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量子超越性の実証の真偽--量子コンピューターはスーパーコンピューターを超えたのか!?
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量子超越性の実証の真偽--量子コンピューターはスーパーコンピューターを超えたのか!?

約1年前の2019年10月23日、Googleが量子超越性の達成に関する論文を発表しました。この論文は量子コンピューターの計算能力における優位性を示す内容でした。実際に、量子コンピューターはスーパーコンピューターを超えたのでしょうか。(Misa)

量子超越性とは

「量子超越性」はカリフォルニア工科大学のジョン・プレスキル教授によって定義された概念で、量子コンピューターの計算能力が従来のスーパーコンピューターよりも優れていることを証明するというものです。

当初は量子超越性の証明には、量子コンピューターが、古典的コンピューターではまったくできないことを解決する必要があるとされていました。証明に用いられる問題の有用性や実用的な意味は求めず、純粋に計算能力だけが比較されます。

量子コンピューターは、量子力学の原理を用いて超高速な計算を実現します。従来のコンピューターとの違いは、AとBの2つの条件を組みあわせて計算する際に、従来のコンピューターはAの条件を最初に計算し、それぞれにおけるBの条件を順番に計算して最適解を導き出します。

量子コンピューターは、A・Bの両方の条件を同時に計算し、検証することができます。この並列計算の実現によって計算能力は飛躍的に向上します。


量子超越性の実証の真偽 量子コンピューターはスーパーコンピューターを超えたのか

量子超越性の実証

Googleが行った実証は、乱数を生成する「ランダム量子回路サンプリング」という問題で、最先端のスーパーコンピューターで計算した場合に要する時間は、約1万年と見積もられます。この問題を、Googleの量子コンピューターは3分20秒で計算しました。性能差は約16億倍 ということになります。

これにより、Googleは量子コンピューターがスーパーコンピューターを凌駕したと結論づけています。これに対してIBMの量子コンピューターの開発チームは、Googleの実証ではスーパーコンピューターの能力が最大限に活用されておらず、使い方の工夫によって、スーパーコンピューターでも2.5日で計算できると指摘しました。

同様に、IBMによる反論の合理性を認め、Googleの主張に対して懐疑的な見解を示している研究者もいます。この論争は量子コンピューターの未来に影響するものではなく、IBMの反論には、量子超越性への無益な期待をなくそうとする動機があったといわれています。

量子コンピューターがもたらす影響

量子超越性の議論は話題となりましたが、古典コンピューターとの優位性にこだわりすぎるのは無意味であるとも考えられます。量子コンピューターと古典コンピューターが並び立てない絶対的な理由はいまのところ存在しません。実際には量子コンピューターの実用化への課題が数多く残されており、現在の量子デバイスにできることから活用しようという動きもあります。

量子コンピューターによって、指数関数的に高速化されるのは60個程度といわれていますが、そのうちの2つが機械学習と量子化学計算であり、これらは製薬や農業、人工知能や新材料開発への応用が期待されています。

量子コンピューターの課題は、量子ビットを大規模に集積化する技術と熱問題といわれています。これらを解決するためには、ハードウェアや素材、エネルギーなど多方面における技術革新が必要とされています。それらの条件すべてを満たすには、数十年単位の時間がかかると考える専門家もいるそうです。

量子コンピューター開発の需要がそれらの新技術の開発を牽引し、ほかの分野のイノベーションへと波及させていく可能性があるかもしれません。

原稿:Misa

ITベンチャーで企画、人材開発、広報などを経て独立。現在はコンサルタント、ときどきライター。ライターとしては、IT系以外、アニメ・マンガ、車から美容・健康まで何でもチャレンジ中。

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