就職して社会人として働き始めると、仕事のスキルよりも先に求められるのがビジネスマナーです。この記事では、若手社員が知っておくと良いマナーを中心に、シーン別にビジネスマナーの事例を紹介します。
ビジネスマナーの大原則
ビジネスマナーは、細かく挙げるときりがないほどあり、それらをすべて完璧に守れている人は、経験豊富なビジネスマンでもなかなかいないものです。また、相手や場面によってそのとき取るべき行動は異なりますので、これが唯一の正解、というものはありません。
しかし、仕事で評価されている人ほど、ビジネスマナーの勘所を抑えているのも事実です。
その場にふさわしい振る舞いができるためのポイントは、「なぜビジネスマナーが必要なのか」を理解することです。細かい作法の前に、まず原則をしっかり押さえましょう。
マナーとは、「礼儀作法」を意味します。相手を尊重する気持ちから作られる、お互いが心地良い時間・空間を共有するための共通ルールです。
そしてビジネスマナーは、スムーズに効率よく仕事を運ぶためのコミュニケーションのルールといえます。
コミュニケーションが良好であれば、社内の関係者からの協力を得やすく、仕事が円滑に運ぶようになりますし、取引先との関係も良好になり、信頼を寄せられるようになります。
その結果として、下のような効果が得られます。
- 安心して上司や同僚から仕事を任せてもらえる=高評価や昇進のチャンス
- 頼んだことを滞りなくやってもらえる=プロジェクトの円滑化
- 提案を聞いてもらえる=営業成績アップ
単にルールだからではなく、こうしたことをよく理解した上で、ビジネスマナーを身につけていきましょう。
シーン別 ビジネスマナー実例13選
ここからは、シーン別のビジネスマナーの実例を見ていきましょう。業務時間内、業務時間外それぞれのシーンで役立つマナーと、どちらにも共通するマナーをご紹介します。
身だしなみと基本の振る舞い
まずは、どんなシーンにも共通の基本的なマナーを4つご紹介します。
1. 身だしなみ
特に初対面の場合、良い印象は見た目からつくられます。
服装で大切なのは清潔感。ブランドや価格ではなく、自分に合ったサイズか、洗濯・アイロンがけがきちんとなされているか、TPOに合った服装かといったことを重視しましょう。自分が好きな服と、その場に合った服は違います。業種や職種にもよるので、職場の先輩・上司をよく観察してみてください。
また、髪形、メイク、ネイル、アクセサリーはどこまで許されるのでしょうか。これは、お客さまや職場の人が見て、違和感や不快感がない程度にしましょう。自分で判断がつかない場合は、職場の身近な先輩に聞いてみると細かいルールや過去の事例なども教えてもらえるはずです。
2. あいさつ
どんな場面でも、自分からあいさつすることを心がけましょう。
「おはようございます」「いらっしゃいませ」「失礼します」「お疲れ様です」「ありがとうございます」など、相手にはっきりと聞こえる声で伝えます。
また、作業中にあいさつをする際も、パソコンの画面を見ながらではなく、顔を相手の方に向けることで印象が変わります。
3. 言葉づかい
正しい敬語に自信がありますか? 同じことを尊敬語、謙譲語、丁寧語で言い分けてみてください。
たとえば「見る」は、尊敬語では「ご覧になる」、謙譲語では「拝見する」、丁寧語では「見ます」という表現になります。
「拝見させていただきました」といった二重敬語(※この例では、尊敬語と謙譲語が二重になっている)を使わないことや、社外の人と話す場合は、社内の人に対して敬語を使わないなど、学生時代より一歩進んだ敬語スキルが求められます。
しかし、すべてのビジネスマンが完璧に敬語を使えているわけでもないので、まずは相手を敬っていることを伝えることが一番です。また、細かい使い分けが難しいと思ったら、まずは丁寧語で話してみましょう。
4. 遅刻、欠勤
遅刻や欠勤をしないことは、社会人にとって当たり前のものです。
- 商談や会議が滞りなく行われるよう、決められた時間の5~10分前には現地にいる
- 急に会社を休んで周囲の人に迷惑をかけることのないよう、健康管理を行う
これらが基本です。また、どうしても遅刻・欠勤をせざるを得ない場合は、できる限り早く相手に伝えることが重要です。
業務時間中のビジネスマナー
業務時間中のビジネスマナーについて、主なポイントを7つご紹介します。
これらは単に暗記するだけではなく、仕事をしながら、実践の中でマナーを身につけていくと、上達が早いのでおすすめです。
1. 相手に話しかける前
相手に話しかける際、冒頭に「お時間よろしいですか」「今話しかけてもいいですか?」といった一言を入れると、相手も心の準備をしてくれます。
また、相手が立て込んでいるときに話すことで内容がうまく伝わらないことや、きちんと聞いてもらえない場合もあります。また、「忙しいから後にして」と言われた場合は、時間の約束をするか、メールを入れておくといった対応がスマートです。
2. 電話をかける
かける相手や緊急度によりますが、取引先や社内など、知った関係であれば、いつ電話をかけるか、事前に伝えると良いでしょう。
最近は、ビジネスの場でもチャットやメールなどの利用が増え、電話をかける頻度がかつてよりも少なくなっています。そうした背景もあり、「急な電話は仕事を中断させられるので出たくない」という人も出てきています。また、事前に時間を伝えることで互いに入れ違うこともなくなります。
また、会社の固定電話にかける場合は、自分の所属(会社や部署)と名前を伝え、話したい相手の所属・名前を伝えます。知らない相手が出て慌てないように、名刺やメールの署名などで、事前に所属や名前を確認しておくのがコツです。
3. 席次(社内会議、顧客訪問時など)
会議などの際は、目上の人から順に上座につくようにします。基本的な考え方は、「出入口から遠い方が上座、近い方が下座」です。
ただし訪問先などで「こちらの方が眺めが良いので」と席を案内されたら、「ありがとうございます」とお礼を述べてから、それに従いましょう。
4. 名刺交換
日本のビジネスシーンに名刺は欠かせません。急に打ち合わせの参加人数が増えることはよくあるので、取引先に出向く際は、予想する人数より5~10枚ほど多めに用意していきましょう。
名刺は、胸の高さで交換するイメージです。相手より少しだけ低い位置から渡すとされていますが、お互い下へ下へとならない程度にしましょう。名刺を受け取ったら、名前の読み方が難しいときは尋ね、珍しい苗字なら話題にしてみましょう。相手の名前に関心を示すと喜んでもらえ、会話が広がるきっかけになる、緊張がほぐれるといった効果があります。
また、交換した名刺はすぐにしまわず、会議や商談中はテーブルの上に名刺入れを置き、その上に乗せて置いておきましょう。
5. 郵便物を送る
郵便物を送るときは、送りたい書類や荷物に加え、何を送ったかを簡単に書いた「カバーレター」(送り状)をつけましょう。カバーレターは、web検索でいくつもフォーマットが見つかるので、そのときに合わせた内容を参照するとすぐに作成できます。
また、発送の際は以下のポイントに気をつけましょう。
- 内容物の入れ間違い
- 封筒の誤字脱字、「御中」や「様」の付け忘れ
- 切手の料金不足
宛名などを手書きする場合、達筆でなくても大丈夫です。むしろ、読みやすいことが第一です。丁寧に読みやすく書こう、と心がけるだけで、文字が変わります。
6. タクシー、エレベーター、エスカレーター
タクシーとエレベーターも、入り口から遠い場所が上座です。
タクシーの場合、運転席の真後ろに一番目上の人が座ります。
しかし、荷物があるときや、奥へ乗り降りしづらそうなときなどは、「お先に乗りましょうか」と一声かける気遣いも良い振る舞いです。ただし、基本的には目下の人は助手席や、人数が多いときは後部座席の真ん中に座ります。
エレベーターは、乗り降りするときは自分がドアを押さえ、「どうぞ」と目上の人を先に通します。乗ってからは「代わります」と一言添えて操作盤の前に立ちましょう。エレベーター内では他の人たちと乗り合わせることもあるので、機密保持などの点で会話は慎みましょう。
エスカレーターは、「万一の際に相手を支えられるよう下に立つ」という考え方が基本です。上りなら目上の人の後から乗り、下りなら先に乗りましょう。
7. メールの送り方
ビジネスメールは、「読みやすさ」「相手が何をすべきかわかりやすいこと」が大きなポイントです。
まず件名は、「〇月〇日お打合せの件」のように具体的に書き、相手に何の件かすぐ分かるようにします。「お礼」「お伺い」だけなどは漠然としているので避けましょう。
本文は、改行や箇条書きを活用し、パッと見て理解しやすい書き方をします。ただし、ビジネスメールにおいては、顔文字や絵文字は使わないようにしましょう。
また、もう一つ大切なのが、送ったメールで相手に何をしてもらいたいのか、相手にわかりやすくすることです。具体的には、添付ファイルを見てほしい、日程調整をしてほしい、自分の考えについて意見がほしいなどです。こうした相手に求めるアクションを明記することで、相手に「仕事ができる」と思ってもらいやすくなります。
またその際、いつまでに連絡がほしいかも明記しておくと仕事がよりスムーズに進みます。
業務時間外のビジネスマナー
業務時間外のビジネスマナーについてもご紹介しておきます。
業務時間外でも、仕事の関係で会食をする場面などがあります。特にお酒が入るとリラックスしてしまうものですが、仕事の延長という気持ちを忘れず、楽しみながらも節度を保つことが大切です。
会食のアレンジ
若手社員は、歓送迎会や懇親会などの幹事を任されることが多いものです。自分が幹事をする場合、メンバーの年次、性別、好きなもの苦手なもの、予算などをよく考えて会場を選びます。また、近年は二次会の手配など不要とする職場もありますが、会社や部署によって文化が違うので、最初は先輩などに相談することがベターです。
参加者に会場を案内するときは、時間・場所・予約した名前や食事内容などを、分かりやすくメールなどで伝えるとよいでしょう。また、前日もしくは当日朝に事前連絡をすることも「できる人」と思わせるポイントです。
また、お会計は若手がまとめて支払っておき、後日精算をすることや、事前に会費を徴収しておくなど、支払い方法も会社によって暗黙のルールがある場合があります。
お礼
会食やパーティなどに招かれた場合は、出欠の返事を速やかに出す、当日の無断キャンセルはしない、といったことは基本のマナーです。
さらに、翌日の朝に、幹事や関係者にお礼のメールや手書きメモを残すようにすると、より理想的です。
お祝い
取引先でおめでたいことがある、職場で異動や退職がある、などの場合は、祝電を打つ、お祝いを贈るなどの対応が考えられます。温かい気持ちを示すにはどうしたらよいか、周囲の人や会社の規定・ルールを確認した上で、手配しましょう。
また、取引先やお客さまから、異動や引っ越し、転職などの挨拶状をいただくことがあります。つい返信をせずに済ませてしまうケースが多いものですが、相手はあなたとの関係を保ちたいのだと受け止め、電話やメール、手紙などで受け取った旨を伝えると、関係性をより深めるチャンスになります。
まとめ
若手社員が知っておくと良いビジネスマナーについて、具体例とともにご紹介しました。
ビジネスにおけるマナーは、相手を尊重し、お互いに気持ちよく仕事をするためのコミュニケーションのルールであり、それがあるとお互いの信頼感が増し、仕事がしやすくなっていきます。
ビジネスマナーは難しい、と構えずに、周囲の人に教わりながらどんどん実践していくと、次第に「マナーが分かっている人」「マナー上手な人」になれます。ぜひ試してみてください。