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【日本の転職事情】転職理由は若い世代は「労働条件」、中年層は「人間関係」--転職後の満足度はきわめて高い実態が明らかに
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【日本の転職事情】転職理由は若い世代は「労働条件」、中年層は「人間関係」--転職後の満足度はきわめて高い実態が明らかに

情報通信業は48.7%の企業に転職者、電気・ガス・熱供給・水道業では25.2%

IT業界では、転職というのはごく身近なものになっている。どんな小さな会社でもキャリア採用の社員がいる。特にエンジニアは「3年で転職することを前提に働け」とも言われる。もちろん、会社を次々と変えることがいいわけではなく、3年をひとつのタームとして考え、会社と自分の成長の目標を立て、その目標通りに推移しているかを考え、3年後に「他社に転職」「社内で別部署へ」「現部署に留まる」の三択を考える。結果として、同じ会社の同じ部署で働き続けることになっても、新たな目標設定をすることになり、新たなモチベーションで働けるようになる。

しかし、世の中全般では、転職はまだまだ少なく、労働力の流動性は低いままのようだ。厚生労働省では平成27年に「雇用の構造に関する実態調査(転職者実態調査)」を行っている。この結果によると、「転職者がいる職場の割合」は、平均で35.7%しかない。6割以上の会社に転職者がいないのだ。

それでも業界別には、情報通信業は48.7%の企業に転職者がいる。転職者が最も多い業界になっている。一方で、電気・ガス・熱供給・水道業では25.2%と低く、3/4の会社は転職者がいない。この辺りは、さらなる調査をする必要があるが、おそらくは正社員は固定であり、非正規雇用社員が頻繁に入れ替わるという構図になっているのではないかと想像される。


(業界別転職者のいる企業の割合。情報通信業は最も転職が盛んな業界になっている)

しかも、企業側が転職者を採用する理由でトップにくるのは「人員構成の歪みの是正」だ。つまり、年齢構成などの要員計画の観点から「欠員補充」をする感覚なのだ。その点、情報通信業では「既存事業の拡大・強化」「組織の活性化」という合理的な理由が圧倒的に高くなる。


(企業が転職者を採用する理由。人員構成の是正など「欠員募集」的な発想がまだ多いのが現状。情報通信業では、事業強化、拡大の感覚での転職者採用が多くなっている)

賃金や評価への不満より、労働条件を不満に感じてやめている人が多い

離職理由についても調査が行われている。離職理由で最も多かったのは「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」というもので、以下「満足のいく仕事内容でなかったから」「賃金が低かったから」「会社の将来に不安を感じたから」と続く。意外なのは、賃金や評価に不満があることよりも、労働条件を不満に感じてやめている人が多いということだ。その労働条件とは何かまでは調査されていないが、長時間労働(残業、休日出勤など)ではないかと想像できる。また、通勤がたいへんという理由も増えている。特に会社が移転をした場合、通勤時間が大幅に長くなるケースがあり、通勤で疲弊をしてしまうことから転職を考える人は少なくない。最近では、当然ながら、在宅勤務の日が少ないという理由で転職を考えている人も増えていることだろう。


(転職をした理由。賃金よりも労働条件に不満を感じて転職をする人が多い)

伝統的な終身雇用的な社会では、離職をする理由といえば「賃金」「人間関係」に相場が決まっていた。しかし、現在では、そのような会社だけの要因ではなく、自分の好きな場所に住んで、豊な人生を送りたいという観点から、より働きやすい会社を求める人が増えている。

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「人間関係」での離職、10代後半・20代前半と40代後半と50代前半にピーク

それぞれの離職理由は年齢によっても異なっている。年齢別に上位の離職理由を整理してみると、「仕事内容」「労働条件」「賃金」「会社の将来」の4つはどの世代にも登場するが、興味深いのは「人間関係」だ。10代後半、20代前半にピークがあり、もうひとつ40代後半と50代前半にもピークがあるパターンになっている。


(世代別離職理由の上位3つ。中年以降になると「人間関係」が上位に浮上してくる)

若い時は上司との人間関係に悩み、中年になると部下との人間関係に悩むことになる。また、中年では、自分より若い後輩が上司になることも珍しくなく、安定した人間関係を構築することが簡単ではない時代になっている。


(「人間関係」を離職理由にした人の世代別の割合。若い世代と中年世代の2つピークがある興味深いパターンになっている)

「チャンスがあれば転職したい」と考えている人の方が多い

このような離職理由は、「積極的不満」「相対的不満」「不可抗力」の3つに分けることができそうだ。不可抗力は病気、怪我、介護、看護、転居、結婚、出産などの人生イベントによるもの。積極的不満は「人間関係」「正当に評価されない」など「この会社にはもういたくない」というやめ方。相対的不満とは「労働条件や仕事内容、賃金、将来性がもっといい会社があるのではないか」というもので、「もっといい会社があるのなら、そちらに転職したい」というもの。

離職理由を多い順に並べてみると、おおむね相対的不満→積極的不満→不可抗力の順に並んでいる。

つまり、「今すぐ転職したい」という人よりも「チャンスがあれば転職したい」と考えている人の方が相当に多いのではないかと推測できる。隠れ転職予備軍はかなりの人数いるのではないかと思われる。

これは意外なデータだが、転職者の61.6%の人が転職をするにあたって「特に準備をしなかった」と答えている。いきなり求人サイトやハローワークで会社探しをしてしまうのだ。

転職準備活動とは資格取得や職業訓練だけでなく、業界や企業に関する情報収集も含むもので、このような準備活動をまったくしないというのは転職で失敗をするリスクを高めてしまうだけだ。最悪のパターンでは「今よりももっといい職場があるのではないか」という漠然とした理由で、何の準備活動もせずに転職をしてしまうケースだ。そこが「今よりもっと劣悪な職場」ではないという保証はどこにもない。

しっかりと転職準備活動をする人と、そうでない人に二極化

どのような転職準備をして、どのような転職活動を行なっているのか。この調査では、職業別のデータまでは調べられていない。その代わり、最終学歴別のデータが掲載されているので、全体平均と大学卒のデータを比較してみる。

転職準備活動として、大学卒が平均を大きく上回っているのは、「事前の情報収集活動」と「キャリアコンサルティング」の2つだ。また、転職活動そのもので平均を上回っているのは「企業のホームページ」と「民間の職業紹介機関」の2つになる。


(転職活動をどのように行ったか。全体平均と大卒者の比較。大卒者は民間の職業紹介エージェントを積極的に利用する傾向がある)


(転職のためにどのような準備活動をしたか。全体平均と大卒者の比較。大卒者はキャリアコンサルティングを積極的に利用する傾向がある)

一生の間に、そう何回も転職をするわけにもいかない。そう考えて、しっかりと準備活動をして確実に転職をしたいと考える人たちと、割と気楽に準備活動なしに転職をしてしまう人たちに二極化しているということが言えそうだ。

仕事内容が理由で転職を考える場合は、うまくいくケースが多い

転職後の満足度についても調査されている。「満足」と答えた割合から「不満足」と答えた割合を引いたDI(Diffusion Index)は43.0という高いものだった。これは「満足と答えた人が、不満足と答えた人よりも43.0%ポイント多い」ということだ。DIは+であれば満足と答えた人が多く、-であれば不満足と答えた人が多いことになる。

項目ごとに満足度を調べると、仕事内容に関してはDIが61.2と非常に高いものになり、多くの人が転職に成功していることがわかる。しかし、労働時間、賃金については+ではあるものの高い値になっているとは言えない。

ここで最初の離職理由と満足度の表を比べてみていただきたい。離職理由で高い「仕事内容」は、転職後の満足度も高く、多くの転職者が成功をしている。一方で、離職理由で高い割合であるのに、転職後の満足度がさほど高くないのは「賃金」と「労働時間」の2つだ。


(転職した後の満足度。多くの人がおおむね満足をしているが、労働時間と賃金に関しては満足度が低めになっている)

仕事内容が理由で転職を考える場合は、わりとうまくいくケースが多いと考えていいようだ。しかし、賃金と労働時間に対する不満で転職を考える場合は、なかなか簡単ではない状況があると考えた方がいいようだ。いずれの場合でも、転職準備活動をきちんと行うことが成功の鍵になる。

転職をするつもりがなくても、転職準備活動を日頃から行なっておく

個人的にお勧めしたいのは、転職をするつもりがなくても、転職準備活動を日頃から行なっておくことだ。結局転職をしなくても、現在の会社の中での自分の価値を知ることができるようになり、その価値を高めていくことができる。求人サイトを見て、気になる企業の説明会に出席するだけでも、視野を広げることができる。

転職者の61.6%もの人が転職準備活動をせずに転職をして、なおかつ高い満足度を感じている。日本は転職という点では恵まれた環境にあるのかもしれない。

原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)

テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

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