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シンスペクティブ・エンジニアインタビュー(3)--品質保証エンジニア・山脇久嗣氏
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シンスペクティブ・エンジニアインタビュー(3)--品質保証エンジニア・山脇久嗣氏

SAR衛星(合成開口レーダー衛星)の開発・運用することで地球観測データを取得し、その膨大な地球観測データを、データサイエンス・機械学習を用いて解析し、政府や企業にソリューションとして提供している株式会社Synspective(シンスペクティブ、以下シンスペクティブ)。2020年12月15日には、自社で開発したSAR衛星「StriX-α」を、Rocket Lab社のElectronロケットに搭載し、ニュージーランドの発射場から 打ち上げた。

今回は、躍進を続ける同社を支えるエンジニアの方々5人にインタビューした内容をお届けしたい。

第3回は、品質保証エンジニアの山脇 久嗣 (ヤマワキ ヒサツグ)氏。

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目次

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1.前職では自動車関係の品質保証エンジニア、自動車産業は技術が成熟した世界

私は衛星システム開発部で品質保証エンジニアをしています。前職では、自動車関係の品質保証エンジニアを務めていました。

自動車産業は、いきなりEVや自動運転という技術が登場して、今まで扱ったことのない電子部品を扱うようになりました。自動車メーカーはそのような電子部品の扱い方がわからない、一方で電子部品メーカーは自動車というものがまだ理解できない。その中で、自動車と電子部品の両方がわかる専門家として、ハイブリッド車やEVの開発に携わってきました。

自動車産業にはすでに長い歴史があり、技術は成熟していて、業務の標準化も進んでいます。ものすごく極端なことを言うと、新しい技術を学び、業務のやり方を覚え、それを組み合わせれば量産までできてしまう世界になっています。

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2. 宇宙産業はこれから量産の仕組みを作っていく段階、そこに惹かれた

一方で、宇宙産業はまだまだ「一品ものを作る」感覚が残っていて、私たちシンスペクティブは、これを量産して、サービスとして提供することを目指しています。シンスペクティブからお声がけをしていただいた時に、この業界はこれから量産の仕組みを作っていく段階なのだなという印象を持ち、そこに強く惹かれました。

おそらく、何十年か前に、日本の自動車メーカーが欧米に学んで、量産化の仕組みを作っていった黎明期に近いことをやることができるのではないか。伝統的な宇宙産業に学んで、それをシンスペクティブに合った量産化の仕組みを作っていくことができる。それが私にとって大きな魅力でした。

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3.品質基準のレベルをどこに設定するかということを1から考えていくことができる

特にシンスペクティブという企業には強い魅力を感じました。シンスペクティブは、自分たちで衛星を開発し、量産し、打ち上げ、自分たちで情報サービスを提供するというビジネスモデルです。衛星を開発製造して、納品をするというビジネスではありません。衛星を製造して納品するビジネスでは、品質管理は納入先の基準に従わざるを得ません。

一方、私たちシンスペクティブは、これも極端なことを言うと、宇宙で特定の部品が故障しても、リカバリーする方法が用意されているのであれば、自分たちの判断でその部品の品質は下げることができるの です。品質とスケジュール 、コストのバランスを見て、品質基準のレベルをどこに設定するかということを1から考えていくことができるそこからやっていける楽しさがあります。

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4. 一度組み上げた衛星は、打ち上げてしまうと直接動作を見ることはできない難しさも

ただし、簡単ではありません。自動車であれば、実際に走らせてみて検証することができます。でも、衛星は宇宙という特殊環境で動作するものなので、地上で動かすには限界があり 、真空チェンバーなどの仮想環境でのテストしかできないのです。一度、組み上げた衛星は打ち上げてしまうと、人が直接動作を見ることはできませんし、帰ってきません。不具合が起こった際に分析する対象のデータが自動車に比べればものすごく少ない。そこに難しさがあります。

私は入社して半年になりますが、衛星の専門的な機能に関する知識はまだまだ足りません。全体の姿がぼんやりとイメージできるようになったところです。

5. 課題に直面してからピンポイントで学ぶ毎日

この専門知識の勉強については、入社直後は少し戸惑いました。自動車であれば、サプライヤーがさまざまな技術資料を公開していますし、専門雑誌にも技術詳細が掲載されます。しかし、衛星に関してはサプライヤーの情報も雑誌の解説も限られています。最初は機構の名前を聞いても、その機能がイメージできないような状態でした。

シンスペクティブには、宇宙産業以外のバックグランドを持っている人もたくさんいますが、もちろん、長年宇宙産業に従事されてきた方もたくさんいます。最初はそのような方を見つけて、丁寧に教えてもらうというところから始めました。網羅的に勉強しようとしても、自分が何がわからないのかわからない状態ですから、課題に直面してからピンポイントで学ぶということをしています。

現在では調べ方がだいぶわかってきました。ネット情報、雑誌情報は少ないものの、宇宙関連の論文から有用な情報が得られることがわかってきました。そういう資料を使って学んでいます。調べ方がわかるようになってからは、勉強も業務と並行して行えるようになりました。

6. 新しいことをどんどん自分でやっていける人にとって魅力的な会社

シンスペクティブに向いているのは、新しいことをどんどん自分でやっていける方だと思います。成熟した企業のように、確立した業務体系の中で、上司の指示を受けて、それをきちんと遂行することにやりがいを感じる方は、シンスペクティブで働いても、あまり楽しくないのではないかと思います。

新しい業務を作っていくというのは、大きなやりがいを感じますが、不安が常につきまといます。自分の考えが果たして正解なのかどうか答えが出ません。しかも、会社の規模が大きくなり、フェーズが変われば、今うまくいっているやり方も正解ではなくなっていきます。常に業務を作り続け、変えていかなければなりません。ですので、いつも自分の中で「ほんとうにこれでいいのか」という自問自答をしています。それでも、明日までには周りに結論を示さなければなりません。そういう不安と闘っていける強さが必要です。

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7. 責任感の重さ、プレッシャーの分、喜びとやりがいがある

さらに、シンスペクティブはスタートアップ企業であり、優秀な人が集まっているので、誰かひとり欠けただけで業務が滞るようになります。その責任感の重さ、プレッシャーは成熟企業にはないものです。

その分、喜びとやりがいは大きい。昨年の12月に1機目の衛星となるStriX-αの打ち上げに成功をしました。それは社員全員が感動に包まれたできごとだったのですが、私がほんとうに嬉しかったのは、衛星から最初のデータが送られてきて、それが画像として表示された瞬間です。ちゃんと衛星が問題なく動いている。これで、次の衛星の開発にかかれると思いを新たにしました。

シンスペクティブは、結婚に例えると、最初のハネムーンに行ったあたりです。いちばん楽しい時期です。これから量産の仕組みを確立して、たくさんの衛星を産み出していくことになります。30機の衛星を打ち上げ、世界中を観測できるコンステレーションを2020年代後半に構築するという目標に向けて、全員で走り始めています。

原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)
テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

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