有村架純さん、批判を浴びながらも挑戦した<br>『中学聖日記』でも見せた

有村架純さん、批判を浴びながらも挑戦した<br>『中学聖日記』でも見せた"仕事の見極め力"

「架純はこういう娘(こ)なの。真面目で偉いのよ」

これは2017年の年末に放送されたコントバラエティ番組『LIFE!~人生に捧げるコント~』(NHK)のトークコーナーで、内村光良さんが女優の有村架純さんを評した言葉です。

コントの合間にあるトークコーナーで内村さんから「ずっと忙しいけど、休みは取れているの?」と聞かれた有村さんは、

「撮影の合間にやっと数日間の休みが取れる計画が立って、南の島に行く予定をしていたんですけど...。でも休み明けが、岡田准一さんが主演する映画の大事な場面に関わるお仕事で...。岡田さんは、あらかじめ役づくりのために神経を集中させる役者さんなので、私が前の日まで、リゾートで遊び呆けていてはダメだろうと思って、キャンセルしました」と、答えていました。

そのプロ意識の高さに、内村さんを始め、出演者一同が感心していた様子がとても印象的でした。

やっと取れた休みを返上して臨んだ『関ヶ原』、脚が傷やあざだらけになる体当たりの演技

有村さんがやっと取れた休みを返上して臨んだ映画とは、2017年に公開された『関ヶ原』です。この作品で、有村さんは主演の岡田さん演じる石田三成に仕える侍女を演じていましたが、脚が傷やあざだらけになる体当たりの演技を披露していました。

この休暇を返上した有村さんの決意を鑑みると、有村さんの仕事に対する優先順位の見極め力が高いことを窺い知ることができます。

日々の仕事に追われ休日なしの毎日の中で、やっと取れた長期休暇。

ですが、休んでしまった場合、休み明けに仕事をご一緒する先輩の能力の高さについていけるかどうか不安でたまらない。であるならば、そのリスクはヘッジし、万全な状態で仕事に臨めるような態勢を整えたい。休暇旅行はキャンセルし、その準備のための時間に充てよう...。有村さんはこのように考え、休暇でリフレッシュして英気を養うメリットよりも、次の仕事のリスクヘッジを優先し、大作に臨んだのでした。

当時の有村さんは24歳、バカンスを楽しみたくてたまらない年ごろです。きっと多くの人は、休暇が取れたのであればそのまま旅行に向かうことでしょう。でも、有村さんの場合は、その瞬間に必要な優先順位を見極めた結果、休み返上という決意をし、自身の仕事の功績に繋げたのです。

連続テレビ小説『ひよっこ』で、スタイル維持を気にすることなく役作りに挑む

この有村さんの優先順位の見極め力は連続テレビ小説『ひよっこ』(NHK)で主演を務めた際にも発揮されていました。

このドラマの舞台は高度経済成長期の時代。

茨城県の北部にある奥茨城村(物語上の架空の村)から、東京へ集団就職することになった有村さんが演じる谷田部みね子という一人の少女の成長物語を描いたドラマです。

当時、実年齢が24歳の有村さんは、10代後半の女子高校生役を演じるために、撮影スタート時には1日3食お米を食べて体重を5kgも増やし、その後の東京編では徐々にやせていくようにウェイトコントロールをして役作りに励んだのだそうです。

スタイル維持を気にすることなく挑んだ役作りに対し、ネット上では「最近太ったと思ってたが、役作りだったのか!」「尊敬する!」と感心する声が上がっていました。

役作りのための増量について、ドラマが放送される前までは「太りすぎ」「どうしちゃったの?」などと揶揄するコメントもありましたが、自身の評判よりも、より良質な役作りのための努力を第一にする姿勢を貫いたとも言えます。

最初は酷評された『中学聖日記』、有村さんの見極め力が功を奏して高評価へ

そして、有村さんと言えば清楚な雰囲気や可愛らしいルックスが魅力的な女優さんですが、そのイメージを覆すべく新たな役柄に挑んだのが、昨秋に放送されたドラマ『中学聖日記』(TBS系)でした。

このドラマは、中学校教師と男子生徒の"禁断の恋"を描くというセンセーショナルな内容が放送前から話題となり、初回の視聴率は6%台と苦戦し、スタート当初は批判や酷評が相次ぎました。

実際、ネット上では、「清楚な有村さんのイメージに禁断の愛は似合わない」「不純な女性像は見ていて不愉快」などと厳しい声も上がっていました。

ですが、物語の舞台が3年後に移り、2人の関係性に変化が訪れるあたりから、視聴率は上昇し始め、回を追うごとにドラマにのめり込む視聴者も増えていきます。

この物語が中学生と教師の禁断愛だけを描いたものではなく、少年が一人前の社会人男性になるまでの過程と、大人になりきれていなかった女性教師が自立・自律していくなかで、お互いの気持ちを育み続けた8年愛の物語であるという真のメッセージが最終回で描かれると、視聴者からの声は一気に高評価へと変化しました。

同時に、その作品性も認められ、昨秋の10月~12月期に放送されたドラマを対象とした「週刊ザテレビジョン 第99回ドラマアカデミー賞」では、見事、最優秀作品賞に輝いています。『中学聖日記』はこの他、助演男優賞(岡田健史さん)、助演女優賞(吉田羊さん)、ドラマソング賞(「プロローグ」Uru)と合わせて、4部門での受賞を果たしました。

数々の非難や批判を浴びながらも、これまでとは違う作品と役柄にチャレンジした有村さんの見極め力が、功を奏した結果に繋がったと言えるのではないでしょうか。

有村さんは、現在公開中の映画『フォルトゥナの瞳』、また、3月にはNHK連続テレビ小説『ひよっこ』のスペシャルドラマにてヒロイン役を務めています。

これらの作品では有村さんの真骨頂である「純粋で全うで真っすぐ」なヒロイン像を味わえますが、この先、有村さんがどのような優先順位で作品や役柄を選択し、女優の道を究めていくのか、20代半ば以降のキャリアをいかにして積んでいくのか、興味深く見ていきたいと思います。

プロフィール

鈴木ともみ

経済キャスター・MC。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所 招聘研究員。
ファイナンシャル・プランナー、日本記者クラブ会員記者、多様性キャリア研究所副所長
音楽朗読劇ユニット『ELLE』(語り部・平山八重、ヴォーカル・池田ゆい、ピアノ・後藤里美、津軽三味線・清水まなみ)のストーリーテラーとしても活動中。
来日する各国大統領や首相、閣僚、ハリウッドスター等を含む取材・インタビューは3000人を超える。
キャスターとしてTV、ラジオ、各種シンポジウムへの出演の他、雑誌やニュースサイトにてコラムを連載中。
主な著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。

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