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量子コンピューターとは?仕組みや世界での開発状況の概要を解説
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量子コンピューターとは?仕組みや世界での開発状況の概要を解説

コンピューターは私たちの生活に便利さを与えてくれる技術です。これまで解決できなかったさまざまな課題を、簡単な操作でスピーディーに解決してくれます。

そんなコンピューターをもってしても時間がかかるような高度な処理を高速で実現してくれるものとして期待されているのが量子コンピューターです。ここでは、量子コンピューターの仕組みや種類、開発の現状などについて解説します。

目次

1.量子コンピューターとは?

1.1.量子とは?

1.2.量子は波であり粒でもある

2.量子コンピューターの仕組み

3.従来のコンピューターとの違いは?

4.量子コンピューターの種類

4.1.量子ゲート型

4.2.量子アニーリング型

5.実用化の現状は?世界での開発状況


6.量子コンピューターのこれから

7.まとめ

1.量子コンピューターとは?

そもそも量子コンピューターの「量子(りょうし)」とはいったいどのようなものなのでしょうか。量子コンピューターを知るための基礎をまずは確認しておきましょう。

1.1.量子とは?

量子とは、粒子と波の性質をあわせ持った、とても小さな物質やエネルギーの単位のことです。物質を形作っている原子そのものや、原子を形作っているさらに小さな電子・中性子・陽子といったものが代表選手です。光を粒子としてみたときの光子やニュートリノやクォーク、ミュオンなどといった素粒子も量子に含まれます。

量子の世界は、原子や分子といったナノサイズ(1メートルの10億分の1)あるいはそれよりも小さな世界です。このような極めて小さな世界では、私たちの身の回りにある物理法則(ニュートン力学や電磁気学)は通用せず、「量子力学」というとても不思議な法則に従っています。」

【出典】量子ってなあに?|文部科学省

私たちの目の前にあるモノを小さく分解していくと、原子やそれよりも小さな電子、中性子、陽子といった小さな単位にたどり着きますが、これらを「量子」と呼びます。量子は特殊な法則に従って存在しており、その特性が量子コンピューターに利用されています。

1.2.量子は波であり粒でもある

量子は波と粒の両方の性質を併せ持つのが特徴です。粒としての振る舞い、波としての振る舞いの両方の性質が同時に観測されます。この両方の性質を持つことを「重ね合わせ」と呼びます。この重ね合わせの状態であることが、量子コンピューターの仕組みにおいて重要な役割を果たしています。事項にてその仕組みを紹介します。

2.量子コンピューターの仕組み

量子コンピューターでは、情報を量子ビット(qubit)という最小単位を用いて表現します。量子ビットは前述した「重ね合わせ」の状態を持っていることが大きな特徴です。

従来型のコンピューターで使われるビットでは0と1しか表現できませんでしたが、量子ビットを計算に用いることで、これまでのコンピューターでは複数回の計算が必要だった処理を一度の計算で可能にできる場合があり、高速な計算処理を実現します。

また、従来型の論理回路に対し量子ゲートを用いて計算を行うことも特徴の一つです。量子ゲートを用いることにより量子ビットを制御します。

(※本項目での記載は、汎用型量子コンピューターについての記載です。他にも特化型、非古典コンピューターなどの別の量子力学の仕組みを用いる場合もあります。)


3.従来のコンピューターとの違いは?

従来のコンピューターでは、情報をビット(bit)の組み合わせで表現しています。前述の通り、ビットは2進数で0か1(onとoff)のいずれかの状態を示します。この組み合わせを利用することにより、10bitで2の10乗の数値を表現することができます。

このビットに対し論理回路を用いて制御することで、計算処理を実現しています。論理回路は2つのビットに対しAND、OR、NOTといった計算を行い、その組み合わせによって複雑な演算を行っているのです。

量子コンピューターと従来型コンピューターの大きな違いは、最小の単位である量子ビットとビットの間で表現できる状態の数に大きな違いがあるということです。量子ビットの方が多くの状態を表現できるため、上手に利用することで高速な計算を実現できるのです。

【関連記事】「国産スパコン「富岳」が世界1位に! 量子コンピュータはそれよりスゴい?」

4.量子コンピューターの種類

現在研究開発が行われている量子コンピューターには大きく2つの種類が存在しています。それぞれについて解説します。

4.1.量子ゲート型

量子ゲート型は汎用型とも呼ばれ、あらゆる計算処理に適用可能ですが、量子アルゴリズムが確立されている問題のみにおいて高速計算が可能です。これは、既存の論理回路による計算を、量子ゲート、量子論理回路を使ったアルゴリズムで作り変えなければ利用できないことが理由となっています。

商用化が進められている主流の方式は53量子ビットの方式ですが、エラー訂正や規模拡大に課題があり、実用化には10年以上の時間が必要とされるといわれています。

4.2.量子アニーリング型

量子アニーリング型は組み合わせ最適化問題にのみ利用可能な方式です。商用に向けて開発されているものは、主流は2048量子ビットとなっています。

量子アニーリング型は、「イジングモデル」と呼ばれるモデルに問題を設定し、その問題を量子コンピューターで解きます。「イジングモデル」は上向きまたは下向きのスピンから構成され、隣接するスピン間の相互作用および外部から与えられた磁場の力によって状態が変化するものです。最終的にはハミルトニアン(系全体のエネルギーのこと)が最小の状態になることでスピンは収束します。

量子アニーリング型は実用化に近い形式で、多くの取り組みが行われている状況です。

5.実用化の現状は?世界での開発状況

2019年10月、Googleを中心とした研究グループが発表した「Nature」(電子版)の論文によると、量子コンピューターが従来型のコンピューターを上回ることを示す「量子超越性」が実証されました。53量子ビットの量子プロセッサーSycamoreを搭載した量子コンピューターで、世界最速のスパコン(当時)が1万年かかる計算を3分20秒で実行したとされています。しかし、量子コンピューター研究を行っているIBMから反論があるなど、まだまだ検証は必要なようです。

【関連記事】「量子超越性の実証の真偽--量子コンピューターはスーパーコンピューターを超えたのか!?」

IBM は 2016年5月4日に世界で初めて「量子コンピューターをクラウドで公開」しました。2017年11月には50 量子ビットの試作機の製作と稼働に成功、12月には「20 量子ビットのお客様への提供」を始めています。

6.量子コンピューターのこれから

アメリカは2018年、今後5年間の国家量子イニシアティブプログラムに1,400億円の予算を投入することを決め、中国、EUも量子コンピューター関連に大規模な研究予算を組んでいます。日本でも2020年、量子技術イノベーション戦略の推進として年間215億円の予算案が示されています。

量子コンピューターでは、スパコンを含む従来型のコンピューターでは計算に時間がかかってしまう処理の時間を短縮することができます。それにより、下記のような分野での活用が期待されています。

●AIの機械学習

●創薬

●量子暗号

●組み合わせ最適化で工場の業務最適化

●交通経路の算出

●金融での試算へ利用

●ホテルリコメンドなどの順番最適化

量子コンピューターの市場は拡大の一途をたどっています。市場は2025年に50億ドル、2030年には500億ドル規模に達するという予想も存在しています。


7.まとめ

私たちの目の前のあらゆるモノを形成する小さな単位である量子。その量子の特性を活かして高速な計算を実現するのが量子コンピューターです。従来型のコンピューターでは時間がかかり過ぎて解けなかった課題を解決することが期待されています。

世界中で注目されているこの技術に対し、日本でもその研究に大きな予算が設定されるなど、その期待は高まるばかりです。私たちの生活に近いところでも利用されるようになる日も、そう遠い未来の話ではないかもしれません。

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