一般的に「働き方改革」というと、残業時間を減らしたり、自宅でも仕事できるようにしたりと、なるべく会社から離れることで、プライベートを充実させるといった取組みが多いが、同じ「働き方改革」でも、逆に仕事とプライベートを分けるのではなく、会社内でもプライベートを充実させる仕組みをつくり、従業員の幸福度を高めようとするサービスが登場した。その名も「ユア・コンシェルジュ」。では一体どんなサービスなのだろうか。
"職場そのものが生活の重要な一部である"という考え方からサービス立ち上げ
「ユア・コンシェルジュ」は株式会社TPOが提供しているサービス。同社社長のマニヤン麻里子氏は、働き方改革について、「多くの企業で、従業員の『仕事』と『プライベート』のバランスを保つべく、残業時間の削減といった施策が講じられているが、部分的な制度変更に留まっている」との問題意識があったという。
同氏はこうした社会背景も踏まえ、"職場そのものが生活の重要な一部である"という視点に立ち返り、あえて『仕事』と『プライベート』を切り離さず、従業員自身のライフスタイル全体を包括的にサポートする『公私融合』という考え方に着目し、「ユア・コンシェルジュ」を立ち上げた。「ユア・コンシェルジュ」とは、社内に常駐するコンシェルジュが従業員の代わりに手続きやリサーチを代行し、公私共に調和の取れた職場環境の創出を目指す日本初のサービスである。
プライベートの充実を図る旅行先のリサーチから靴磨きやネイルケアまで
同サービスを導入している企業は、サニーサイドアップやNTTデータ(一部部署にて運用中)、電通(一部部署にてトライアル運用中)、三菱地所(実証実験のため導入)。このうち、サニーサイドアップでは、以下のサービスを提供している。
(1)社員に代わって旅行のプランニング、ギフトの提案、レンタルできる介護用品のリサーチや、靴や洋服の修繕といった各種手続きの代行
(2)靴磨き、ネイルケアやランチ会などのワークショップ、イベントの実施。専任の方を呼び、社内で身だしなみを整えたり、社食がない社内にランチを提供。社員から寄せられた声で資産形成の基本を学ぶセミナーなども実施。
実際に「ユア・コンシェルジュ」を導入したサニーサイドアップの社員からは、「子供の行事や家族旅行のプランニングなど、平日に時間が取れず進まなかったことが、仕事の合間に相談でき、時間と心の余裕が生まれた」、「日常生活で時間に追われていたこと、負担になっていた部分が軽減され、仕事にも集中できたしプライベートもより充実できている」の声があるという。
欧米企業では、従業員の幸福度向上のため、同様のサービスを導入
実はこうした従業員向けサービスは、働き方先進国であるフランスやアメリカの企業でよく導入されているという。従業員にとっての会社の付加価値を上げ、多様な人材が働き続けることができるよう、こうしたサービスを積極的に取り入れる企業が多いのだ。
幸福度が高い社員は仕事においてパフォーマンスが高いということは実証されており、Googleなどの先進企業では、社員の幸福度向上のため様々な取り組みを行っている。その流れのひとつに従業員向けコンシェルジュの導入がある。
いかがだろうか。日本の企業の間でも、残業時間を減らすだけでなく、こうしたプライベートの充実をサポートする企業が、今後増えていくのかもしれない。