ITエンジニアのための勉強会・イベントレポート情報メディア

RPA・AIが管理部門へもたらす未来~中小・中堅企業はどんな備えをすべきか!?
news

RPA・AIが管理部門へもたらす未来
~中小・中堅企業はどんな備えをすべきか!?

2018.10.24

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2018年9月、東京都千代田区丸の内JPタワーにて、マネーフォワード 主催の「MF Expense expo 2018」が開催された。このイベントのテーマは「経理から始める働き方改革」。企業の経理担当者に向けたセミナーだ。午前中に基調講演が行われ、午後には8つのセミナーが開催され、夕方にはカクテルパーティー形式の懇親会も開かれた。

この10年で、テクノロジーは飛躍的に進歩をし、企業での働き方も大きく様変わりしてきた。その恩恵をいちばん実感しているのが経理部門だ。15年ほど前、社員の業務に伴い発生する経費の領収書は、経理部に持ち込まれ、経理担当者はそれをスプレッドシートやスタンドアローン方式の経理ソフトに手入力するところからしなければならなかった。それが社内ネットワーク、社内クラウドなどの環境が整うにつれ、各社員が個別に自分で入力をし、経理担当者はそれを集計、確認をすればよくなった。さらに、モバイルデバイスやキャッシュレス決済が登場し、入力すらも自動化されるようになってきている。

牧野武文

今、注目されている
"手作業を覚えてくれるロボット"「RPA」

さらに、今、注目されているのが、RPA(Robotic Process Automation=ロボットによる業務の自動化)だ。ロボットといっても体を持ったロボットではなく、コンピューター上の仮想ロボットに、事務処理作業を自動化しようという試みだ。

例えば、商品をさまざまな商店に納入販売している企業では、案件ごとに見積書を作成し、納品書を発行、請求書を発行、口座情報から入金を確認という作業を毎月しなければならない。経理では、締日に納品書が発行されている案件だけを抽出して請求書を発行、送付。さらに口座情報により入金を確認するという作業が必要になる。これは、経理ソフト上で、条件抽出を行い、請求書発行ボタンを押し、発行された請求書を電子メールなどで送付、入金を確認したら手動でチェックを入れるという作業が必要になる。

手書き請求書と郵便を使っていた時代に比べれば格段に楽になったとはいえ、マウスを使って、ソフトウェアを操作し、無数のクリックを行わなければならない。

RPAはこれを自動化してくれる。

このような自動化は、一連の手順をあらかじめ記述しておくというプログラミングが伝統的な手法だった。しかし、RPAは経理など現場が使うもので、プログラミングは手に余る。そこで「手作業を覚えてくれるロボット」という発想のRPAが登場した。

例えば、先ほどの「納品書がある宛先を選択して、請求書を発行する」という作業であったら、まずは経理担当者が経理ソフト上で「納品書が発行されている宛先の検索」「全選択」「請求書の発行」という作業をマウスを使って行う。これをロボットに覚えさせる。あとは、ロボットが繰り返し何度でも同じ作業を実行してくれるようになる。人間のように手でマウスを動かすのではないので、実行は極めて高速だ。

もちろん、覚えさせた手順に問題が生じることもある。この場合は、ロボットの手順を開いて編集するというプログラミング的な作業が必要になるが、各RPAソリューションとも、アイコンを移動させることで手順が編集できるなど、プログラミングの知識のない現場担当者でもじゅうぶんに編集ができるような工夫をしている。

瀧俊雄氏「強烈なRPAの普及が、
経理の世界でも家計簿の世界でも進んでいく」

基調講演で中心テーマとなったのもこのRPAだった。「RPA・AIが管理部門へもたらす未来~中小・中堅企業はどんな備えをすべきか」と題して、RPAホールディングス高橋知道代表取締役、マネーフォワード瀧俊雄取締役の2人がアップトゥーデートな話題について対談をした。

対談の前にお二人はそれぞれに簡単なプレゼンテーションを行った。

瀧俊雄氏は「キャッシュレス化と仕事の未来」というプレゼンテーションを行なった。

日本のキャッシュレス化は韓国や中国に比べて遅れていて、20%前後だと言われる。しかし、ここに来て政府が40%や80%という目標値を打ち出し、急速にキャッシュレス化が進み始めている。

瀧氏はこれは経理の仕事にとっても大きいという。「今までレシートなどが主体だったのに、銀行口座に結びついた交通カード、電子マネーでの支払いが進むと、項目の入力が自動化されていく」。すると、「強烈なRPAの普及が、経理の世界でも家計簿の世界でも進んでいく」という。

自動化が強烈に進むと、誰もが不安になるのが「消えていく職業」だ。自動化、人工知能(AI)などによって不要になる職業がある。



(瀧氏がプレゼンテーションで提示した「代替される仕事の上位」。受付、データ入力などの「作業系」業務が上位にくる。)

一方でそれでも必要とされる職業もある。「その違いはひとつの傾向があって、作業は消えていきます。一方で、他人の行動を変えたり、影響を与えたりする職業は残っていきます」。



(同じプレゼンテーションで提示された「代替されない仕事の上位」。セラピスト、アドバイザーなど「他人に助言をして、行動を変化させる」業務が上位にくる。)

この大きなテーマを後の対談で詳しく議論したいと締めくくった。

高橋知道氏「働き方の自由度を高めたことが
RPAの最大の利点」

高橋知道氏は「RPAがもたらす生産性革命」というプレゼンテーションを行った。

RPAホールディングスは、RPAという言葉すらない2008年からRPAツールの開発を行ってきている。高橋氏は自社でのRPA活用を紹介した上で、「RPAを導入すると、人間が作業をする必要はなくなり、確認作業だけになり、大幅なオペレーション効率の向上が期待できる」という。

オペレーション効率が向上して、次に起こるのはリストラではなく、「多様な働き方を弊社では実現しています」と指摘した。

RPAホールディングスでは部長とメンバーの5名体制で、子会社5社を含めた経営管理業務を遂行している。それも5人がフルで業務に専念しているのではなく、「多能工化」「時短勤務」「リモートワーク」が起きている。



(高橋氏がプレゼンテーションで提示したRPAホールディングスでの働き方の多様さの例。RPAで作業時間が圧倒的に少なくなると、次に起こるのはリストラではなく、働き方の自由度が上がること。RPAホールディングスでは、多能工化、時短勤務、リモートワークなど、働き方のバラエティが一気に増えた。)

多能工化とは本来業務以外の業務も遂行することだ。管理部のスタッフが、RPAソリューションの営業にもいく。また、小さなお子さんがいる社員で時短勤務を実現した社員もいる。さらに、より進んだ例がリモートワークだ。家族の都合で遠方に転居した社員が、通常は自宅でロボット作業の確認作業を行い、月に5日だけ東京本社に出社するという勤務体系を実現している。

「RPAで作業時間が圧倒的に少なくなり、その余った時間を別の業務に投入する人もいれば、家族や子どものために投入する人もいます。その働き方の自由度を高めたことがRPAの最大の利点だと認識しています」。

RPAを導入したら、仕事がなくなってしまう!?

対談は、5つのサブテーマに沿って行われた。ひとつ目のサブテーマは「RPAが過熱しているけど、どう思っていますか?」。

高橋氏は、確かに過熱しているということを認めた上で、その過熱を歓迎しているという。「過熱することによって、世の中に認知され、導入が進んでいく」という。瀧氏も「さまざまな概念が、政府が予算確保をするぐらい過熱することは、普及をしていく上でとても重要なこと」と同意した。

2つ目のサブテーマは「5年後、15年後の仕事ってどう変わりますか?」。

高橋氏は、顧客から必ず出る話が「RPAなんか入れたら、仕事がなくなっちゃう」という本音だという。しかし、「なくなると言われている仕事は、すべて作業です。問題は仕事をどう定義するかということだと思います」。例えば、銀行であれば「顧客のお金の悩みを解決すること」が銀行の本来の仕事。RPAやAIが導入されると、振込処理のような作業はほとんどなくなるが、顧客の悩みを解決することという本来の仕事は永遠になくならない。

瀧氏は、消費者側はテクノロジーの進化により行動がものすごく大きく変わったのに、働く側はまだそれほど大きく変わっていないのではないかと指摘する。「家電量販店に行く前に、価格.comなどで最低価格を調べるというのは当たり前のことになっています。でも、働く方はどうか。以前の働き方がレガシーとして受け継がれやすいところがある。そこがRPAで変わっていくと嬉しい」。



(マネーフォワード瀧俊雄取締役。「人間の職業がなくなるなどと心配しているこの基調講演は、20年後の人が見たら鼻で笑ってくれると思います」。)

高橋氏「RPAやAIも、
いずれ誰でも普通に使える大衆化が起こる」

3つ目のサブテーマは「勝手に学習し続けるツールが安く使えるようになると、大企業はどうなりますか?」。

高橋氏は、テクノロジーは大衆化していくとも指摘した。「RPAやAIも、いずれ誰でも普通に使える大衆化が起こります」。そして、人の「ラスト1マイル現象」が起きるのではないかと予測する。課題を持っている顧客のすぐ近くにいる人が、大衆化したRPAやAIを駆使して、対面して課題解決をする世の中になっていく。大企業はそのようなツールや手法を提供するという図式になるという。



(RPAホールディングス高橋知道代表取締役。「人がいる限り、解決しなければならない課題は必ず存在します。それを解決する仕事は永遠になくならない」。)

これに対して、瀧氏は「そもそも企業という器自体が必要とされなくなるのではないか」と指摘した。高橋氏も「全員がフリーランスというのは極端にしても、企業の数は少なくなるでしょうね」と同意。さらに、テクノロジーの進歩により、大企業と中小企業、個人のパフォーマンスの差がどんどん縮まり、「大企業であることのメリットはどんどん小さくなっていく」と指摘した。

瀧氏「不正を疑うために
費やしているコストが小さくなる」

4つ目のサブテーマが「企業のコンプライアンスはどう変わって行きますか?」というもの。

高橋氏は、RPAやAIは、経理の不正の自動検知も行えるようになるという。「不正のパターンを学習して自動検知する。そのテンプレートを販売するなどで広めることで、粉飾決算などの不正もなくなっていきます」。

瀧氏は、不正がなくなることも大きいが、不正を疑うために費やしているコストが小さくなることが大きいと指摘する。不正をさせないためにさまざまな仕組みを導入し、そのために社員は毎回「証拠」を提出しなければならない。このような人を疑ってかかる仕組みがなくなることで、コストだけでなく、人間関係にも大きな影響を与えていくのではないかという。

「作業」と「仕事」を切り分けて考えることが重要

5つ目のサブテーマは、「今日から私たちはどう変わればよいですか?」というもの。

瀧氏は「仕事でも生活でも、実は95%の時間は、同じことを繰り返す作業に費やしている」と指摘する。高橋氏は、「家電製品、パソコン、スマホなどのテクノロジーはすべて、そのようなルーチンワークを減らし、もっと重要なことに時間を使えるようにすることが目的だった」という。

ただし、その変化の中にいると、変化は「徐々に」起きているようにしか体感できない。そのため、自動化をするアプリを入れてみる、RPAを試しに使ってみるなど、自分から変化を体感できる行動をとっていくことが重要だという。

「RPA、AIにより仕事が奪われる」というのは一部真実で、対談の中にもあるように「作業という仕事」はどんどんなくなっていく。一方で、「人のラスト1マイル」に相当する「人の行動を変容させる」仕事はなくならないどころか、その価値が相対的に高くなっていく。自分が今手掛けている業務の中で「作業」と「仕事」を切り分けて考えることがとても重要だ。

高橋氏は、「人がいる限り、課題は必ずある。その課題を解決する仕事は永遠になくならない」と強調し、瀧氏は「20年後にこの対談を動画で見た人は、仕事がなくなるとか心配しているのを見て、鼻で笑ってもらえるでしょうね」と結んだ。

原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)

テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

RPA・AIが管理部門へもたらす未来~中小・中堅企業はどんな備えをすべきか!?

この記事はどうでしたか?

おすすめの記事

キャリアを考える

BACK TO TOP ∧

FOLLOW