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AIとRPAの導入、”創造的”な仕事なら奪われないというけれど…人間はそんなに”高度”な存在か!?
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AIとRPAの導入、”創造的”な仕事なら奪われないというけれど…
人間はそんなに”高度”な存在か!?

2019.07.17

 
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RPA導入、メディアでは
「そんなことはない。誤解」
という趣旨の記事が大半

身近なところでもRPAが使われるようになっている。RPAとはRobotic Process Automationのことで、パソコン上で動くロボットのようなものだ。

よく使われるのは、来客者に入館用のQRコードを送付する作業。まだ多くの企業で、来館者管理システムに来館者の日時と氏名、連絡先などを登録して、出力されたQRコードをコピーして、来館者のメールに添付し送信するということを手作業でしている。これがRPAを使うと、会社で使っているスケジュールシステムに【来館】などというタグを入れて登録するだけでよくなる。ロボットがこのタグを見つけて、自動的に来館者管理システムに登録して、各来館者にQRコードを送信してくれる。普段使っているスケジュールシステムに登録をするだけで、その後の作業を自動化してくれる。

この他、交通費の精算、給与などの支払いなど数多くの場面でRPAが活用され始めている。

RPAが企業に導入されるに従い、「仕事が奪われる」と感じている人も多いのではないだろうか。ところが、メディアでは「そんなことはない。誤解」という趣旨の記事が大半だ。RPAでなくなるのは非生産的、単純作業的な業務。人は、より人間的な高度な業務に集中できるようになるのだという。ごく限られた職業、例えば入力キーパンチャー、各種機器のオペレーターなどを除いて、職業そのものがなくなるのではなく、効率化されていくだけだという。

「5人でやっていた仕事が
3人でこなせるようになったら…」

しかし、誰もが普通に思うのが、「5人でやっていた仕事が3人でこなせるようになったら…」ということだ。当然2人はリストラされて、3人で仕事をこなさなければならなくなる。実際にこのようなリストラは起き始めている。

みずほフィナンシャルグループは1万9000人規模の人員削減を進めていて、その他のメガバンクも数千人規模の業務削減を進めている。この「業務削減」には「ITなどを活用して」ということなので、AIやRPAを大いに活用するのだろう。業務を削減したら、余剰人員を配置転換、削減などのリストラを行うことになる。

富士通では2000年以降、大規模な人員削減を進めているが、さらに経理、総務、事務などの間接部門を中心に数千人規模の人員削減を進めるという。間接部門と名指ししているところがポイントで、RPAで代替できる業務の多い部門だ。

さらに、業績が好調な損保ジャパンが4000人規模の人員を、買収した介護事業に配置転換をすると公表して話題になっている。将来に備えてのリストラだが、ここでも報道によると「ITの活用で生産性を高め」となっている。

本当に人間ってそんなに優秀なのだろうか

RPAが実際の業務で利用できる水準になった今、RPAだけではないにしても、IT技術を活用して、リストラを進める企業が現れ始めている。つまり、テクノロジーで職業はなくならなくても、職はなくなっていっているのだ。

AIやRPAを活用すると単純作業が減り、人間は創造力が必要だったり、判断をしなければならなかったりする業務に集中することができるともよく言われ、確かにかっこいい言葉なのだが、本当に人間ってそんなに優秀なのだろうかという素朴な疑問も浮かぶ。

判断をするということは、その判断により生じる結果に責任を負うということだ。1日10人の患者の診断をしている医師が、AIやRPAを活用することで、半分の時間で10人の診断ができるようになったとする。これで報酬が据え置きで、勤務時間が半分になるのだったら、人は幸福に生きることができるようになる。しかし、資本主義の原理上、そうはならない。この医師は20人の診断をしなければならなくなり、自分の判断により生じる結果に対する責任も20人分に増える。人の心はそれに耐えていくことができるだろうか。



ストレスの小さい単純作業を挟みながら
人は仕事のリズムを作っている

「単純作業が多くて嫌になる」と言いつつ、ストレスの小さい単純作業を挟みながら、人は仕事のリズムを作っている。仕事ができる人というのは、このリズムの作り方が上手い人だ。

「テクノロジーが仕事を奪う」話題のそもそもは、2013年にオクスフォード大学のオズボーン准教授らが発表した論文だ。これによると、米国の労働者の47%が、今後10年から20年で、AIなどのテクノロジーに仕事を代替されるリスクがあるというものだ。後に、オズボーン准教授と野村総合研究所の共同研究で、日本の場合はテクノロジーに仕事を代替されるリスクがある職業の従事者は、全労働者の49%にものぼるということが公表された。

日本人の半数がリストラに直面する

これをもって、「日本人の半数が失業する」と言うのは間違いだが、日本人の半数がリストラに直面するということは間違いではない。会社に残ることができたとしても、同僚が辞めていくリストラは精神的にかなりこたえる。リストラはする方もされる方も、精神に与えるダメージが甚大だ。

残念なことだが、今の日本は本当に厳しい状況に直面している。それを「テクノロジーが仕事を奪うなんてデマ」だとか「ウチの会社は和気あいあいとしているので大丈夫」などという甘いことを言っていると、取り返しのつかないことにもなりかねない。

自衛策は「テクノロジーにより
代替されるリスクが低い職業」への転職

では、自衛する策はあるのだろうか。ひとつある。それは「テクノロジーにより代替されるリスクが低い職業」への転職を考えることだ。個人の適性や興味によって、具体的にどの職業をターゲットにするのかは異なるが、資格が必要なものは資格試験の勉強をしてみたり、あるいは専門学校の短期講座に顔を出してみたりするのもいいと思う。



転職を考えると言っても、実際に転職するかどうかは、後で状況を見て考えればいい。まず、職業スキルを身につけておくことが重要なのだ。副業を持つことも奨励される現在、副収入を得ることもできるようになるかもしれない。



異なる職業のスキルを学んでおけば、そのスキルを今の職業に活かせる可能性も出てくる。そういう特異なスキルをもっていることが、チームの中でも必要とされる人材になり、リストラの難を逃れることにも繋がっていく。

何より、複数の職業の視点を持つことで、現在の職業を俯瞰できるようになることが大きい。「リストラされても生きていけるさ」という気持ちの余裕を持つことで、よりシビアな判断もできるようになり、それが今の仕事の幅を広げていくことにもなる。

人に与えられた時間は1日24時間でしかなく、あれもこれも学ぶことはできないが、もうひとつの職業について学び、リスクヘッジをし、「職業のポートフォリオ」を作っておくことで、この厳しい時代も楽しく生きていける。

まずは、いろいろな職業の自習サイトなどを、暇な時間にのぞいてみることから始めてみていただきたい。

原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)

テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

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