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「どこまで発展する!? 中国のびっくりIT最新事情」第10回名シェフの調理をロボットが再現。味でリピーターを生む無人レストラン
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「どこまで発展する!? 中国のびっくりIT最新事情」第10回
名シェフの調理をロボットが再現。味でリピーターを生む無人レストラン

2019.02.04

 
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天津に登場した無人レストラン
「京東X未来レストラン」

中国の天津市の浜海新区に無人レストランが登場した。ECサイト「京東」が開店した「京東X未来レストラン」だ。店舗面積は400平米、客席は100席という本格的なもので、現在約40種類の中華メニューが提供されている。

無人レストランは、米国のEatsa(イーツァ)が2015年にサンフランシスコに登場して以来、米国と中国で次々と起業されたが、リピーターを確保しきれないでいる。Eatsaも、当初7店舗をオープンしたが、現在は2店舗のみの営業になっている。

その中で、X未来レストランは、定着をし、店舗数も増えていくかもしれない。なぜなら、料理が美味しいからだ。



(サンフランシスコの無人レストランEatsaの開店時の報道。確かにデザインなどはことごとくしゃれていて、テクノロジー好きの人は魅力を感じると思うが、料理に注目すれば、コンビニで売っているランチパックをわざわざ大げさなテクノロジーを使って買っているようなもの。大きな話題にはなったが、リピーターを作ることができなかった。)

無人レストランの多くが、
ユーザー体験はよくない上、
料理がチンしたものしかない

レストランの接客は、多岐にわたっている。「(1)来客をテーブルに案内する」、「(2)オーダーを取る」、「(3)料理を配膳する」、「(4)食器を片付ける」、「(5)テーブルの準備をする」、「(6)決済をする」、さらに厨房では「(7)調理」をしなければならない。

Eatsaでは、来店客は自分で空いている席を探して座り(1)、設置されているiPad上のメニューから注文と決済を行い(2、6)、料理ができあがるとロッカーに自分で取りに行き(3)、食べ終わったら食器をゴミ箱に捨てる(4)。ところがテーブル上の食べこぼしなどはそのままにして帰る人が多いので、結局スタッフが清掃をしなければならない。また、調理は電子レンジで加熱調理できるものが主体となるので、肝心要の味の面でも、来店客を満足させることは難しい。

Eatsaを始めとする無人レストランの多くが、来店客が自分でやらなければならないことが多く、ユーザー体験はあまりよくない上に、料理がチンしたものしかないということからリピーターを作ることができなかった。1回は物珍しさでいくものの、次は普通のレストランにいってしまうのだ。

味の面でも来店客を満足させている、
中国ケンタッキーフライドチキン運営の
「Kpro」

この点、人とテクノロジーをうまく組み合わせて、ユーザー体験を向上させ、味の面でも来店客を満足させているのが、中国ケンタッキーフライドチキンが運営するKproだ。

注文は入り口付近に設置されている大きなタッチパネルから行う。そのまま顔認証で決済も行える。スマホを取り出す必要はない。顔認証決済を行うには、あらかじめスマホ決済「アリペイ」アプリに自分の顔を登録しておく必要がある。顔認証が使えない人は、スマホ決済のQRコードをかざすことで決済ができる。



(浙江省杭州市内のKpro。入り口のタッチパネルで注文と決済を行い、あとは好きな席に座る。渡されたデバイスの位置情報により、スタッフが料理を運んできてくれる)

このタッチパネル付近にはスタッフが常駐していて、決済をすると小さなデバイスを渡される。これをもって自分の好きな席に座り、料理ができあがるとスタッフが運んできてくれる。どこに座ったかは、デバイスの位置情報で把握をしている。食べ終わったら、そのままにして帰ると、スタッフが食器を下げ、テーブルを清掃する。

料理は、エコを前面に出した緑色野菜がふんだんに使われたメニューで、都市部の若者に好まれるものが中心だ。

1、2、6については省力化ができているため、スタッフの業務は大きく効率化されている。しかも、ユーザー体験が一般レストランに比べて少しも悪くなっていない。むしろ、注文や会計でいちいちスタッフを呼ばなければならない煩わしさがなくなり、ユーザー体験は向上しているぐらいだ。

Kproよりも
テクノロジーよりに振ったのが
「京東X未来レストラン」

このような人とテクノロジーを組み合わせたレストランで、Kproよりもテクノロジーよりに振ったのが京東X未来レストランだ。来店客は自分で空いている席に座り、テーブルにあるQRコードをスマホでスキャンするとメニューが表示されるので、そこから注文と決済を行う。料理ができあがると、自律走行するカートがテーブル横までくるので料理を受け取る。

そして、このレストランの売りが料理だ。人ではなく、調理ロボットが作っているのだが、温度、時間、調味料の量などは、中国でも有名なシェフのデータを取り、それを精密に再現しているという。実際、来店客の多くが「おいしい」と言う。



(京東X未来レストランのプレス発表会の様子。名シェフの調理法を再現しているロボット調理がウリ。来店客からも安くて美味しいという評判を得ている。完全無人ではなく、人のスタッフもいて、調理ロボットや自律走行カートの補助をしている。)

料理は作りたてのアツアツでなければ
ならないと考える中国人

中国人は料理は作りたてのアツアツでなければならないと考えている。従来の無人レストランは、電子レンジ調理であるために、アツアツにならないか、アツアツであっても食器までアツアツになってしまって、中国人が望むアツアツとは違和感がある。しかし、京東X未来レストランでは、調理ロボットが鍋を振り、中華独特の高火力で調理をし、それを一般的な食器に移して提供する。ロボットが作っているとは言え、その辺のレストランよりはおいしいのだ。

無人レストランの多くは、話題になるだけで消えていっている。しかし、Kproや京東X未来レストランのようにリピーターを作ることに成功し、定着をするレストランも登場してきている。

無人レストランが無人にする理由は、人件費を省いて価格を下げることを目的にしているが、それであれば、消費者は普通の低価格レストランやファストフード、コンビニのイートインコーナーに流れてしまうだけだ。安いといっても数十円のレベルのことで、それで電子レンジでチンをした料理を食べたいとは思わないだろう。

一方、Kproは人と無人テクノロジーをうまく組み合わせることで、ユーザー体験を損なわないどころか、若者の嗜好に合ったユーザー体験を提供できている。しかも、料理は緑色野菜を中心にし、オリジナリティーが高い。

京東X未来レストランは、調理の無人化を本気で考えることによって、レベルの高い料理を提供できている。多くの人が、京東X未来レストランがテクノロジーレストランだからきているのではなく、単純に美味しくて安いからきている。

結局、テクノロジーを前面に打ち出したサービスは、見世物にしかならない。1回は誰もが体験したがるので、話題になり集客もできるが、2回目はもうない。人とテクノロジーを組み合わせて、ユーザー体験、品質、価格のいずれかで、既存のレストランを凌駕することが必要なのだ。

原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)

テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

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