「仕事ができない人」に見られないようにするためのスキル|第3回 「会話」編

ビジネススキル・マナー

初対面で「この人仕事ができそう」と思われる人がいる一方で、ほんの短い時間で「この人と仕事しても大丈夫かな」と不安がられてしまう人もいます。「仕事ができない人」とレッテルを張られないためにはどうしたらいいのでしょう。社会人教育の専門家として「新入社員研修」「管理職研修」など年間200回以上の研修で講師を務める田畑美絵さんにビジネスシーンの立ち振る舞いについて伺う連載の第3回。相手に「できない」と思われない会話のコツを伺いました。

1.話すのが苦手なら相手に話してもらう

「口ベタで」「何を話したらいいのかわからなくて」と言う人がいますが、円滑なコミュニケーションを取るために、自分からどんどん話さなければということはありません。もし自分が話すのが苦手なら、相手に話してもらえばいいのです。相手の話を聞く力と、質問を投げかける力さえあれば、基本的にコミュニケーションは成立します。自分から話すことが苦手な人が無理に会話を展開して、会話がかみ合わなくなるくらいなら聞き役に徹してみてはどうでしょうか。

傾聴力という点でいえば、大事なのは「繰り返す」「(相手の話を)まとめる」「気持ちをくむ」の3つが大事です。まず「繰り返す」は、相手が言ったことばを拾って戻す。このときにオウム返しになりすぎないように気を付けましょう。「まとめる」は、相手が言った重要なキーワードを拾って「こういうことですよね」と伝えてあげること。その際は「話長いけど、要はこういうことだよね」と取られないように注意しましょう。「繰り返す」「まとめる」をすることで、相手は「この人、私の話をすごく聞いてくれている」と好意を感じてくれます。

「気持ちをくむ」は少し上級編になりますが、こちらもぜひマスターしましょう。ビジネスにおける会話は基本的に事実情報のやりとりです。「〇〇会社からこういうクレームがきました、一旦こういうふうに対応しましたが、この後はこういうふうに対応しようと思います。いいですか」といった報告があったとしましょう。そこで聞き手は、先ほどの紹介した「繰り返す」「まとめる」で返すわけですが、そのときにたとえば「そんな対応ができてすばらしいですね」とか「そんなことがあって、大変でしたね」という一言を加えるのです。言い換えれば相手から提供される事実情報に含まれている感情情報をくみとってあげるということ。そうすることで、相手は「この人はわかってくれるから」とさらにしゃべりたいと思いますし、コミュニケーションは一気に膨らみます。もちろん、「この人は仕事ができそう」と感じてもらうことができます。

2.オープンクエスチョンで会話を広げる

「繰り返す」「まとめる」「気持ちをくむ」という反応をしているだけでも相手から話を引き出すことができますが、さらに相手に気持ちよく話してもらうには質問力も身につけるといいでしょう。

質問にはクローズドクエスチョンとオープンクエスチョンがあります。クローズドクエスチョンは、答えがイエスかノー、あるいはAかBといった感じになるもの。たとえば「出身地はどこですか」も答えとなるものは限られていますからクローズドクエスチョンになります。また「A社はいい会社ですか」もクローズドクエスチョンになりますが、その答えについて「どういったところがよくないのですか」と聞くのはオープンクエスチョンになります。当然オープンクエスチョンの方がいろいろ自由に話せますから、会話を広げようというときには意識的にオープンクエスチョンを増やした方がいいでしょう。

特にセールス(営業)の仕事をしている方は、クローズドクエスチョンが多くなるので注意が必要です。セールスは、「御社は○○についてお困りですよね」「はい、困っています」「この問題が解決したらいいですよね」「はい、そうです」「そこで、そういう商品があるのですが...」のような流れになります。セールス自体が、小さなイエスを重ねて大きなイエス(申込や契約)をつかんでいくものなので、このようになりがちです。

3.聞き上手のほうが営業は売れる

「この人とならまた話してもいいな」と思われたら、また会ってくれる可能性は高まり、営業のチャンスは膨らみます。こう考えると、しゃべるのがうまい人よりも、聞くのがうまい人のほうが営業にはむしろ向いているといってもいいかもしれません。

結局のところ、営業はソリューションが多いものです。何かこういうものを導入すればこういうことが解決するということで、お客さんに買うか買わないかを判断してもらうというパターンがほとんどではないでしょうか。だからこそ「この人に相談すれば何か解決してくれそう」と思ってもらうことが大事です。通り一辺倒の商品説明ができる営業パーソンは必要とされません。パンフレットを読めばことは足りるのです。それよりも、困ったことを聞き出し、うまく「御用」を聞く。そして、それに合った提案をするのが営業のあるべき姿ではないでしょうか。お客さんが「ちゃんと話を聞いてもらっているし、自分のニーズは伝えてあるから、この人に任せれば自分が求めるものが出てくるだろう」と思ってくれることが何より大事であり、そのためには傾聴力と質問力を磨くことが必要なのです。

プロフィール

田畑 美絵(Tabata Mie)

短大卒業後、保険会社に入社し、1年目より数々のタイトルを受賞。保険会社退職後、大手通信会社に入社し、人事・教育部門にて、新入社員(新卒・中途・アルバイト)研修や階層別研修のカリキュラム作成、トレーナー実務、トレーナー育成に携わり、1万人以上の受講者を数える。その後、水道管理コンサルティング会社にて執行役員として勤務した後、2006年11月より企業研修・社員教育・人財育成トータルサポートをおこなうNewtyを創業。その後まもなく、社員教育をおこなう株式会社ディプレの執行役員として就任。2015年に株式会社Newtyを設立。同社代表取締役。株式会社ディプレ取締役。
現在、「新入社員研修」「管理職研修」「営業研修」「就業支援研修」「独立・起業支援研修」を中心に年間約200講座を担当している。

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