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観光立国の大問題! 訪日外国人客は「Apple Pay」、「Google Pay」を使えない!?
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観光立国の大問題! 訪日外国人客は「Apple Pay」、「Google Pay」を使えない!?

2019.06.28

 
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日本はもはや国際的には観光の国、
問題は日本でのキャッシュレス決済

日本はもはや国際的には観光の国だ。日本政府観光局の統計によると、昨年の訪日外国人客は3,119万1,856人。今年2019年は、4月までの統計ですでに1,000万人を超えている。しかも、ここ数年の推移を見ても、韓国と香港を除いた各国からの訪日客が増えている。来年は、東京オリンピック・パラリンピックが開催されるため、訪日外国人客の数がさらに上積みされることは確実だ。産業としても、インバウンド関連が大きな存在感を持つようになっている。

ところが問題は、日本でのキャッシュレス決済だ。クレジットカードがいちばんわかりやすくて利便性が高いが、ひとつ大きな問題がある。店舗側に渡ったカード情報が流出して不正利用されてしまう問題だ。日本クレジット協会の調査によると、ここ5年で日本での番号盗用被害額が急増している。これは主に、フィッシングサイトなどで盗用されたカード情報だが、サイバー攻撃により店舗が保持している顧客のカード情報が盗まれる事件も起きている。



(番号盗用によるクレジットカードの不正利用は、日本でも急速に増えている。フィッシングサイトによる盗難が主体だが、店舗の保持するカード情報がサイバー攻撃などにより盗用される被害もある。日本クレジット協会調査の統計より作成)

そこでカード業界は、トークン決済を推進している。これはカード番号ではなく、トークン番号のみ店舗に伝えることで決済できる仕組みで、カード情報が店舗側に渡らないので、流出事故が起きても不正利用される恐れがないというものだ。

しかし、まだトークン決済に対応している店舗は多くない。特に、磁気ストライプを刷るタイプのカードリーダーでは、カード情報が店舗に渡る。欧州ではすでにこの決済方法をやめて、ICチップ方式(カードをリーダーに挿してPINコードを入力する)になっているので、欧州からの旅行客にとって、「カードを刷る」方式はとても不安に感じるという。

外国人が使いたがるのがApple Pay/
Google Payなどのスマホ決済、だが…

そこで、セキュリティ意識の高い外国人が使いたがるのがApple Pay、Google Payなどのスマホ決済だ。これにクレジットカードを登録しておくと、自動的にトークン決済となり、店舗側にカード番号は渡らない。しかも、NFCによってスマホをタッチするだけで決済が完了する。サインに当たるものはスマホの指紋認証、顔認証で行われるので、タッチするだけでいいのだ。日本でも、ほとんどのコンビニがApple Pay、Google Payに対応しており、入り口付近にはこの2つのロゴシールが貼られている。

このロゴを見てしまうと、訪日外国人客は「Apple Pay、Google Payが使えるんだな」と認識するのが自然だ。しかし、実は使えないのだ。さらに悪いことに、そのことを理解している店員、スタッフが少ないために、「理由はよくわからないが、決済がうまくいかない」状態となる。日本は幸か不幸かキャッシュレス決済が進んでいないため、多くの訪日外国人客が日本円の現金を持ち歩いている。そのため、現金で支払うことができるので、現在は大きな問題にはなっていない。



(あるコンビニの入り口付近にある決済方法一覧のステッカー。右上にApple Pay、Google Payのロゴがあるので、訪日外国人は当然利用できると思うはずだが、実際は決済できない)

しかし、2020に向けて、政府がキャッシュレス決済を強力に推進して「日本はキャッシュレス先進国」とアピールをした上で、実際は「Apple Pay、Google Payが使えない」、スタッフもその理由を理解していないという状態で、膨大な数の訪日外国人客がやってきたら、日本のあちこちで混乱が起きることも考えられる。緊急に解決しておかなければならない問題だ。

日本は非接触決済方式として、Felicaが普及をした。IC乗車券のSuicaなどが採用している方式だ。しかし、海外ではほとんど普及をしてなく、NFCが国際標準になっている。Apple Pay、Google PayはNFC方式が基本となっているため、日本のFelica端末では決済ができない。

そこで、日本向けだけにスマートフォンにFelicaチップを搭載し、日本ではApple Pay、Google Payが使えるようになっている。つまり、同じApple Pay、Google Payであっても、規格が日本と海外では異なっているのだ。別物と言ってもいい決済方式なのに、ロゴは同じものを使っている。そのため、訪日外国人客は混乱をしてしまう。同様に、日本人が海外に行ってApple Pay、Google Payのロゴを見かけても、決済することはできない。

解決するには、日本の店舗が
国際標準であるNFC決済に対応をする必要

これを解決するには、日本の店舗が国際標準であるNFC決済に対応をするしかない。現在、NFC決済に対応をしているのはローソン、マクドナルド、ツタヤ、イケヤ、その他国際空港など、ごく一部でしかない。マスターカード、VISA、JCB、アメックスの4社がNFC決済やタッチ決済、コンタクトレス決済と呼ばれる決済方法を始めている。対応しているカードであれば、プラスティックのカードをリーダーにかざすだけで決済ができるようになっている。

実は、これを使えば、訪日外国人客のApple Pay、Google Payでも決済できるようになる。しかし、難しいのはスタッフが理解をしていないことだ。「Apple Payで決済します」と告げてしまうと、まず間違いなく混乱することになる。そうではなく、最初から「クレジットカードのNFC決済で」と告げることがポイントだ。



(ローソンの入り口付近にある決済方法一覧のステッカー。右側に、NFCマークとともにVISA、マスター、JCB、アメックスのロゴがある。これは4ブランドのカードの非接触NFC決済に対応しているという意味だ。これであれば、訪日外国人もApple Pay、Google Payに入れているクレジットカードで決済をすることができる)

これで訪日外国人もApple Pay、Google Payで決済ができるし、日本人が海外に行った時もApple Pay、Google Payで決済ができるようになる。



(Apple Payのカード情報を見ると、1枚のカードにMasterCardの番号とQUICPayの番号の2つが登録されている。海外ではNFC決済でマスターカードを使い、国内ではFelicaで電子マネーQUICPayを使って決済できる。つまり、日本のApple Pay利用者は、国内の電子マネー対応店舗、国外のNFC決済対応店舗で決済ができる)

3つの課題

課題は3つある。

(1)国内にNFC決済対応店舗を増やしていく。
(2)店舗スタッフにApple Pay、Google Payの仕組みを周知させる。
(3)利用者にApple Pay、Google Payの仕組みを周知させる。

2020年の五輪の時期に、訪日外国人に、Apple Pay、Google Payでどこでも決済できる快適な国という印象を与えることができるだろうか、それとも「わけがわからない謎の国。現金じゃないと安心できない」という印象を与えてしまうことになるだろうか。やるべきことはあまりにも多い。

原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)

テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

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