし現状では、働き盛りの世代では女性よりも男性の方が熱中症にかかる割合が多くなっています。営業活動などに勤しんでいると暑さなど構ってはいられないかもしれませんが、そうした移動中にこそしっかりと暑さ対策をしておくべきでしょう。やせ我慢して汗だくだく、熱中症で命を危機にさらすより、サラッと涼しい顔で得意先に向かった方が、仕事ぶりもスマートに見えるかもしれません。
最近では男性用の日傘も折りたたみタイプ・軽量タイプ・完全遮光タイプなどバリエーション豊富な商品が販売されているので、きっと自分にあった日傘が見つかるはず。
おすすめは、ゲリラ豪雨にも負けない晴雨兼用の日傘、暑さ対策に最適な遮熱効果のある日傘、営業マンなど移動が多い人にぴったりの折り畳み式などです。
いろいろ言われても、まだ実感できないというあなたのために、目に見える形で実験をしてみました。使用したのは黒い雨傘と日傘。
まずは黒い雨傘です。普段雨の日にしか差さないから気がつかなかったのですが、こんなに光を通していました。
次に日傘です。使用したのは筆者私物の「サンバリア100」完全遮光で紫外線、赤外線、可視光線など、地上に届く全ての光を100%カットすると謳っている商品です。
本当にまったく光を通しません。こんなに差があるんですね。これでもまだ「日傘なんて...」って言いますか?
万全の対策で夏を乗り切ろう!
その効果は絶大ながらも、まだまだ多くの人に普及しているとはいえない日傘。少し手荷物が増える煩わしさはあるかもしれませんが、常に日差しのない、完全な日陰を移動できるのは、それを超える大きなメリットです。
また、日差しを遮る方法としては帽子もありますが、帽子だとヘアスタイルの乱れがつきもの。また、頭が蒸れて余計に暑さを感じてしまうというデメリットが。そのいずれもないのも日傘のメリットです。
筆者は日傘がないともはや生きていけないくらいその恩恵を体感しています。日傘があるだけで夏の風もどこか涼しく感じられ、もう日傘がないと夏を過ごせないというほど。実際、うっかり日傘を持って出るのを忘れた梅雨の晴れ間に熱中症を起こしかけました。
ちょっと気取った感じで使いづらいという方も多くいるかもしれませんが、周りの人はそこまであなたのことを見ていません。ぜひ、暑さをやせ我慢せずに日傘を活用してみてはいかがでしょうか。
プロフィール
回遊舎(かいゆうしゃ)
"金融"を専門とする編集・制作プロダクション。お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで一手に引き受ける。マネー誌以外にも、育児雑誌や女性誌健康関連記事などのライフスタイル分野も幅広く手掛ける。
近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」、「J-REIT金メダル投資術」(株式会社秀和システム 著者酒井富士子)、「NISA120%活用術」(日本経済出版社)、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点10」(株式会社ダイヤモンド社)、「子育てで破産しないためのお金の本」(株式会社廣済堂出版)など。