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シンスペクティブ・エンジニアインタビュー(5)--データサイエンティスト・高畑圭佑氏
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シンスペクティブ・エンジニアインタビュー(5)--データサイエンティスト・高畑圭佑氏

SAR衛星(合成開口レーダー衛星)の開発・運用することで地球観測データを取得し、その膨大な地球観測データを、データサイエンス・機械学習を用いて解析し、政府や企業にソリューションとして提供している株式会社Synspective(シンスペクティブ、以下シンスペクティブ)。2020年12月15日には、自社で開発したSAR衛星「StriX-α」を、Rocket Lab社のElectronロケットに搭載し、ニュージーランドの発射場から 打ち上げた。

今回は、躍進を続ける同社を支えるエンジニアの方々5人にインタビューした内容をお届けしたい。

第5回は、データサイエンティストの高畑 圭佑(タカハタ ケイスケ)氏。

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目次

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1.衛星画像から意味のある情報を抽出、サービスとして提供できるアルゴリズムを開発

私はデータ分析チームに所属するデータサイエンティストです。衛星画像から意味のある情報を抽出してサービスとして提供できるように、統計手法や機械学習の手法を使って、その方法論、アルゴリズムの開発をしています。

私は、博士課程修了後 、昨年4月にシンスペクティブに新卒入社しました。博士課程では企業との共同研究もいくつか経験していましたし、弊社では働き方についてはかなりの裁量が認められているため、初めての社会人生活にそれほど戸惑いはありません。

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2. 大学では経済を専門にデータ解析、入社後に物理を勉強し直す

大学では統計学と計量経済学が専門で、主に経済データを解析するための方法論の研究を行なっていました。現在仕事で用いる分析手法と基礎は共通している部分も多いのですが、衛星画像特有の特徴を理解し、それを活かすための勉強は入社後に必要でした 。私たちシンスペクティブのSAR衛星データは画像化するとモノクロで、光学カラー画像に比べてそのままでは情報量が少ない一方、信号の位相情報など、光学画像にはない情報も持っています。また、一見ただのモノクロ画像に見えても、通常の光学写真と比較すると、写り方など幾つかの異なる性質もあります。そういった特徴を最大限に活かして分析を行うためには、振動・波動やレーダーの基本的な原理を理解しておく必要があります。物理に関しては大学1年生の教養課程で学んだきりだったので 、入社してからもう一度勉強し直しました。

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3. 自分のオリジナリティが発揮できるような分野に興味

大学を卒業して大学院に進学する時点で、博士課程を取得してその後は民間企業に就職しようと考えていました。私のように経済学・統計学が専門の場合、近年では民間だとGAFAに代表されるテック企業、あるいは広告やマーケティング、製薬企業などをまず就職先に考える場合が多いです。

ですが 、卒業後のキャリアについて考えていくにつれて、だんだんそういった領域に興味が持てなくなりました。人気の分野ですので、競争が激しく、ある程度枠が定まった設定の下で優秀な人が寸暇を惜しんで競争をしています。そういう中に入って、自分も競争に参加するのはあまりいい考えとは思えなかったのです。

ちょっと捻りを加えた分野で活躍してみたい。自分のオリジナリティが発揮できるような分野で仕事をしてみたい。まだ系統だった分析手法が確立されておらず、色々と自分で組み立ていける分野でやってみたいと思うようになりました。そういう分野、そういう企業を探している時に、シンスペクティブと出会いました。入社前に、私にはどういう貢献ができそうかということは採用担当の方と綿密に話し合いましたので、元の専門と領域が異なるとはいえ、不安はあまりなかったです。

4. 入社して試行錯誤をしなかったことは一度もない、挑戦しがいのある仕事

シンスペクティブには、まだ業務の系統だった手順はありません。マネージャーからこういう分析をしてほしいという大枠のオーダーは示されますが、それをどう実現するのかは基本的にすべて任せられます。そのような働き方は楽しいですが、同時に試行錯誤の連続です。入社してから試行錯誤しかしていないと言ってもいいほどです。

衛星画像というのは上から地上を見下ろした画像なので、情報量が限られています。例えば、上から見て円形の建築物があっても、それが本当は球状なのか、円柱状なのかはわかりません。その限られた情報の中で、実用上求められる精度を出していくのは、本当に難しい。それだけに挑戦しがいがあります。

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5. 異なる文化の同僚とのディスカッションも挑戦の一つ

シンスペクティブには、いろいろな国の出身の人がいて、専門分野もみんなばらばらです。そういう異なる背景を持った人達と英語を使ってコミュニケーションを取り、一緒に仕事をしていくということも私にとっては挑戦です。

海外出身のメンバーは、総じてディスカッションが上手です。その場で思いついたことであっても、それを的確な言葉にして、論理的で説得力のある発信をするという力に長けています。その場で考えたのではなく、ずっと前から用意していたのではないかと疑いたくなるほどすらすらと喋るのです。そういう人達と同じレベルでの議論をするのはものすごく難しい。これは必ずしも英語だけの問題じゃなくて、同じことを仮に日本語で行ったとしても満足にできたかと問われると疑問です。それほど、彼らは議論慣れしており、学ぶことが多いです。

また、彼らに話を聞くと、相手に反論をするということは、それだけ相手の話をきちんと聞いたというシグナルであり、相手を尊重することだといいます。日本人の感覚だと、あまりに直接的な反論をすると、自分に敵対しているのではとネガティブな感情を持ってしまうこともあるかと思いますが、そういう感覚はまったくないというのです。そういった文化の違いを肌感覚として経験できるのもシンスペクティブの良い点です。周りから刺激を受け、自分の足りないことを気づかせてくれ、それを高めようとするモチベーションが自然に生まれる。それが多様性のある企業のいちばん大きなメリットだと思います。

6. さまざまな情報の中から根気よく学んでいける人が向いている

最初の物理の勉強は大変は大変でしたが、新しい分野のことに取り組む場合はどんな場合でも最初にある程度集中的に学ばないといけないと思いますので、特別苦労したとは思っていません。衛星に関する専門知識がなくても、統計や機械学習の基礎的なことをきちんと理解していれば 、入社後にキャッチアップして、シンスペクティブで活躍できると思います。

ただ、衛星画像のデータ解析というのは一般的なデータサイエンスの話題ほどポピュラーではないので、まだまだ情報が整理されていません。そういう場合でも、雑多な情報の中から根気よく学んでいける人が向いていると思います。

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7. スケールの大きな事業にかかわれることがモチベーションに

近年では分析を行うためのパッケージや計算環境が充実してきて、分析を行うための準備や実装にかかる労力は劇的に効率化されました。効率化されたからこそ 、手法の原理的な部分やその背景にどういった問題意識があるのか考えること、またドメイン固有の問題を理解して衛星画像と機械学習で扱える問題に落とすことに時間を費やすことが重要だと思います。日頃からそういう訓練をしておくと、ボトルネックになる部分に直面しても、その手法をこう変えたら良いのではないかという面白いアイディアが生まれて来やすくなりますし、色んなアイディアがあっても、それら試すのは以前と比べると圧倒的に容易です。自分が考えたアイディアを実現するというやりがいも生まれます。

私たちシンスペクティブは、自分たちで衛星を開発し、打ち上げ、観測をし、データを取り、それをサービスとして提供し、世の中の役に立てるというスケールの大きな事業をしています。その一部に関われるというのは、私にとって、大きなモチベーションとなっています。

打ち上げの瞬間は本当に嬉しかったですね。そこからようやく私たちのデータが世の中で使われるようになるのですから。入社して以来、分析はどちらかというとうまくいかないことの方が多かったですが、これからまた頑張ろうという気力が湧いてきました。

原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)
テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

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