ITエンジニアに必要な今を知れる情報メディア
【ITSとは】交通×ITで解決できる社会課題や実現のための戦略について解説
news

【ITSとは】交通×ITで解決できる社会課題や実現のための戦略について解説

電気自動車(EV)や自動運転など、自動車を巡る技術は日々進んできますが、これと並んで未来の交通を変えると期待されているのが「ITS」です。では、ITSとは何なのか、ITSが実現した場合に解決できる社会的課題や、実現するための戦略について解説します。

目次

1.ITSとは

ITSとは、Intelligent Transport Systemsの略で、高度道路交通システムのことです。IT(情報通信技術)を用いて、「人」「道路」「車両」を一体として構築するシステムのことです。

広く使われているカーナビや、バス停での次のバスの到着時間表示などもITSの要素のひとつですが、このような要素を統合していき、顕在化する社会課題を解決することを目的としています。

2.ITSにより解決される社会課題

「官民ITS構想・ロードマップ2020」((C)高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議)には、ITSにより解決できる社会課題が8つ挙げられています。

  1. 移動の自由の確保:高齢になっても自由に移動できる社会
  2. 地域活性化:人口減少地域の生活インフラを存続させる
  3. 交通事故削減:交通事故は減少傾向にはあるものの、さらなる減少を目指す
  4. 移動の効率化:人の移動だけでなく、物流などにより発生する渋滞の解消
  5. 環境負荷低減:交通が排出する二酸化炭素量の削減
  6. 人材不足解消:トラック、タクシー、バスなどの人材不足を補い、事業の継続を図る
  7. 生活利便性向上:渋滞の解消、物流の円滑化により、市民の可処分時間を増加させる
  8. 産業競争力の強化:MaaS(マース)などを実現することで、日本の主幹産業である自動車産業の国際的な競争力を向上させる

さらに、従来のITS技術に加え、自動運転、電気自動車(EV)という世界的な大きな流れが生まれています。このような先端技術を考慮したITS構想が必要になっています。

自動運転はセンサーにより、外部環境を認識して、走行するルートや速度などを決定しますが、センサーだけで安全な自動運転を実現するのはきわめて難しいことです。

post368_img1.jpg

例えば、車線マークが消えていたり、標識が太陽光や悪天候により認識できなかったり、物陰からの急な飛び出しには対応ができなかったりするなど、さまざまな課題があります。完全自動運転を実現するには、センサー情報だけではなく、道路や環境を情報化して、自動運転車に伝えることが必須になります。

ITSと自動運転を組み合わせることで、日本はスマートな交通社会を実現しようとしています。

【関連記事】「「再生可能エネルギー×EV」でカーシェアビジネスを展開し、地域の課題を解決(株式会社REXEV(レクシヴ)代表取締役社長 渡部健)」

post368_img2.jpg

3.ITSのロードマップ

ITSのロードマップは、2014年に「官民ITS構想・ロードマップ」とまとめられて以来、毎年改訂版が発行されています。発行時期は6月から7月前後なので、2020年版が最新となります。

このロードマップでは、次のような目標が掲げられています。

  • 2018年:交通事故死者数を2500人以下にする
  • 2020年:世界一安全な道路交通社会を構築(交通事故死者数が人口比で世界一少ない割合を実現)
  • 2020年以降:自動走行システム化に係るイノベーションに関し、世界の中心地となる(自動走行システムの普及率など)
  • 2030年:世界一安全で円滑な道路交通社会を構築(交通渋滞状況に係る指標など)

2018年に交通事故死者数は3532人でした。最新の2017年の交通事故死者数の人口比では、日本は183カ国中、163位でした。日本より、人口比で交通事故死者数の割合が低いのは、シンガポールやドイツ、フィンランドなどです。

4.ITSを実現していくための戦略

ITSを実現していくために、全国一律ではなく、4つの地域に区分し、その地域の課題、特性にあった基本累計を実現していくことで、ITSを普及させていこうとしています。

4つの地域とは次のようなものです。

  1. 郊外・過疎地域
  2. 自家用車中心中規模都市
  3. 公共交通普及中規模都市
  4. 大規模都市

post368_img3.jpg

(ITSの実現は、4つの地域で異なる戦略に基づいて実施される。「官民ITS構想・ロードマップ2020」((C)高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議)より引用)

5.2030年にITSで実現される将来像

4つの地域で、それぞれに2030年までに実現する将来像が描かれています。

(1)郊外・過疎地域:公共交通・物流の維持、高齢者などの移動の自由確保

交通需要を正確に把握し、需要規模に応じて路線バス、オンデマンドバス、タクシーを提供することで、公共交通を効率化していき、公共交通の収入を確保し、維持していけるようにします。また、自動運転サービスも積極的に投入をしていき、道の駅がサービス拠点となります。鉄道駅、公共施設、商業施設の間を自動運転車が往復することで、移動の自由を確保していきます。

(2)自家用車中心中規模都市:交通渋滞の緩和、移動の自由確保、安全な運転の実現、物流高の効率化、人材不足の解消

駅から自宅までのライトワンマイル部分にオンデマンド交通、カーシェアなどを組み合わせることで利便性を向上させ、渋滞を緩和します。また、交通状況データを把握し、渋滞部分を分散するように誘導します。また、物流を地域間輸送や自動運転化などにより効率化することで、安全と運転手不足の解消を実現していきます。

(3)公共交通普及中規模都市・大規模都市:中心地の混雑緩和、MaaSによる生活利便性向上、物流の効率化

さまざま移動手段を組み合わせて、一元的に検索と予約ができるMaaS(マース)を普及させ、中心地の混雑を緩和し、同時に利便性を向上させます。また、中心地では、需要に応じて価格が変動するダイナミックプライシングを導入し、混雑を分散させます。

また、地下などの未利用空間を輸送に活用したり、ラストワンマイル部分では自動配送ロボットを活用し、オフィス街などの物流効率を高めたり、同時に運転手の人で不足を解消します。

6.まとめ

ITSとは高度道路交通システムのことで、ITを活用することで、人、道路、車両の3つを一体としたシステムことです。

交通関連で、大きな潮流になっている自動運転や電気自動車(EV)では、残念ながら日本は米国や中国に遅れをとっていますが、日本の戦略は車両の技術だけではなく、道路、人もスマート化するITSで、世界最先端の交通社会を実現する戦略です。ITSの要素となる個々のサービスでは、必ずしも世界最先端とは言えなくても、総合力で世界最先端を目指しています。

すでにレベル3自動運転に関しては、世界に先駆けて、利用を認めました。また、トヨタは静岡県裾野市に新たなスマートシティ「ウーブン・シティ」の建設を始めています。ロードマップに従って、着々と成果が生まれ始めています。

【関連記事】「日本でいよいよ始まるレベル3自動運転--一方、AIの限界で起きている事故も」

【関連記事】「スマートシティ必須のVPP(仮想発電所)--エンジニアは新領域に転身するチャンス」

原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)
テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

この記事はどうでしたか?

おすすめの記事

エンジニア向け求人特集

BACK TO TOP ∧

FOLLOW