東京商工リサーチ(TSR)は保有する国内企業データベースとDun & Bradstreet(ダンアンドブラッドストリート、本社・米国)の海外企業データベースを活用し、日系企業の英国進出状況を調査しました。この結果、英国に707社の日系企業が進出し、5,485カ所の拠点を展開していることがわかりました。
業種は、輸送に付帯するサービス業や一般機械器具製造業、卸売業など多岐にわたり、東京商工リサーチでは、「英国のEU離脱の動きは日系企業にも大きな影響を及ぼすことになる」としています。
産業別の最多は運輸業の1,408拠点、小売業・サービス業・製造業が続く
英国の日系企業5,485拠点のうち、産業別の最多は運輸業の1,408拠点(構成比25.6%)でした。2017年には国内大手の駐車場運営業者が英国で駐車場事業を展開する企業を連結子会社化する動きもありました。
次いで、小売業の1,207拠点(同22.0%)、サービス業の1,010拠点(同18.4%)、製造業の753拠点(同13.7%)と続きました。
業種別最多は輸送に付帯するサービスの1,252拠点、次いで自動車小売業
産業を細分化した業種別では、最多は輸送に付帯するサービスの1,252拠点(構成比22.8%)でした。
次いで、自動車小売業(関連用品含む)、ガソリンスタンドの942拠点(同17.1%)が続きました。国内大手商社は、2011年に英国などでタイヤ小売などを展開する企業を買収しています。
情報処理サービスや広告代理業などの事業関連サービス業は545拠点(同9.9%)でした。
「製造業の生産体制への影響は小さくない」「中小企業だとなおさら深刻」
英国のEU離脱に伴い、これまでEU域内取引で発生しなかった関税が発生し、通関手続きに混乱が生じる可能性もあります。これはすべての幅広い産業で影響を受ける見込みですが、「とりわけ日系企業が753拠点を展開する製造業の生産体制への影響は小さくないだろう」(東京商工リサーチ)。自動車メーカーを中心に、英国での生産見直しの動きも加速し、今後は自動車以外の業界にも広がる可能性が出ています。
また、日系企業が532拠点を構える金融・保険業は、「単一パスポート」の適用失効による事業継続リスクの回避に向けた動きが活発化しています。一部の証券会社や金融機関はドイツなど英国以外のEU加盟国で証券業の免許を取得しています。「世界有数の金融都市、シティーの相対的な地盤沈下は避けられそうにない」(東京商工リサーチ)。また、EU離脱でポンドやドルの調達コストが上昇した場合、進出企業の収益にも影響します。
東京商工リサーチでは、「大手メーカーや金融機関と取引する日系企業の事業展開にも影響を及ぼす可能性がある」とし、特に、「日系メーカーの現地拠点に部材納入を目的で英国に進出した企業は、生産計画の見直しが現実になると進出メリットが喪失し、拠点での業績が悪化することも危惧される」としています。これが中小企業だとなおさら深刻です。東京商工リサーチは「日本国内より海外での売上高比率が高いケースでは、事業戦略の根本的な見直しも必要になる」としており、日本を巻き込む英国のEU離脱の行方に注目が集まっています。