ITは「Information Technology」の略で、通信やソフトウェア関連の技術の総称として長く使われてきた言葉です。若手社会人の皆さんも、就活中から頻繁に見聞きされたのではないでしょうか。しかし近年、「IT」に「C」を加えた「ICT」という言葉が浸透しつつあります。(Misa)
ICTは「Information and Communication Technology」の略で、日本語では「情報伝達技術」
ご存じのとおり、ITはコンピュータやインターネット、通信インフラなどを用いた「情報技術」を意味します。コンピュータをはじめとするハードウェアの制御、さまざまなシステムなどに関わる、情報通信関連のインフラ・技術などすべてがITに含まれます。そして、IT活用による業務の効率化は「IT化」と呼ばれてきました。
それに対して、ICTは「Information and Communication Technology」の略で、日本語では「情報伝達技術」となります。ITとの意味合いの違いは、「情報や知識の共有(伝達)」にフォーカスしている点です。「コンピュータや通信インフラなどを利活用する技術」をさしているITに対し、ICTは「コミュニケーション」がより強調されています。ITとICTはいわば概念的な区別であり、そこに該当する技術が異なるわけではありません。日本では「IT」が使われることが多いですが、国際的には「ICT」が一般的です。
すでに実用化されているICTの活用事例
ICTは、すでに私たちの暮らしに浸透しています。たとえば、IoT(Internet of Things)はモノに取り付けたカメラやセンサーなどが集めた情報を、インターネットを利用した通信機能で伝達する仕組みです。家電やAIスピーカー、Webカメラなどの製品として、一般家庭でも使われています。IoTの代表格であるドローンによる空撮映像はすでにおなじみでしょう。ドローンはそのほかにも、橋脚や高層などの建造物検査、農薬散布や農作物の生育状況の調査、測量など多くの分野で活用されています。
またICTは、医療・介護の現場では電子カルテや日々の情報共有に利用され、ペーパーレス化を実現したり、遠隔地に対するバックアップの実現に貢献したりしています。
小売・流通業界では、商品コードと顧客データを結びつけて顧客サービスの向上に利用するほか、天候やイベントなどの環境要因と販売データを紐づけて分析するなど、販売予測から市場分析、商品企画などのマーケティングから在庫管理、物流管理など、多方面で活用しています。
ICTでどう変わる?仕事、暮らし、社会
企業だけでなく、公共事業や地域活性化などの各分野でも、ICTを活用する取り組みが進んでいます。テレワーク導入による働き方改革などもその一例ですね。総務省が情報技術分野における指針の「IT政策大綱」を「ICT政策大綱」に改称するなど、ITからICTへと呼び方を変える動きも見られます。この改称は単に国際的な流れにあわせるだけでなく、「人と人」「人とモノ」の情報伝達を実現するICTを利用して、社会全体のしくみを変革しようという意思がこめられているようにも思えます。
これまでは、IT活用で、業務の効率化を実現してきました。ICTは技術として利用するだけでなく、その技術を活用して「サービスや製品の可能性を広げる」ことが、その役割といえるでしょう。今後ますますICTを活用した新しい価値の創造が期待されます。
原稿:Misa
ITベンチャーで企画、人材開発、広報などを経て独立。現在はコンサルタント、ときどきライター。ライターとしては、IT系以外、アニメ・マンガ、車から美容・健康まで何でもチャレンジ中。