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「どこまで発展する!? 中国のびっくりIT最新事情」第9回「Tik Tok」は大人が流入すると本当に終わるのか!?--開発元の中国・バイトダンスの戦略は!?
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「どこまで発展する!? 中国のびっくりIT最新事情」第9回
「Tik Tok」は大人が流入すると本当に終わるのか!?--開発元の中国・バイトダンスの戦略は!?

2018.12.13

 
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2018年は、
「Tik Tok(ティックトック)」の年

2018年は、「Tik Tok(ティックトック)」が席巻した年となった。ところが、若者のブーム現象には毎度のことだが、大人たちは「若者の「Tik Tok」離れ」「大人が流入してダサくなり、ブームが終わる」ということを口にし始めている。確かに、過去、数々の「渋谷JKの間で大人気」という冠がついたブームは、マスコミに取り上げられた瞬間から劣化が始まり、次のブームが生まれるとフェイドアウトしていくという運命をたどっている。「Tik Tok」もそうなるのだろうか?

「Tik Tok」の開発元は、中国北京市を拠点とするIT企業バイトダンス。本来のアプリ名は「抖音」(ドウイン。抖は体を震わす、元気を振り絞るなどの意味がある)。この海外版が「Tik Tok」だ。

開発元・中国バイトダンスの
リコメンド技術は絶妙

バイトダンスは、非常に技術力が高い企業で、現在では「Tik Tok」が有名になってしまったが、地位を確保したのはニュースアプリ「今日頭条」だ。既存のニュースメディアのニュースを閲覧できるアプリだが、秀でているのがリコメンド技術だ。特定のニュースを開く、読む、スクロールするといった動作から、閲覧リストに同傾向のニュースが集まってくるようになる。ここまでは、どこのニュースアプリも行なっている。しかし、今日頭条が優れているのは、同傾向のニュース一覧の中に、少し傾向の違ったニュースも放り込んでくることだ。まったく傾向が違うというわけでもなく、ユーザーが興味を持ちそうな範囲の中での異質さで、この距離感が絶妙なのだ。

これで、一般的なニュースアプリにありがちな「同傾向の狭い範囲のニュースしか読めなくなる」ということが起きず、いつ開いても、新鮮味のあるニュースが表示される。異質なニュースもリコメンドすることで、飽きさせない工夫をしているのだ。多くの人が「ニュースアプリは今日頭条だけで事足りる」と感じるようになり、今日頭条は1日のアクティブユーザー数が3億人というモンスターアプリになっている。



(バイトダンスが成長するきっかけになったニュースアプリ「今日頭条」。1日3億人が利用する。見た目は普通のニュースアプリだが、独特のリコメンド技術が使われている)

この独特のリコメンド技術は、「Tik Tok」にも応用されている。バイトダンス社内には、各国ごとにどのようなムービーが流行しているかをウォッチしているチームがある。このチームは常に情報交換をしていて、A国で流行しているムービーをB国の「Tik Tok」でリコメンドしてみるというようなことをしている。特定の手振りダンスが好きな人に、その手振りダンス類似ムービーだけをリコメンドするのではなく、こういった他国の流行ムービーもリコメンドされることになる。もし、それがその人の好みに合えば、そちらのムービーも見るようになっていく。ユーザーの主観からは、「Tik Tok」の中の世界では、常に新しい流行が起こり続けているように感じられるようになっていく。

「Tik Tok」がブームになったのは、リップシンクが面白い、手振りダンスが可愛いといった静的な魅力だけでなく、毎日新しい流行が次々と起こっているドライブ感という動的な魅力が大きく寄与している。

中国版「Tik Tok」、
今のキャッチコピーは
「美しい生活を記録しよう」

「抖音」(中国版「Tik Tok」)は、このリコメンド手法で、もはやダンスアプリの枠を超え始めている。今の「Tik Tok」のキャッチコピーは「美しい生活を記録しよう」になっていて、ダンス以外のムービーも共有され、利用者層も若者中心であることは変わらなくても、他の世代への裾野が広がり始めている。すでに、1日1.5億人のアクティブユーザーがあり、しかも人数、一人あたりの視聴時間とも伸び続けている。



(中国版「Tik Tok」「抖音」の公式サイト。キャッチコピーは「美しい生活を記録しよう」で、もはやダンスだけのSNSではなくなっている)

中国の動画共有サイト「ビリビリ」には、定期的に「Tik Tok TOP 50」などのまとめ動画がアップロードされる。この9月版を見て、数えてみると、いわゆる日本の「Tik Tok」のイメージに合うダンス映像は11本のみで、残りの39本はダンスとは無縁の映像ばかりだ(それでも必ずBGMは使われている)。



(中国の動画共有サイト「ビリビリ」に共有されている「Tik Tok」のランキングまとめ映像を見ると、もはや典型的なダンス映像は2割程度まで少なくなっている)

多いのはペット、グルメで、さらに旅行映像も多い。また、コントのようなことをやっている面白映像、料理の手順や化粧の手順を早回しで紹介する実用映像も多い。企業や団体の公式アカウントも急増しており、各地交通警察が提供する交通事故映像なども上位にランクされている。もはや、中国人に「「Tik Tok」はダンス系の動画SNS」と言ったら、怪訝な顔をされかねない状況だ。わかりやすく言えば、ショートムービー版のユーチューブ、動画版のインスタグラムに近い感覚になっていて、だからこそ、1日1.5億人のアクティブユーザーを惹きつけている。

日本の「Tik Tok」はどうなる?--
「若者の流行」では終わらない!?

日本の「Tik Tok」は、このまま若者たちだけの「イケてるダンスアプリ」のままでいくのか、それとも中国のように全世代的なプラットフォーム化をしていくのかは、バイトダンスの戦略次第なので、そこはわからない。しかし、「若者の流行」は思ったほどビジネスにならない。深く刺さるものの、少子化の日本では若者の数がそうは多くなく、さらに短期間で流行が移り変わってしまうからだ。一方で、全世代的なプラットフォームは、浅くしか刺さらないものの、膨大な人数が利用し、長期にわたって利用される。

中国版「Tik Tok」は、ダンスとリップシンクをフックに若者世代の心をつかみ、そして同社のリコメンド技術を駆使して、あっという間に国民的プラットフォームになってしまった。「日本でもそうしたい」とバイトダンスが考えていると推測することは不自然ではないだろう。

プラットフォーム化された「Tik Tok」のショートムービーに慣れてしまうと、もうユーチューブが退屈になってくる。数分という長い映像で、しかも最初の1分くらいは、タイトルバックや配信者の挨拶のようなものが延々と続く。「Tik Tok」は、見たい映像の見たい部分だけ、いきなり見ることができるのだ。

日本でも「Tik Tok」はプラットフォームとなることができるだろうか。

原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)

テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

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