ビジネスにおいて、必ず必要となるのが「コミュニケーション能力」です。一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)が毎年実施している「新卒採用に関するアンケート調査」の「選考にあたって特に重視した点」でも「コミュニケーション能力」が13年連続第一位でした。(2016年4月度)
では、「コミュニケーション能力が高い人」とは、どのような人のことでしょうか。それは、決して気の利いたことが言える「話し上手」な人ではなく、実は「聴き上手」な人のことなのです。相手がドンドン話してくれる「傾聴のスキル」を身につけましょう。
「傾聴」とは?
「傾聴」とは耳だけでなく、目や心や態度などを総動員して積極的に「聴く」ことです。人は吐き出した自分の想いを受け止めてもらうだけでも、かなりの満足感が得られるものです。また、自分の発した言葉を自分で聴くことで、問題点や解決に自ら気づく可能性も大いにあります。
■3つの「きく」
日本語 | 英訳 | 意味 | 漢字の成り立ち |
---|---|---|---|
聞く | hear | 聞こえる、聞く | 耳で聞く |
聴く | listen | 意識して聴く | 耳と目と心で聴く |
訊く | ask | 尋ねる | 言葉で訊く |
「傾聴」の3つのポイント
人の話を聴くのは実はとても難しいものですが、「傾聴」は技術(スキル)ですので、磨くことができます。ここから3つのポイントをお伝えします。
1:「アイコンタクト」
「話をちゃんと聴いています」という意思を伝え、相手の様子を観察するためにもアイコンタクトは欠かせません。
ただし、相手の目をじっと見つめると相手は緊張して話しにくくなります。凝視するのではなく、両目と鼻の頭を結んだ三角形の辺りを柔らかな目線で見ます。そして、「ここは大切」というところでしっかりと視線を合わせるといいでしょう。目を反らす際は上や横に反らさず、自然と下に反らします。
2:「うなずき」と「あいづち」
どちらも、「話を聴いている、理解している」ことを伝えるサインです。適切なうなずきとあいづちには、相手の話を促す効果もあります。「はい」ばかりを繰り返さず、バリエーションを増やすのがコツです。
■ビジネスマナーとしてのあいづち
気をつけたいあいづち | いいあいづち |
---|---|
・はい、はい/うん ・で? ・なるほどですね ・まじっすか? ・あ、そう |
・はい ・それで、どうな(さ)ったんですか? ・なるほど、さようでございます(ました)か ・本当ですか? ・さようでございます(ました)か |
3:「復唱」
復唱は内容を正確に把握しているからこそ、できることです。よって、相手は「私の話をしっかり聴いてくれている」と安心し、信頼感を持ちます。電話番号や日付けなど、間違ってはいけない数字のみではなく、感情を表す言葉を拾って復唱してみてください。
人間は感情の生き物ですから、事実だけでなく、「気持ち」もわかってほしいもの。「そうなの!わかってくれる?」と一気に心理的距離が縮まるでしょう。
【例】
「本当に"大変"だった」⇒「"大変"でいらしたんですね」
「とにかく"寂しかった"んです」⇒「"寂しい"とお感じになっていたんですね」など
他にも、心理的距離を縮めるテクニックとして、「ペーシング」(会話のペースを合わせる)、「ミラーリング」(態度や動きに合わせる)なども効果的です。
まとめ
スキルやテクニックの前提として「"心"で聴く」ことが何より大切です。「どうせつまらないだろう」と先入観を持って聞いたり、自分が次に話すことを考えながら、うわの空で聞いたりするのは、相手にすべて伝わってしまうもの。話し手の聴き方ひとつで相手がドンドン話してくれる「傾聴のスキル」には相手への「思いやり」が前提となることも忘れないようにしましょう。