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早大政経学部入試で数学必須化へ!入試だけでなくビジネスでも求められる数学力
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早大政経学部入試で数学必須化へ!
入試だけでなくビジネスでも求められる数学力

2018.12.21

 
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2021年から
早稲田大学政治経済学部入試で
数学必須化、
文系でも数学を避けられなくなる

多くの人が、高校で文系コースに進むか理系コースに進むかの選択の時に、「数学が苦手だから文系」「数学が得意だから理系」と、数学を基準にコースを選んだ人も多いのではないだろうか。特に私立大学文系学部の入試科目は、国語、英語は必須でも、数学は社会との選択になっていることが多い。「数学が苦手だから」という理由で、私立大学文系学部を志望した人も多いはずだ。

ところが、2021年からはもはや数学を避けて通れなくなるかもしれない。現在実施されているセンター試験に代わり、大学入学共通テストが実施される。ここでは数学が必須科目となる。そして、早稲田大学が、政治経済学部、国際教養学部、スポーツ科学部でこの大学入学共通テストに参加することを表明した。他の大学の動向はさまざまだが、これまで数学は苦手でも文系科目を頑張れば、私大文系の最高峰の一つとされる早稲田大学政治経済学部に入れたのに、2021年からはそれが不可能になるインパクトは大きく、多くの文系学部もこれに追随し、大学入学共通テストに参加するのではないかと見られている。もはや大学受験生は、文系志望でも数学を避けて通れなくなる。

「思考力・判断力・表現力」を養うのに
数学という科目が適している

では、なぜ大学入学共通テストは数学を必須科目にしたのか。文部科学省は「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協働性」を学びの3要素として定めていて、このうちの「思考力・判断力・表現力」を養うのに数学という科目が適しているからだ。

2020年度に小学校から順次必修化されていくプログラミング教育も、プログラミング言語をマスターさせてエンジニアを養成するというわけではなく、プログラミングを通じて「思考力・判断力・表現力」を養うのが目的だ。

ビジネスの現場でも必要な
「思考力・判断力・表現力」

では、なぜ文部科学省は「思考力・判断力・表現力」にこだわるのか。それは現在のビジネスの中で業種にこだわらず「思考力・判断力・表現力」の3つが必要だからだ。

ビジネスの現場で、因数分解や三角関数が必要というわけではなく、あくまでも数学を学ぶことで養われる「思考力・判断力・表現力」が必要だということだ。数学以外の方法で養ってもいいのだが、数学ほど適している教材は他にはあまり見当たらない。

数学が苦手な人にとっては、数学は「意味不明の公式を山ほど暗記させられる科目」というイメージを持っていると思う。あれは、単に期末試験の問題が作りやすいから覚えさせられていただけで、数学の本質ではない。今の数学の授業は変わりつつあり、公式の暗記などというナンセンスなことはせず、必要があれば公式集を見るようにして、その公式を使って課題を解くことを問うようになっている。

ビジネスの現場で因数分解が必要になることはまずないと思うが、万が一必要になっても、公式はネットか何かで調べて使えばいいだけのことだ。

このようなテスト向けの数学を除いた思考力、判断力、表現力は誰にでも備わっている。例えば、「弊社の組織は、開発部と営業部が密接に協働し、その業務を総務人事部と経理部が支援しています」と文章で説明するよりも、

弊社=(開発部×営業部)+総務人事部+経理部

と数式風に表した方が、直感的に理解しやすくなるのではないだろうか。あるいは図解でもいい。こういう表現力はビジネスの場では、考え方を共有するためにきわめて重要な能力になっている。

成長戦略ロジックを示す
「アンゾフのマトリクス」

最近、あちこちで使われるようになったのが四象限マトリクスだ。2本の軸を使って、4つの領域に分類することで、判断をしやすくするフレームワークのひとつだ。その中でも最も有名なものは、「既存市場・新規市場」「既存製品・新規製品」の2軸で分類する「アンゾフのマトリクス」と呼ばれるものだ。



(アンゾフのマトリクス。米国の経営学者イゾール・アンゾフが考案した四象限マトリクス。アンゾフの事業拡大マトリクスとも呼ばれる。このようなフレームワークを自分で作り、考えを整理して、判断をする。そのような思考力、判断力、表現力がどの職種でも求められている)

今、あなたの企業の主力製品の売上が伸び悩んでいる。主力製品ということは既存市場に対して既存製品を販売しているはずだ。マトリクスの左上に位置をしている。売上が伸び悩むということは市場浸透が限界に達しているということになる。次の手段は同じ既存製品を新規市場に売り込むことだ。それができたら、今度は既存市場に対して新規製品を開発して売り込む。そして、新規市場に対して新規製品を開発するのはリスクも大きいので最後にすべきだとこのマトリクスは教えてくれる。

アンゾフのマトリクスの成長戦略ロジックが適切かどうかは、業種、業界によっては異論もあるが、こうやって思考を整理することによって、次にやるべきことがはっきりとする。まだ新市場の開拓も着手していないという段階であれば、「新しい製品を開発して新しい市場に売り込みましょう!」などという景気のいい提案を退けて、まずは既存製品を新たな市場に売り込むことに集中することができる。

人間は、頭がいい人もよくない人も、考えられる量に大きな差はない。周りから頭がいいと思われる人というのは、考えるべき範囲を絞り込める人なのだ。このようなマトリクスを使って、考えるべき範囲を限定することにより、いい考えが生まれやすくなる。

このようなマトリクス思考をするのに、思考力と表現力が必要になる。

マイクロソフトの面接で使われた
試験問題「富士山を移動させるには
どのぐらい時間がかかるか?」

『ビル・ゲイツの面接試験:富士山をどう動かしますか?』(青土社)には、マイクロソフト社の面接で実際に使われた試験問題が紹介されている。その中でも有名なのがタイトルにもなっている「富士山を移動させるにはどのぐらい時間がかかるか?」だ。

答えはトラックで運ぶのでも、ベルトコンベアで運ぶのでもかまわない。問われているのは「どのくらい時間がかかるか?」だ。

富士山の標高は3.776km。裾野の直径は正確にはわからないが、地図を見て、概算で直径40kmぐらいだとしてみる。すると、富士山という円錐の体積は1581立方kmになる。

10トントラックが1台で運べる土砂の量は、ウェブ検索をして得られた情報によると6.5立方mだという。1000台のトラックを用意して、1台のトラックが移動先まで1日10往復できるとすると、1日に運べる土砂の量は6500立方mになる。これで富士山全体の土砂を運ぶには、2億4320万日が必要で、これは約66万年になる。解答は仮定や概算の方法によって異なってくるが、重要なのはこのような概算が手際よくできるかどうかで、マイクロソフトはそこを判断材料にしている。正解があるわけではなく、手近なところで入手できる概算値を利用して、論理的に答えを導けるかどうかを見極めようとしているのだ。

これも思考力と判断力が必要になる。業務で新しい事業、キャンペーンなどを検討する前に、こういう簡単な概算をして、全体の規模感をつかめるかどうか。現実のビジネスでは極めて重要だ。

学びに年齢は関係はない。
数学というツールを使って、
思考力を養うことが可能

数学が嫌い、苦手というのは、その人の得手不得手の問題なので仕方がない。しかし、数学で養いやすい思考力、判断力、表現力は、社会に出てからとても重要になる。

スポーツが苦手な人は野球やサッカーはしないかもしれないが、健康な生活を送るためにウォーキングをしたり、ジムに通ったりするだろう。同じことで、思考力などを養うために、初歩的な数学を学ぶことはこれから必須になってくる。

そして、学びに年齢は関係はない。社会に出てからも、いくらでも数学というツールを使って、思考力を養うことはできるのだ。

日本数学検定協会のビジネス数学のサイト(https://www.su-gaku.biz)には、ビジネス数学検定のサンプル問題が3級から1級まで公開されている。1級はさすがに数学や統計の専門用語も登場して難易度が高いが、3級と2級はどのような職種であっても必要なレベルではないかと思う。まず、解いてみて、ご自身の数学力=思考力、判断力、表現力のレベルを確認してみていただきたい。



(日本数学検定協会のビジネス数学サイト。ビジネス数学検定のサンプル問題が公開されているので、ご自身のビジネス数学力を試してみていただきたい。https://www.su-gaku.biz)

原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)

テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

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