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「ものづくり白書2018」にみるこれから求められる人材とは?(前編)--“超スマート社会”『 Society5.0』実現へ
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「ものづくり白書2018」にみるこれから求められる人材とは?(前編)--
“超スマート社会”『 Society5.0』実現へ

2018.12.12

 
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「2018年版ものづくり白書」(以下、白書と記述)が5月に発行されました。これは日本が誇る“ものづくり業界”製造業の動向について経済産業省、厚生労働省、文部科学省の3省がまとめたものです。この記事では白書の記載に基づきながら、製造業の現況と今後の展開、さらにこの業界で今求められている人材について考えていきます。

回遊舎

好調な製造業、
『Society5.0』でますます上向きか

現状、製造業の業績は概ね「好調」です。白書では「売上高、営業利益ともに昨年と比べて増加傾向にあり、全般的には業績が上向く傾向」「今後3年の見通しも明るい」と記されています。

この好調を続けていくためには、近い未来に訪れる高齢化社会と人材不足を補うためのイノベーションが必須です。足りていない人手をロボットやAIが補完し、単純な工作作業ほか、人間でなければできないこと以外をどんどん置き換えていくことになるでしょう。

日本は2016年に「第5期科学技術基本計画」の中で「世界に先駆けた『超スマート社会』の実現(Society5.0)」を掲げています。Society5.0とは、サイバー空間(仮想社会)とフィジカル空間(現実社会)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会(Society)を表しています。



(内閣府「Society5.0」https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.htmlより)

政府広報としてネットで公開されている「Society5.0」(https://www.gov-online.go.jp/cam/s5/)に掲載されている具体例を見ると、

・山間部などへのドローン宅配
・声で近隣の商店への注文ができるAIスピーカー
・自分が指定した場所へ来てくれる自動走行バス
・自動的に血圧などを計測してくれる機械と、ネットを活用した遠隔医療
・介護ロボット
・経営に関するデータ処理をクラウド化

など、多岐にわたります。こうした技術は一部ではすでに実現されつつあり、今後も加速化することは間違いありません。

例に出したいくつかだけを見ても、Society5.0の実現のためには、ハード面で製造業に依存する部分は非常に大きいといえます。ものづくりの市場が広がっていくのも明白です。

しかし単純な製造工程は先に挙げたとおりAIやロボットに置き換わっていきます。市場は広がるが、単純工程には人はいらなくなる。という予測がたつ一方で、製造業界で今後もっとも問題となるのは「人材不足」なのです。

製造業最大の問題:圧倒的人材不足

ものづくり業界に関わる人材の不足はすでに起こり始めています。

「人材不足が大きな課題となっており、ビジネスにも影響が出ている」とする企業は今回の調査で32.1%でした。1年前の2017年の調査では22.6%だったので、たった1年で約10%も増加したことになります。これは危機的状況ともいえるでしょう。

白書では「経営者が持つべき4つの危機感」として警告を発しています。その第1にきているのが、やはり人材についてです。

1.人材の量的不足に加え質的な抜本変化に対応できていないおそれ

(そもそもの全体人数が不足していることに加え、IoT、AI、ビッグデータ解析などに関するスキルのある人材が今後絶対的に必要であることをまだ把握できておらず、対応が遅れているという指摘)。

2.従来「強み」と考えてきたものが、変革の足かせになるおそれ

(たとえば「お客様の課題解決」にのみ注力するあまり、エンドユーザーではなく顧客の要望のみに焦点を合わせるなど受け身になりすぎる傾向もある。これは多発している品質管理におけるデータ不正の発生の遠因ともなっている可能性がある)。

3.経済社会のデジタル化などの大きな変革期の本質的なインパクトを経営者が認識できていないおそれ

(モノそのものだけではなく、モノを利活用したサービス・ソリューションが価値を高めている、つまり情報化社会の次のステージが来ていることを企業および経営陣が認識できていないおそれ)。

4.非連続的な変革が必要であることを経営者が認識できていないおそれ

(過去の成功体験や、旧来からのボトムアップ型の企業経営に依存してしまい広がりがなくなる。今後繰り返し来る変革期に備えるには、時には他者とつながり価値を高める連携構築が必要となる)。

4つの危機感で提示されている内容は、業界全体の体質や仕事の進め方の改革もありますが、緊急の課題はやはり人材。逆に言えば求められるスキルを備えていれば人材不足の中、転職活動は非常に有利になります。

これからの製造業に求められるのは
“デジタル人材”

白書が記すこれから不足し、求められる人材は「デジタル人材」です。デジタル人材とは、「IT、IoT、AIをツールとして様々な場面で使いこなせる人材、あるいは、デジタルデータを使いこなせる人材(データサイエンティストなど)、IT、IoT、AIを使いこなすためのシステム設計を手がける人材」を指します(白書より)。製品デザインや製品設計・開発、ソリューションの創出などを担当するケースもこれに当たります。

加えて、セキュリティのスペシャリストも重要です。ビッグデータは収集しても流出はあってはならないこと。進化するデジタルツールに対応して、セキュリティもまた進化していかなければなりません。

もう一つ、BCPのスペシャリストにも注目が集まっています。BCPとは事業継続計画のことで、たとえば大災害が起こったとき、いかに被害を抑えながら事業を継続あるいは復旧させるかをあらかじめ計画することで、製造業では工場の稼働やサーバーの管理、原材料の入出荷や保管なども含まれます。

現時点で必要な人材は、これから導入されるIoTやロボット、AIなどを使いこなせるスキルの人材が必要ですが、今後、必要でありながら圧倒的に足りていないのはデータサイエンティスト的な存在です。各部署を横断的に見ながら、ビッグデータを解析し、社にとって効果的なデジタルツールをどう導入し、制御していくか。この分野の高いスキルがあれば、転職市場において相当なアドバンテージを持つことができます。

国はこれからのデジタル人材不足に備えて、大学教育での育成カリキュラムに着手し始め、若手層の厚みを増そうとしています。

同時にすでに社会人となっている層に向けてもスキルアップ・学び直しの取り組みを始めました。

ではどのようなプログラムがあるのか。後編ではあなた自身の価値を高めるために活用したい取り組みについてご紹介します。

原稿:回遊舎(かいゆうしゃ)

“金融”を専門とする編集・制作プロダクション。お金に関する記事を企画・取材から執筆、制作まで一手に引き受ける。マネー誌以外にも、育児雑誌や女性誌健康関連記事などのライフスタイル分野も幅広く手掛ける。
近著に「貯められない人のための手取り『10分の1』貯金術」、「J-REIT金メダル投資術」(株式会社秀和システム 著者酒井富士子)、「NISA120%活用術」(日本経済出版社)、「めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界で一番わかりやすいニッポンの論点10」(株式会社ダイヤモンド社)、「子育てで破産しないためのお金の本」(株式会社廣済堂出版)など。

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