「災害は忘れた頃にやってくる」といわれますが、日本に住む私たちにとって、災害への備えは忘れてはならないものです。2019年2月の調査では、調査対象の過半数が具体的な備えをしていないことが明らかになりました。 (Misa)
災害への意識は時間の経過で薄れていく
マクロミルは、2017年2月より年2回実施している「災害や防災に関する定点調査(第5回)」の結果を発表しました。全国の20~69歳の男女1,000名を対象として、一般生活者の災害に対する意識や備えなどについて調査しているものです。
調査では、西日本豪雨後に急上昇した「豪雨、洪水」への警戒が継続する一方、過半数が「避難場所の確認」や「備蓄」など、実際の行動は行っていないことがわかりました。東日本大震災の後で備蓄できる飲料水や食料品の購入が増えましたが、時間の経過とともに災害への意識が薄れているのかもしれません。さらに、災害時の情報源として、停電時も使用できる製品が評価され、「ラジオ」が注目されています。背景には「スマートフォンは電池が切れれば終わり」という認識があるようです。若い世代では「家族」や「SNS」からの情報が上位に挙がっていますが、一歩間違うと、根拠のない情報や風評の拡散に結びつく可能性もあり、災害情報の入手先としては懸念があります。
生死の分かれめになる防災意識
災害発生から時間が経過し、日常が戻ってくると災害への危機感は徐々に薄れがちです。災害への危機感とともに強い不安感を抱き続けることは、多くの人にとっては深刻なストレスになるからです。精神衛生面から考えれば、つらい体験や恐怖を風化させていくのはやむをえないことでもあります。だからこそ、意識的に災害が起きることを想定して備えることが重要になります。災害による被害を想定して準備し、どのように行動するかを考える防災意識が個々の生存率、罹災率を大きく左右するといわれています。
窮地に陥ったとき、過去の記憶が走馬灯のように見えるなどといいますが、それは過去の記憶から危機を乗り越えるのに役立つ記憶を掘り起こすための脳の働きで、実際に起こりえるものです。
災害発生時の留意点として、「パニックにならないこと」が挙げられます。事前に理解しておけば、災害時に動揺しても適切な行動をとれる可能性が高くなります。実際、わずかな判断ミスが生死の境を分けています。起こりえる事態を想定する知識や事前情報、災害時の行動や必要な物品の準備ができていれば、パニックは生じにくくなります。日頃の防災意識は物理的な対策だけでなく、災害時においても正しく判断し、適切な行動をとるための備えでもあります。
メモリアルデーを鎮魂だけの日にしてはいけない
ヒトは"忘れる"生きものです。絶対に忘れていけない被災の事実は、記憶や感情ではなく防災意識として高め、維持していく工夫が必要です。まず、災害はいつか来ると"理解"(災害への危機感)すること、何が起こるか(被害)をイメージし、備える(減災)こと、万が一のときには根拠のある情報に基づいて行動することが重要です。災害が起きた日を鎮魂のメモリアルデーに留めてはいけません。過去の災害から得た教訓を活かし、いつか起こる災害に備える起点にし続けなければならないのです。
原稿:Misa
ITベンチャーで企画、人材開発、広報などを経て独立。現在はコンサルタント、ときどきライター。ライターとしては、IT系以外、アニメ・マンガ、車から美容・健康まで何でもチャレンジ中。