『わたし、定時で帰ります。』、<br>吉高由里子さん演じる結衣が語る本当の意味でのスキルとは!?

トレンド・ニュース

吉高由里子さん主演のドラマ『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)の視聴率も評判も好調です。このドラマは朱野帰子さんの同名小説が原作となっています。

吉高さんが演じる主人公の結衣は、絶対に残業しないと心に決めている会社員。時には批判されることがあるものの、定時に退社するために効率よく仕事を進め、自分の考えだけを他人に押しつけたりもせず、次第に仕事仲間たちからの信頼も得るようになっていきます。

風邪をひいても休まない同僚、自宅に帰りたくないと会社に寝泊まりする同僚、すぐに辞めると言い出す新人etc...。結衣はそうした様々な価値観を持つ仕事仲間たちとも優しく向き合い、彼らの心に寄り添いながら自然とチームの連帯感を築きあげていくのです。

『わたし、定時で帰ります。』、クライアントからのセクハラ横行に結衣は...

特にセクハラ、パワハラをテーマにした第5話における結衣の行動や向き合い方には興味深いものがありました。

20代の女性派遣社員であるWebデザイナーの桜宮がクライアントからセクハラを受けているのではないかという疑惑に対し、結衣はその真相を探ろうと桜宮の意見を聞きます。すると、桜宮は、

「Webデザイナーとして、人づきあいで仕事の評価を得るのが自分のやり方である。相手に気を持たすレベルでやめることで、効率よく仕事を進めたい。人にはそれぞれの働き方がある」

と自身の価値観と主義を主張します。それを聞いた結衣は、「人づきあいだけで仕事をすることは仕事相手として認められてないのと同じである」と心の中で思いつつも、働き方は人それぞれだから...と、様子を見守ることにします。

その後、クライアントからのセクハラ、パワハラは定義違反ギリギリの範囲で横行していき、最後には桜宮も、

「相手に気を持たせたほうが仕事がやりやすくなると思っていた。でも、(露出の多い)ウェアを着ろって言われた時はさすがに情けなかった」

と、結衣の前で涙を見せました。そんな桜宮に対し、結衣は、

「桜宮さんは腕があるのだから、もっと自分を大切に仕事しよう」

と抱きしめ、励まします。

結衣は仕事歴10年の32歳。桜宮のように、愛嬌があってノリも良く、職場で重宝がられる20代女子の葛藤を、自身の経験からも実感していたように思います。ですが、「相手に気を持たせる人づきあいによって仕事の評価を得る」というやり方では、本当の意味でのスキルも実力もつくことはなく、結局は自分の身を削ることに時間を消耗するだけになってしまうのです。実際のビジネスの現場では、そういった事態を「愛嬌だけに頼った若手による自業自得」と処理されてしまいがちですが、このドラマでは、人それぞれの立場にある価値観や迷いや葛藤を見事に描き出していました。

このような組織における多様な価値観については、第1話の中で、結衣の恋人の諏訪が次のように表現しています。

「会社に行って一番驚いたのは、こんなにも人の価値観って違うんだってこと。
でも、そういう人たちと一つのことを成し遂げるから面白いんだけどね」

『逃げるが恥だが役に立つ』--「誰もが全てのことを深く知るのって無理だと思わない?」

このような価値観の違い、人それぞれだからこそ面白いという考え方については、別のドラマになりますが、2016年に放送された『逃げるが恥だが役に立つ』(TBS系)の中でも描かれていました。

新垣結衣さんが演じる主人公・みくりの伯母であるキャリアウーマンのゆりちゃんの言葉がとても印象的です。石田ゆり子さんが演じるゆりちゃんは、アラフィフ世代の管理職。そのキャリアと経験値から、自身が属する組織についてだけでなく、仕事を通して社会や世の中を俯瞰し、洞察する眼力も備わっていました。そのゆりちゃんは次のように語っています。

「誰もが全てのことを深く知るのって無理だと思わない?
誰かが知ってることを誰かは知らなくて。
そうやって世界は回ってるんじゃないかしら」

人それぞれに役割があるからこそ、それぞれに価値感も違い、他の価値観に出会った時に、迷いや葛藤が生じるものなのでしょう。

ただ、その迷いや葛藤と向き合うことは、一見、無駄のように思えても、吸収力のある20代には必要なことなのかもしれません。

『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命』--「遠回りすることで見える景色もあるって。」

例えば、2017年に放送された人気ドラマ「コード・ブルー ~ドクターヘリ緊急救命~THE THIRD SEASON』(フジテレビ系)でも次のような台詞が登場します。

『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命』の舞台は翔陽大学附属北部病院救命救急センター。主な登場人物の一人である産婦人科から再び救命救急センターに戻り、フライトドクターとして活躍する医師・緋山美帆子を戸田恵梨香さんが演じました。
緋山先生は部下であるフェローに対し、自身の経験から次のように諭すのです。

「私は、患者と家族に近づき過ぎてキャリアを失いかけた。
おかげで、随分遠回りもした。でもその時、ある先生に言われたの。
遠回りすることで見える景色もあるって。
人それぞれでいいんだと思う。どんな景色が見えるかは」

45歳で現役を引退したイチロー氏--「遠回りこそが近道である!」

この台詞に通じることを、あの日米通算4367安打のギネス世界記録とシーズン262本というメジャーリーグ最多安打記録、数々の金字塔を打ち立ててきた球界の天才、45歳で現役を引退したイチロー氏も次のように語っていました。

「遠回りこそが近道である!」

と。

何かの壁や困難に直面したら、時には自分とは違う世代や価値観を持つ人を頼り、突破口を見出すことも、大切なのかもしれません。
『20代に悩み迷いながらの遠回りは、その後のゴールに繋がる途である』。
数々のドラマにある名台詞はそう教えてくれているようにも思えます。

プロフィール

鈴木ともみ

経済キャスター・MC。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所 招聘研究員。
ファイナンシャル・プランナー、日本記者クラブ会員記者、多様性キャリア研究所副所長
音楽朗読劇ユニット『ELLE』(語り部・平山八重、ヴォーカル・池田ゆい、ピアノ・後藤里美、津軽三味線・清水まなみ)のストーリーテラーとしても活動中。
来日する各国大統領や首相、閣僚、ハリウッドスター等を含む取材・インタビューは3000人を超える。
キャスターとしてTV、ラジオ、各種シンポジウムへの出演の他、雑誌やニュースサイトにてコラムを連載中。
主な著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。

この記事をシェア

  • facebook
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • X(旧Twitter)

同じカテゴリから
記事を探す

トレンド・ニュース

同じキーワードから
記事を探す

求人情報

TOPへ