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「どこまで発展する!? 中国のびっくりIT最新事情」第11回中国人が
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「どこまで発展する!? 中国のびっくりIT最新事情」第11回
中国人が"ごちゃごちゃ"なデザインが好きな理由とは!?

2019.03.05

 
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中華デザインの特徴は、
「派手な色使いで空間を埋めつくす」

中華デザインと言われると、多くの人がジャッキー・チェンの映画に出てくる香港の街並みを思い起こすのではないだろうか。狭い通りの空中を、せり出した原色の看板が埋めている。中華デザインの特徴は、「派手な色使いで空間を埋めつくす」というところにある。

これはデジタルデザインでも同じだ。最近はだいぶミニマルデザイン(必要最小限の要素に絞り込む)の考え方が入ってきて、すっきりし始めているが、それでも日本人の目から見ると、「ごちゃごちゃ」感が強い。どこになにがあるか見つけづらく、使いづらいという欠点はあるものの、もはやこの「ごちゃごちゃ」感が中華デザインの個性にもなっている。





(中国のサイト、アプリはごちゃごちゃしているものが多い。どこになにがあるかわかりづらいが、中国人にとって賑やかであることが大切なようだ。上は中国の携帯電話キャリア「中国移動」の公式サイト。下は、まとめ買いサービスの「拼多多」アプリ)

世界のデジタルデザインの潮流は、明らかにミニマルデザインの方向に向かっている。必要最小限の要素に絞り込み、使いやすさを優先しようという考え方だ。iOSアプリがその先端を進んでいて、余計な飾り要素はほとんどなくなっている。ところが、中国のアプリはいまだに余計な要素が盛り込まれている。中国人には、ごちゃごちゃ感は「賑やか」「楽しい」というポジティブな捉え方をされるので、どちらがいいとか悪いとかの問題ではないが、なぜ中国人が「ごちゃごちゃ」を好むのかについては、いろいろな仮説が考えられている。





(中華デザインの基本は「原色で空間を埋めつくす」というもの。上は故宮博物院の土産物屋。下は道教寺院。空間という空間が埋めつくされている。中国人はこれを「華やか」「賑やか」と感じるようだ)

漢字は文字というよりも
アイコンに近い!?

その中でも、多くの人が納得するのが「漢字」があるからだというものだ。漢字の多くは象形文字で、何かの図案が元になっている。例えば、馬という文字はじっと眺めていると、たてがみをなびかせて疾走する馬のイメージが見えてくるはずだ。漢字は、時代とともに簡略化されても、ぎりぎり元のイメージを失わない程度の簡略化にとどまっていて、文字というよりもアイコンに近い。

一方で、アルファベットも象形文字だ。Aという文字は牛の顔の形からきているという説がある。Aを逆さにすると確かに牛の顔に見える。Bは部屋の間取り、Cはラクダのコブなど、さまざまな原型の説があるようだ。それでも、アルファベットは抽象化が進み、元のイメージがもはやわからないところまで簡略化されている。

同じ象形文字であるのに、元のイメージを残す漢字と抽象化してしまうアルファベットという違いがある。

このため、漢字は1文字あたりの情報量が多い。アルファベットはもはや1文字ではなんの意味ももたなくなっているが、漢字は1文字1文字に意味がある。ドアに「押」「引」という1文字のサインが貼ってあれば、どうすればドアが開くかわかるし、「入」「出」と書いてあるだけでどっちから入ればいいのかがわかる。

しかも、漢字の基本形状は四角なので、段ボール箱に正立方体の箱を詰め込んでいくように、紙面にきちんと文字を詰め込んでいくことができる。この性質から、中国では文字がぎっしりと詰まったスタイルの書籍が発達した。紙面を効率的に使うことができ、同時に1文字の視認性が強いので、ぎっしり詰まっていても読むことができる。



(漢字は、現在の図案を失わない程度に抽象化した「アイコン」。図は57画もある最も複雑な漢字「ビャン」。陝西省名物のビャンビャン麺を記述するときにしか使われない不思議な文字だ)

しかし、文字数を多く使う英文ではこうはいかない。しかも、1文字の視認性が弱いので、文章の先頭は大文字にする、段落の最初は飾り文字にするなどのメリハリをつけていかないと読みづらい。漢字の書体は、大別すれば明朝体とゴシック体ぐらいしかないのに、英文には無数の書体があるのも、こういうことが関係しているのかもしれない。

中国人は中心にある対象物だけでなく、
背景までまんべんなく見る

ミシガン大学の研究で「Cultural variation in eye movements during scene perception」(情景認知における眼球運動の文化的多様性)という面白い研究がある。この研究は、林の中にいるトラの写真と山を背景に飛ぶ戦闘機の写真を中国人とアメリカ人に見せて、写真の対象物と背景を見る時間を測定したものだ。

すると、写真の中の対象(トラや戦闘機)を見ている時間は、アメリカ人と中国人でほぼ同じなのに、中国人は背景までよく見ていることがわかった。つまり、中国人は中心にある対象物だけでなく、周囲の背景までまんべんなく見る習慣があることがわかったのだ。

つまり、中国人にとって、中心に対象物があるだけでなく、その周囲まで情報が存在していないと寂しく感じる。空間が情報で埋めつくされていると、「華やか」「賑やか」と感じるようなのだ。

これが中華デザインの基本になっている。



(ミシガン大学の研究で、中国人は写真の背景までくまなく見ることがわかった。黒がアメリカ人、白が中国人。Cultural variation in eye movements during scene perceptionより引用)

中華デザインは、
日本でもそれに近い感覚に
なっているところも

このような中華デザインは、日本でもそれに近い感覚になっているところがある。よく比較される例では、ECサイトの「楽天市場」と「アマゾン」だ。アマゾンはわりとすっきりしたデザインになっていて、アマゾン利用者から見ると「楽天市場はごちゃごちゃしていて、どこになにがあるかわかりづらい」という。一方で、楽天市場利用者から見ると「アマゾンは物足りない、寂しい、冷たい感じ」に映る。面白いことに、男女別にECサイトの利用者を見ると、男性のトップはアマゾンであり、女性のトップは楽天市場なのだ。さらに、メルカリは女性比率が圧倒的に高い。メリカリはサイトやアプリのデザインは特にごちゃごちゃはしていないが、個人取引サービスであるために、大量の商品が「ごちゃごちゃ」している感がある。

女性雑誌を見ても、女性モデルの写真ページにも、洋服から靴、小物までの各ファッションアイテムの説明が小さな文字でぎっしりと書かれ、1ページあたりの情報量はものすごく多い。女性は、このような単位情報量の多いコンテンツをじっくりと時間をかけて楽しむ傾向があるようだ。

男性から見ると、楽天市場はごちゃごちゃしすぎて使いづらく感じるが、女性にとってはじっくりと買い物が楽しめる楽しい時間になっている。考えてみれば、中国の食器や小物といった伝統工芸を好むのは、女性が圧倒的に多いような気がする。

「ごちゃごちゃ」を好む中国、「すっきり」を好む欧米。そしてその中間にある日本で、「ごちゃごちゃ」が好きな女性、「すっきり」が好きな男性と分かれるのは興味深い。ミシガン大学の研究を、日本の男女に当てはめて行ってみると、面白い結果が出てくるかもしれない。

原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)

テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

※「どこまで発展する!? 中国のびっくりIT最新事情」バックナンバーは以下からご覧ください。

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