国際イベントの開催が続けば、日本経済全体への継続的な波及効果も
今年の上半期を締めくくる6月末、令和の時代に入り最初に開かれる国際イベントとして注目された「大阪G20サミット」・20ヵ国・地域首脳会議が開催され、メディアを中心に関心を集めました。サミットは一般の観光客を呼び込むような国際イベントではありませんが、スポーツやエンターテインメント系の国際イベントの開催となれば、当然のことながら訪日外国人数も増加します。すでに、直近の訪日外国人数は堅調に推移しており、政府が定めた2020年の目標値4,000万人も射程圏内に入ってきました。海外からの資金流入や直接投資が循環する有意義な国際イベントの開催が続けば、日本経済全体への継続的な波及効果も出てきます。
そうしたなか、今年は秋に『ラグビーワールドカップ2019』が日本で開催されます。9月20日~11月2日の44日間に渡り、北海道から熊本まで全国12ヵ所で試合が行われます。ラグビーワールドカップ公式HPによれば、大会開催における経済効果は4,372億円。スタジアムでの観戦者は最大180万人、訪日外国人数は40万人に達するとされており、訪日外国人の消費支出による直接効果は1,057億円に上るとのことです。ラグビーワールドカップの場合は、長期間に渡って開催されることもあり、日本経済に大きく寄与しそうです。
そして、いよいよ来年2020年に日本で開催されるのが『東京オリンピック2020』です。2020年7月24日~8月9日の17日間に渡り開催されます。(パラリンピックの開催は8月25日~9月6日)。東京都は2020年東京五輪・パラリンピックが全国に及ぼす経済効果について、大会招致が決まった2013年から大会10年後の2030年までの18年間で約32兆3,000億円と試算しています。その経済効果は、開催の直接投資や支出で生じる「直接的効果」と、大会後のレガシー(遺産)で生じる「レガシー効果」に分けられています。直接的効果は、競技会場の整備費、警備や輸送などの運営費、観戦者らの支出、関連企業のマーケティング費などを合わせ約5兆,2000億円、レガシー効果は、インフラ整備、バリアフリー対策、訪日外国人数の増加、会場の活用などで約27兆1,000億円に上ると推計しています。東京都はロンドン大会を参考にすると、経済効果はレガシー効果を含め、大会後10年ほど続くと見ているようです。
2025年に開催される『大阪万博』、新商品を生み出すための大切なプレゼンテーションの場
その東京オリンピック後に行われるイベントとして新たに期待されているのが、2025年に開催される『大阪万博』です。日本での万博開催は、1970年の大阪、1975年の沖縄、1985年の筑波、1990年の大阪、2005年の愛知に続き6度目、大阪での開催は35年ぶりとなります。大阪万博は、2025年5月3日〜11月3日の185日間に渡り開催されます。会場は大阪市の人工島、夢洲(ゆめしま)。AI(人工知能)やVR(仮想現実)などを体験できる「最先端技術の実験場」としてのコンセプトを掲げ、テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン~多様で心身ともに健康な生き方 持続可能な社会・経済システム~」となっています。
世界各国のあらゆる技術や商品が集まる最大規模の博覧会だけあって、想定来場者数も約2,800万人と世界中から多くの人たちが日本を訪れることが見込まれています。同時に、様々な新商品を生み出すための大切なプレゼンテーションの場として、世界各国の企業も注目しています。2025日本万国博覧会誘致委員会事務局の試算によれば、大阪万博の経済効果は約2兆円とされています。大阪万博のテーマである「持続可能な社会・経済システム」の構築は、世界各国が取り組むべき課題でもありますので、未来社会のデザインを描く上で、新たな始点となる国際イベントとなりそうです。
国際的に注目されているリニア中央新幹線の東京-名古屋間開通
そして、国際イベントとは異なりますが、国際的に注目されている出来事としてあるのが、2027年のリニア中央新幹線の東京-名古屋間開通です。中部圏社会経済研究所の試算によれば、リニア中央新幹線の東京-名古屋間開通による経済効果は2027年の開通後10年間で計14兆8,204億円になるとされています。そのタイミングに合わせるように、東京駅・日本橋口の常盤橋地区には、日本で一番高いビルが建設され、名古屋駅では高さ180m、全長400mの超横長・超高層ビルが登場することになり、都市開発の面からも経済効果を見込むことができます。
このように、実は令和の新時代は、継続的に国際的に注目を集めるイベントが待ち受けています。
私たちは、どうしても東京オリンピックだけに注目しがちですが、オリンピック後も日本で開催される国際イベントを前向きに捉えつつ、新たな時代を精進していきたいものです。
プロフィール
鈴木ともみ
経済キャスター・MC。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所 招聘研究員。
ファイナンシャル・プランナー、日本記者クラブ会員記者、多様性キャリア研究所副所長
和洋サウンドシアターユニット『未来香音』(津軽三味線・清水まなみ、ピアノ・斎藤タカヤ、パーカッション・宮本仁、語り部・平山八重、ストーリーテラー・鈴木ともみ)として、ラジオやライブで活動中。
ラジオドラマにおけるデビュー作が「日本民間放送連盟賞」エンターテインメント部門出品作品となる。
来日する各国大統領や首相、閣僚、ハリウッドスター等を含む取材・インタビューは3000人を超える。
キャスターとしてTV、ラジオ、各種シンポジウムへの出演の他、雑誌やニュースサイトにてコラムを連載中。
主な著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。