ITエンジニアのための勉強会・イベントレポート情報メディア

AI開発の面白さと課題とは!?(2)AI開発の第一人者・ストックマークの有馬CTOに聞いた!
skill

AI開発の面白さと課題とは!?(2)
AI開発の第一人者・ストックマークの有馬CTOに聞いた!

2019.09.06

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「空気が読める」人間と
「空気が読めない」AI

私たちストックマークは、読解力AIを開発し、世界中の3万ものメディアの記事の中から、関心のある記事をピックアップして届けてくれるAnews、世界中のニュース、経営レポートから特定の業界、技術などの動向を届けてくれるAstrategy、商談メモから客先のニーズを可視化するAsalesなどのサービスを提供しています。このようなサービスの中心になっているのが、読解力AIです。テキストの内容を理解し、分類してくれるAIです。

この読解力という点では、AIは人間を超えつつあります。特に、論理的に論旨を読み取る力というのは、人間よりもすでに優っているのではないかと感じています。AIとは疲れ知らずなので、膨大な量の学習ができるからです。

例えば、Anewsで使われている読解力AIは、すでに5000万件以上の記事を学習済みです。一方、人間が毎日100件の記事を読んだとしても、年間3万6500件。人間の一生が80年だとしても、300万件足らずの記事しか読めません。この圧倒的な読書量の差があるために、読解力AIは精度の高い判断ができるのです。

それでも、AIが人間に勝てないところもまだまだあります。例えば通有性ではAIは人間に勝てません。通有性というのは、簡単に言うと「空気が読める」ことです。AIに人を共感させる表現はできません。



例えば、一発ギャグのようなものはAIは作り出せません。プロの芸人さんの一発芸というのは、論理的に考えたらなにひとつ面白くないんだけど、見ると笑ってしまう。声色とか表情とかポーズとか、そういうものが合わさってなんとも面白いわけです。これをAIは理解することができません。芸術やアートなど、人に共感してもらう表現というのは、今のAIにはまだまだできません。

五感を使って意味を読み取る力も
AIの課題

また、マルチモーダル学習も大きな課題です。これは五感を使って意味を読み取る力のことです。雑誌では文章と写真が一緒になって記事が構成されているのが普通で、人間は文章と写真の両方を同時に読み取って、その記事の論旨を理解します。しかし、今のAIは文章だけ、あるいは音声だけ、あるいは画像だけなのです。複数のメディアを統合して判断するマルチモーダル学習の研究も進んでいますが、まだまだ精度が出ていないのが現状です。人間に追いつくにはまだ時間がかかります。

つまり、AIと人間のどちらが賢いかということは言うことができず、それぞれに得意なところ、苦手なところがあるのです。



「AIに気づかされる」現象が
たくさん起きていく

AIの得意な分野では、すでに人間の方がAIに学ぶということが起きています。囲碁や将棋といった分野では、プロ棋士がAIと対戦して、新たな手筋を発見するということが起きているといいます。

私たちの読解力AIでも似たようなことが起きています。AIはブラックボックスであり、どのようなロジックで判断をしているのか、よくわからないところがあります。しかし、それでは、自動運転など生命の危険に関係のある分野にAIを使う上で不安があるので、AIがどのようなロジックで判断をしているのか可視化をするXAI(eXplainable AI=説明可能なAI)の技術開発が進んでいます。人間にいろいろな画像を見せて、大脳のどこが反応をしたかを可視化したヒートマップ画像がありますが、あれと似たことをAIでもやろうとしています。私たちストックマークでも、社内ツールとして、さまざまなXAIツールを開発しています。このような可視化の結果を見て、AIモデルを修正したり、パラメータを変えてチューニングをしたりしています。

このようなツールを使うと、読解力AIがテキストのどこを見て、論旨を理解しているのかがわかってきます。A newsでは、ファクト記事(事実)とオピニオン記事(意見)の分類を行なっています。ビジネス系の人はファクト記事が必要で、シンクタンクのアナリストなどはオピニオン記事を必要としているので、顧客の要望に合わせて配信する記事を変えているのです。表示はしていませんが、内部的にはファクト率のようなパラメータを持っています。



AIがどこを見て、ファクトかオピニオンかを判別しているかを、XAIツールを使って可視化してみたら、面白いことがわかりました。人間だと、「タイトルの最後に?がついていたらオピニオン」などの曖昧な判断しかしていません。それがAIは、「タイトルに数値がたくさん入っているとファクト記事」と実に単純なところを見ていました。確かに「○○が40%上昇」というタイトルで、オピニオン記事ということはあまりない。AIに教えられてみればその通りなのですが、今まで私はそういう観点で記事のタイトルをあまり見たことがないのではないでしょうか。意外なところをAIに指摘されて、実に興味深い発見でした。

囲碁、将棋だけでなく、今後はビジネスの世界でも、このように「AIに気づかされる」現象がたくさん起きていくことになります。

AIは、SF小説に出てくる
神様のような存在になるまで
進化していく!?

AIはどこまで進化をしていくのでしょうか。SF小説に出てくる神様のような存在になるところまで進化をしていくのでしょうか。その可能性はじゅうぶんにあると思います。

現在のAIは、テキストを読解する、画像を解析する、音声を解析するという、ひとつの要素を理解することにかけてはかなり洗練されてきました。大きな壁は、このような要素を組み合わせて理解するマルチモーダル学習です。テキストと画像を合わせて理解することができるようになると、AIの進化は一気に加速します。その先には「空気を読む」通有性の問題もクリアできるかもしれません。



AIの進化、
10個起きるブレイクスルーのうち
最初の1つ目が起きた段階

AIがどこまで進化するかと見るかにもよりますが、私個人の感覚では、10個起きるブレイクスルーのうち、まだ最初の1つ目が起きた段階にいると思います。私たちの読解力AIも3億次元の学習をしています。わずか数年前、そんなものを開発しようと口にしたら、AIの専門家ですら「できるわけがない」と答えていました。でも、今は実際に開発できて、運用して、サービスとしてビジネスにまでなっています。



私たち人類が生み出した科学というのは、私たちが考えている以上に可能性を秘めたものだったのです。人間に愚かな部分があるとすれば、自分たちが生み出した近代科学の枠組みというもの可能性を、今までじゅうぶんに理解できていなかったことです。AIの世界には、広大なフロンティアが広がっています。AIの進化はまだ始まったばかりです。

ストックマーク株式会社取締役CTO 有馬幸介
大学・大学院時代(2010年3月修了)に機械学習(AI)を用いたテキストデータ解析及び分散環境における行列演算アルゴリズム(ビッグデータ処理)を研究。大学院修了後、大規模な業務システムの開発を得意とする新日鉄住金ソリューションズ(当時、現日鉄ソリューションズ)に入社。2000人月規模の会計業務システム開発案件等にてチームリーダーを担当し、社長賞に選出される。2016年11月にストックマーク社を共同創業、取締役CTOとして従事。

-----------------------------------------------------------------------------

※マイナビエージェント「スタートアップ特集」の有馬氏インタビューはこちら

-----------------------------------------------------------------------------

AI開発の面白さと課題とは!?(2)AI開発の第一人者・ストックマークの有馬CTOに聞いた!

この記事はどうでしたか?

おすすめの記事

キャリアを考える

BACK TO TOP ∧

FOLLOW