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DAY 2019.07.01 キャリア

パワハラとは?
法的判断基準や職場での被害事例、対策方法を解説

「これってパワハラじゃないの?」と職場で疑問に思ったことはありませんか? この記事では、一体どこからがパワハラなのかや、実際のパワハラ事例、そして対処法までご紹介します。

パワハラの定義

パワハラとはパワー(権力)ハラスメント(嫌がらせ)の略です。同じ職場で働く人に対して、権力を利用し、精神的・肉体的な苦痛を与えることをいいます。上司から部下へのいじめや嫌がらせのほか、先輩から後輩へ、同僚間、部下から上司に対して行われるものもパワハラとして扱われます。

なお、厚生労働省による職場におけるパワハラの定義は以下です。

【厚生労働省による職場におけるパワハラの定義】

同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為

パワハラかどうかを判断する法的基準3つ

どこからがパワハラなのかを判断するために、政府は3つの法的基準を設定しました。これらの基準全てに該当する場合、その行為はパワハラであると法的に判断することができます。それぞれ説明します。

①優越的な関係に基づいた言動

その行為が優位性を背景に行われたものなのかを判断します。

  • 職務上の地位が上位である人の行為
  • 同僚や部下による行為で、嫌がらせを行う人が業務上必要な知識や経験、技術が豊富でその人がいないと仕事が円滑に行えない
  • 同僚や部下からの集団による行為で、抵抗や拒絶することが困難

②業務の適正な範囲を超えている

その行為が業務を行うにあたって本当に必要なものだったのかを判断します。

  • その行為が業務の目的から離脱していないか
  • その行為が業務を遂行するための手段として必要だったのか
  • その行為が行われた回数や行った人の数、態度が社会通念と照らし合わせて許容される範囲だったのか

③身体的・精神的な苦痛を与える

その行為を受けた人が身体的・精神的に圧力をかけられ、苦痛と感じていないか、その行為によって、職場にいることが困難となり、本来の能力が発揮できない状況になっていないかを判断します。

  • 暴力による傷害はないか
  • 暴言などによる人格否定
  • 大声で怒鳴ったり、執拗に厳しい叱責を繰り返し、恐怖を与えていないか
  • 長期にわたる無視
  • 能力に見合わない仕事を与え、働く意欲を低下させていないか

日本におけるパワハラの実態とは

パワハラは、認定数が年々増えています。下のグラフは、都道府県労働局等に設置された総合労働相談コーナーにて、受けたいじめや嫌がらせに関する相談件数と、民事上の「個別労働紛争相談件数」(仕事における訴訟事案)のうち、いじめや嫌がらせの割合です。

引用「厚生労働省 明るい職場応援団

パワハラの相談では下位者が上位者から嫌がらせを受けているケースが大多数を占めています。部下が上司から、後輩が先輩から、非正規社員が正社員からパワハラを受けているという内容です。

具体的なパワハラの内容は、精神的苦痛、人間関係から急に外される、過大な要求をされる、逆に過小な要求をされる、身体的な攻撃をされるなどさまざまです。パワハラの内容については次の項目で詳しく説明していきます。

パワハラの6類型と職場での被害事例

厚生労働省はパワハラによる具体的行為を6類型に分類しています。この6類型のいずれかの行為が、前述した3つの法的基準を越えたかどうかによって、パワハラが認定されます。6類型の詳細と実際の職場での被害事例について説明していきます。

①身体的攻撃

暴力や傷害といった、肉体的な嫌がらせです。

【身体的攻撃の例】

  • 殴る
  • 蹴る
  • 突き飛ばす
  • 煙草の火を近づける
  • 書類でたたく
  • 物を投げつける

②精神的攻撃

脅迫や屈辱、名誉を不当に傷つけること、暴言を繰り返し行い精神的に苦しめるといった嫌がらせです。

【精神的攻撃の例】

  • 多くの人の目の前で叱責する
  • 長時間にわたって必要以上に叱責する
  • 毎日のように暴言を吐かれる
  • 他の職員も宛先に含めたメールで罵倒される

③人間関係からの切り離し

特定の人を職場の人間関係から突然切り離す嫌がらせです。

【人間関係からの切り離しの例】

  • 無視
  • 1人だけ別室に移動させられる
  • 仕事を教えない
  • 仕事で必要な情報を共有しない
  • 送別会などに1人だけ出席させない
  • 1人だけ強制的に自宅待機にする

④過大な要求

その人の能力や経験を超えるような業務、他の社員よりも多く業務を与えるといった嫌がらせです。達成できなければ執拗に叱責する、殴るといった他のタイプのパワハラと併用される可能性もあります。

【過大な要求の例】

  • 新人がやり方、手順を教えられていない仕事を大量に押し付けられ、他の社員は帰宅してしまった
  • 達成できないようなノルマを与えられる

⑤過小な要求

本来の業務よりも明らかに価値の低い業務だけを与えられるといった嫌がらせです。

【過小な要求の例】

  • 営業職なのに書類のコピーしかやらせてもらえない
  • 事務職なのに掃除しかやらせてもらえない
  • 運転手なのに草むしりしかやらせてもらえない

⑥個の侵害

個人のプライベートな領域に過剰に踏み入ってくる嫌がらせです。女性に対する個の侵害は、セクハラ(セクシャルハラスメント)、マタハラ(マタニティハラスメント)になる可能性もあります。

【個の侵害の例】

  • 交際相手について執拗に質問してくる
  • 休日の過ごし方について執拗に質問してくる
  • 身内の悪口を言ってくる

パワハラに悩んだらどうすればいい?

あなたがもしパワハラを受けて悩んでいるのであれば、1人で抱え込むのではなく、これからご紹介する方法で対策して助けを求めてください。「これは本当にパワハラなのかな、自分の思い込みだったらどうしよう」と思って相談できずにいる人もいるかもしれません。でもそういった判断に悩む状況でも、第三者に相談することによって正しい判断をすることができます。また、実際の裁判の判例もご紹介しますので、訴訟を考えている方は参考にしてみてください。

証拠をしっかり残しておく

どのようなことをされたのかを詳細に残しておくことは大切なことです。のちのちの事実確認でも有利になるので、証拠を残す時は「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「何のために」をしっかりメモなどに記載しましょう。高圧的な内容のメール、写真や動画、ボイスレコーダーやスマホの録音機能などを使って実際に行われたこと、言われたことを残す方法も有効です。

相談する

もしあなたに信頼できる同僚や上司がいたら相談し、協力を求めるようにしましょう。1人で悩み、何も行動せずにいるとさらにパワハラがエスカレートする可能性があります。「あなたはパワハラをしている!」と相手に気づかせることも必要です。

また、同僚や上司に相談できない場合は、社内にある相談窓口や人事部に相談しましょう。組織内のしがらみなどで「やっぱり会社には相談できない...」という人もいると思います。そういった場合は下の公的な相談窓口を利用してみてください。相談者が不利益にならないようにプライバシーは確保されているので安心です。

【相談窓口】

  • 会社がある場所の労働局または労働基準監督署にある総合労働相談コーナー
    こちら
  • 個別労働紛争のあっせんを行っている都道府県労働委員会・都道府県労働局
    ※個別労働紛争のあっせんを行っていないところもあるので事前に確認が必要です。
    こちら
  • みんなの人権110番
    こちら
  • かいけつサポート
    こちら
  • 法テラス
    こちら
  • NPO法人労働組合 作ろう!入ろう!労働センター
    こちら

裁判で訴えることはできる?判例をご紹介

相談窓口に相談して解決すればいいのですが、解決しない場合は裁判で訴えるのも一つの手です。「裁判で勝つ見込みあるのかな?」と思っている人も多いと思いますが、実際にパワハラによる被害で裁判に勝訴している判例があります。ここでは、パワハラの相談で最も多い精神的苦痛に関する判例をご紹介します。

【引用】厚生労働省 あかるい職場応援団
こちら

【概要】

時間外労働時間だけでなく、執拗に、また長時間立たせたまま叱責したことなどを勘案して、業務起因性のパワハラを認めた。

【経緯】

ある男性が、勤務していた会社での業務に起因して出血性脳梗塞を発症したとして、その妻が労基署長に対し労災保険給付を求めたが、不支給処分扱いにされた。この処分に対して妻が取り消しを求めて訴えた。

【判例のポイント】

1) 疾病を発症した6か月前から男性の時間外労働時間は、1か月当たり約36.5時間、38時間、54.5時間、41.5時間、57.5時間、77.5時間で、時間外労働時間が増加し、発症前1か月は、4月18日の徹夜作業も含めて80時間近くに達していた。男性の時間外労働時間は、相当長時間のものであると評価された。

2) このような時間外労働に加え、男性の上司は、男性に対し、1か月に2回以上、執拗に、かつ、そのうち数回は2時間を超えて起立させたまま叱責。このため、男性は、肉体的疲労だけでなく、心理的な負担も受けた。上司による叱責は、上記1)の時間外労働により疲労を有していたと考えられる男性に対して、一層のストレスを与えるものとなった。

3) 男性は「持続性心房細動」の状態にあったが、これは会社の業務上の負荷、特に上司による頻繁・執拗かつ異常な叱責によるストレスと、4月18~19日の徹夜作業に伴うストレスを誘因として発生したものでる。こうした業務上のストレスによって形成されたフィブリン血栓が本件疾病を発症させたものと認めるのが相当だと判断された。

【結果】

業務起因性について一審では否定されたが、二審では認められ、労災保険給付の不支給処分が取り消された。

まとめ

パワハラ、権力や優位性を背景とした嫌がらせは、どのような理由でもあってはいけないものです。仕事上の指導との境界線が分からない場合もあると思いますが、我慢する必要はないので、もし1人で悩んでいる場合は、まず安心して話せる人・機関に相談してみてください。