相手に失礼のない立ち振る舞いや、上司への「報連相」は社会人の基本中の基本。そこを疎かにしたままでは、常識を疑われ、「この人は仕事ができない人なのかも」と悪い印象を与えてしまいます。社会人教育の専門家として「新入社員研修」「管理職研修」など年間200以上の研修で講師を務める田畑美絵さんに、「この人なら大丈夫」と信頼されるためのスキルを伺いました。連載最終回は「報連相・スケジュール管理」編です。
◆報連相編
1. はじめのうちは迷ったら「言う」
「最近の若手社員は報連相ができてなくて」という話をよく耳にします。報連相とは報告・連絡・相談のこと。どれくらいの話だったら報連相が必要なのか、その判断が難しいのかもしれませんが、私がよく新人研修で言っているのは、「言うべきか、別に言わなくてもいいことなのか迷ったときには『言う』を選択しなさい」です。上司の様子をみてタイミングよく「今お時間よろしいでしょうか」と声をかけるようにしましょう。内容によっては「それは後でいい」「今じゃなくていい」「後でまとめて、でいい」と指示してくれますし、「この上司はこういう報告をほしがるが、あの上司はこういう報告はあとでまとめてでもいい」など、個別の対応策も立てられるようになっていきます。
報連相の基本は対面ですが、電話やメールなども活用しましょう。対面や電話で話をし、その"証拠"を残さなければならないと感じたときにはその後にリマインドのメールを送ります。忙しいためにとりあえず電話で相談し、その結果どうなったかはメールで報告するというパターンもあるでしょう。「面倒だからメールで済ます」「言いづらいことだからメールで」は仕事ができない人の典型的行動になるので注意しましょう。
2. 報告は5W2Hの事実情報+意見情報や感情情報
相談と報告はセットです。「ちょっと相談があるんですが」と話をしておいて、報告をしないのはいけません。相談をしたら、責任をもってその報告をします。その際には、まずは結論を言い、そのあとに詳細情報を伝えます。具体的にはいわゆる5W2H(いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どのように、いくら)を述べ、その後に意見情報や感情情報を加えます。
たとえば「A社からクレームがきました」という報告であれば、「いつ売って、いつクレームがあって、商品が今どこにあって、誰から連絡があって、何に怒っていて、どれくらいのお金を返さなければならないか」という詳細な報告をしたうえで、「私としてはこういうふうに対処したいと考えている」と意見を述べ、「A社からのクレーム対応はいつも大変なんですよ~」という感情情報を加えます。事実と主観はしっかりと分けて伝えることが重要です。
◆スケジュール管理編
仕事ができないと思われないためには、スケジュールは上司や同僚と共有するようにしましょう。自分の行動をすべて知られることに抵抗を感じる人もいるかもしれませんが、自分が重要度が高いと感じているスケジュールと、上司にとって重要度が高いスケジュールは違うことがあります。スケジュールがわかれば、上司は「それをするなら、先にこっちをしてほしい」と言えますし、部下の方は上司の予定をみて、「このタイミングで相談しよう」「ここで資料を見てほしい」と考えることができます。
スケジュール管理が苦手な人はたいてい予定を詰め込みすぎる人です。仕事の予定は『タスク業務』と『人とのアポイント』、『移動・休憩時間等』の3つに分けられます。仕事ができない人は「スケジュール管理=人とのアポイント」と考えてしまうのですが、大事なのはむしろタスク管理です。人と会うにしても、そのための準備や後の対応が必要となります。タスク管理は「自分とのアポイント」と考え、その時間はしっかりと確保してください。
たとえば私の場合は研修の日程はアポイント、研修にはテキストを作る時間と報告書を書く時間が必要になります。ですから研修を1日入れたら、その前後に必ず自分のタスクに充てる時間を取らなければなりません。アポイントだけで完結すればいいのですが、大抵の仕事はそうはいきません。アポイントが入った時点でその前後に必要な時間を確保するようにします。スケジュール帳はアポイントだけを入れる表ではありません。自分のタスクもスケジュール化するようにしましょう。
スケジュールがうまく回らない人は、スケジュール帳を眺めて振り返りをしてみましょう。「自分が思っていたよりこのタスクにこんなに時間がかかっていた」とか「この人との打ち合わせは大体1時間半はみておかないとダメだなあ」といったことが、だんだんわかるようになり、スケジュール管理がより適切なものになっていきます。
仕事はやらなければならないことをやるものですが、人生を考えればやりたいこともやるべきです。その時間を持つためにも、タスク管理を怠らないことが大切です。
プロフィール
田畑 美絵(Tabata Mie)
短大卒業後、保険会社に入社し、1年目より数々のタイトルを受賞。保険会社退職後、大手通信会社に入社し、人事・教育部門にて、新入社員(新卒・中途・アルバイト)研修や階層別研修のカリキュラム作成、トレーナー実務、トレーナー育成に携わり、1万人以上の受講者を数える。その後、水道管理コンサルティング会社にて執行役員として勤務した後、2006年11月より企業研修・社員教育・人財育成トータルサポートをおこなうNewtyを創業。その後まもなく、社員教育をおこなう株式会社ディプレの執行役員として就任。2015年に株式会社Newtyを設立。同社代表取締役。株式会社ディプレ取締役。
現在、「新入社員研修」「管理職研修」「営業研修」「就業支援研修」「独立・起業支援研修」を中心に年間約200講座を担当している。