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中国のイマドキ小学生、書き取りの宿題はロボットにお任せ!?保護者の間で議論になる宿題のあり方と、進むAI教育
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中国のイマドキ小学生、書き取りの宿題はロボットにお任せ!?
保護者の間で議論になる宿題のあり方と、進むAI教育

2019.10.11

 
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娘の部屋を掃除していると…
「どんな筆跡も真似て描くロボット」が!!

中国では、1月1日よりも2月の初め前後の旧暦の正月=春節を盛大に祝う。この時期は学校も1週間から2週間程度休みとなるが、けっこうな量の宿題が出されるのが一般的だ。

黒竜江省ハルピン市の張さん(女性)には、小学校3年生の娘がいる。春節の休みの間、学校の宿題をやっている様子はなかったのに、いつの間にか終えていることに気がついた。教科書の本文をノートに書き取るというかなり手間のかかる宿題であるのに、娘のノートを確かめてみると、きちんと終えている。しかも、ものすごく丁寧できれいな字で書いてある。誤字脱字も見当たらない。張さんは、娘はなんて一生懸命宿題をしたのだと感激をした。

翌日、張さんが娘の部屋を掃除していると、見慣れない箱を見つけた。そこには「書き取り神器」と書いてあり、説明には「どんな筆跡も真似て描くロボットです」と書いてある。

娘を問い詰めると、春節の時に親戚からもらったお年玉で、ネットのECサイトから800元で買ったのだという。しかも、休み明けの提出日に間に合わないかもしれないと、30元を追加で支払って、お急ぎ便の指定までしていた。

指かタッチペンで自分の字を書くと、
字の特徴を覚えてくれる

張さんは、娘の話をなかなか信じられなかった。ノートに書かれている字は、きれいで丁寧だとは言え、確かに娘の字であり、ロボットに書けるようなものではないと思えたからだ。すると、娘は張さんの前で、ロボットを使った実演を始めた。

最初にやることは、書き取りロボットの取扱説明書についているQRコードを読み取って、専用のアンドロイドアプリをダウンロードすることだ。このアプリを起動すると、いくつかの字を書くように指示される。そこに、指かタッチペンで自分の字を書くと、字の特徴を覚えてくれる。指定された文字をペンや鉛筆で書いて、スマホのカメラで読み取ってもいいのだと娘は説明した。

次に付属のWindowsPC用ソフトウェアをインストールして、ワード書類を読み込ます。すると、プロッターのようなロボットがノートなどに自分の筆跡で、テキストの内容を1分間に30文字から40文字の速度で書いていってくれる。

文字の大きさ、間隔などの調整にやや手間がかかるが、それができてしまえば、あとは放っておくだけ。娘は教科書の本文テキストをネットから拾ってきて、それを自分の文字でノートに書かせていった。

ノートの見開き分書いてしまうと、手でノートをめくってやらなければならないが、娘はおやつを食べながら、スマホゲームを楽しみ、ときどきノートをめくってやりながら宿題を終えてしまった。

仕上がりは「丁寧に書いた手書き文字」
にしか見えない

このような書き取りロボットは、中国のECサイト「タオバオ」などで多数販売されている。価格は6000円ぐらいから2万円までさまざまだ。

この書き取りロボットには、手書き風フォントが搭載されていて、いくつかの字を読み取ることで、書き癖を認識し、それに合わせてフォントを変形させる。プロッター部分には、普通の鉛筆やペン、調整が難しいが毛筆を装着させることも可能で、仕上がりは「丁寧に書いた手書き文字」にしか見えない。



(タオバオ、TmallなどのECサイトで販売されいている書き取りロボット。さまざまなメーカーが製造している。タオバオの販売ページより引用)

本来は、業務で宛名書きや手書きの手紙を送りたい場合に使うものだが、問い合わせが多いのは小中学生からだという。問い合わせ内容は「先生にばれませんか?」というものだ。

確かに、一見手書き文字風であり、ロボットが書いたようには見えない。しかし、同じ文字は同じ筆跡で書かれることになる。少し注意深く見れば、ロボットで書いたことがわかってしまう。誠実な業者は、問い合わせのあった小中学生にそう説明するのだという。

販売を規制すべき?
書き取りさせるという
宿題のあり方が問題?

当然ながら保護者や教育関係者の間で、この書き取りロボットは問題になった。最も多い意見は、このようなズルをさせる機器は、子どもの教育によくないので、販売を規制すべきだというものだ。

ところが、別の観点で議論をする保護者も多かった。それは、この時代に、手で大量の文字を書き取りさせるという宿題のあり方がどうなのかという議論だ。確かに小学校低学年では、文字を書かせることは大切かもしれない。しかし、大量に書かせることに意味はあるのだろうか。それよりは、キーボードの使い方やITリテラシーを身につけさせるべきではないか。子どもの貴重な時間を奪って、精神論的な作業をさせるよりは、もっと思考させたり、体験させたり、表現させる宿題を出すべきなのではないかという議論だ。そのような保護者の中には、このような書き取りロボットを操作できる子どもの能力をもっと評価してあげるべきではないかという人までいる。



(中央電視台のニュースでも、この書き取りロボットの問題は報道された。ネットでは保護者たちが、次世代に必要な教育と宿題のあり方に対する議論が起きている)

中国の小学校では人工知能の授業を
必修化させる試みが開始

日本ではプログラミング教育が必修化されようとしているが、中国の小学校では人工知能の授業を必修化させる試みが始まっている。北京市では、6つの小学校がモデル校に指定され、そのひとつである北京第一師範学校付属小学校では、小学4年生から人工知能の授業を取り入れている。

と言っても、難しいことをしているわけではない。低精度の研究用顔認証ソフトウェアを用意し、どうやったら顔認証をごまかせるかをゲームとして楽しむなどの授業を展開している。子どもたちは変顔をしたり、つけ髭やサングラスで変装をしたりして、人工知能が顔のどこを見て認識をしているのかを体感する。

また、身の回りのAIを使ったお掃除ロボット、ドローン、玩具ロボットなどを調べて、人工知能がどのような判断をしているのかを調べるなどの研究学習も行われている。

このような次世代の教育は、現役教師にすぐ対応ができるものではない。そのため、北京市は現役教師を中心に、人工知能授業ができる教師の人材育成も行なっている。数十名の校長クラスの人材、100名程度のリーダー教師、1000名程度の実践教師を2022年までに育成する計画で、現在は5期目に入り、144名が研修を受けている。研修期間は3年から5年(仕事を持ちながら受講できる)で、修了後は全国の小学校に派遣をされて、人工知能教育のリーダーとして活躍をする予定だ。

このような計画が進んでいる小学校の保護者から見ると、大量の書き取り宿題を出す教師というのは、いかにも時代錯誤に映る。読み書きソロバンは、読み入力スマホに変わろうとしている。

原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)

テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

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