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「どこまで発展する!? 中国のびっくりIT最新事情」第7回中国IT企業の初任給は日本よりも高い? 安い?
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「どこまで発展する!? 中国のびっくりIT最新事情」第7回
中国IT企業の初任給は日本よりも高い? 安い?

2018.10.25

 
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中国の携帯電話メーカー「ファーウェイ」の日本法人「ファーウェイ・ジャパン」が、新卒の初任給「月給40万円」という求人募集を行なったことが話題になった。一般的な日本企業の倍だ。

優秀な人材を集めるための施策だが、では、中国本土のIT企業の給与水準はどのくらいなのだろうか。すでに給与水準の点でも日本は抜かれてしまっているのだろうか、それともまだまだ日本は負けていないのだろうか。

牧野武文

中国人にとって、報酬というのは
最も興味のある話題

中国人は、他人の給料を聞くことに抵抗感がない。「今の会社ではいくらもらっているの?」という言葉は挨拶がわりにもなっている。人の給料を聞くだけでなく、自分の給料もあけすけに話す。会社の中でも、同僚にもらっている給料の額を尋ねるのは普通のことだ。

これが公平性を保つ生活の知恵となっている。同じ会社で同じ仕事をしているのに報酬が違う。そんなことがあったら、報酬が低い社員はすぐに辞めてしまう。そのため、特にIT企業では給与の決め方も、職務階級を定め、それに業務目標の達成度を加味するなどの給与決定のアルゴリズムを公表しているところが多い。そのアルゴリズムを外に向かって公開している企業もあるし、非公開であっても、社員がSNSなどで公表してしまうことも結構ある。

中国人にとって、報酬というのは最も興味のある話題で、中国のネットでは、調査会社などが調査した結果をまとめて、学部別初任給ランキング、大学別初任給ランキング、平均給与ランキングなどを簡単に見つけることができる。このような情報は、中国報酬網(http://www.xinchou.cn)というサイトがまとめて公開をしている。

その情報から、学部別平均初任給を調べると、理系のトップは情報セキュリティ系で5906元(約9万6000円)、文系のトップはフランス語系で5426元(約8万8000円)と、日本の半分ぐらいの感覚だ。



(学部別平均初任給ランキング。トップは情報セキュリティ系学部で、約9万6000円。日本の大企業のちょうど半分程度だ)

清華大学の初任給は約20万円、
日本の大企業の初任給とほぼ同じレベル

ところが、これは中国全土の新卒の平均額。北京、上海、深圳、広州といった大都市と地方都市では、給与も異なれば、生活費もまったく違う。そこで大学別卒業者初任給ランキングを探してみた。

これによるとトップは、北京市の理工系大学で、中国のMITとも呼ばれる清華大学で12352元(約20万円)となり、日本の大企業の初任給とほぼ同じレベルになる。



(大学別平均初任給ランキングでは、中国のMITと呼ばれる清華大学がトップで、1万2352元(約20万円)。日本の大企業の初任給とほぼ同じ)

中国のIT企業は募集情報を公開するときに、初任給を提示するところが多い。このような情報もまとめられている。これによると、主要IT企業の初任給は年額330万円から400万円のところが多い。日本の一流企業と比べても遜色のないレベルだ。

特別採用をする制度を持っている企業も--
ファーウェイは860万円

さらに、大学での研究実績、起業経験などがあると、特別採用をする制度を持っている企業もあり、こちらは年額400万円以上で、ファーウェイは860万円と頭抜けて高い。また、人数は少ないが研究職の募集もあり、こちらは軒並み初任給が1000万円を超える。ただし、多くの場合、博士号取得者などが中心になる。



(中国の求人募集の多くは、初任給は昇級の仕組みが記載されている。主要IT企業の初任給は年棒300万円代半ばが多い。また、博士号取得者などの条件はつくが、研究職になると初任給が一気に1000万円越えになる)

中国のIT企業の場合、初任給は低めに抑えられていて、入社後実績に応じて、階級があがり、どんどん給与も増えていくところが多い。日本のようなベースアップという考え方はないが、仕事を覚えて、結果を出せば数年で給与が倍増することも珍しくない。

IT企業の平均給与ランキング、
最も高いアリババは約53万円

では、平均給与はどのくらいなのだろうか。成都市にあるIT系の専門学校、鼎利学院が卒業生の情報を元に、IT企業の平均給与ランキングを作っている。

これによると、最も平均給与の高いIT企業は、杭州市のアリババ。スマホ決済「アリペイ」を運営したり、ECサイト「タオバオ」「Tmall」を運営している。平均給与額はなんと3万2570元(約53万円)になる。他の企業も2万元(約32万円)程度になる。

これも年棒に換算すると650万円程度になるので、日本のトップ企業のちょうど半分ぐらいと考えていいだろう。

鼎利学院によると、この額はあくまでも卒業生の追跡情報から算出したもので、勤続年数が短い人が多いため、実際の平均給与はかなり多いのではないかと注釈をつけている。食事が無償で支給される、社員株の割り当てがある、マンションが相場の半額で購入できるなど、さまざまな福利施策もあり、地位が上がってくると手取り給与の2倍近い実質報酬になる企業もある。さらにアリババの場合は、杭州市という地方都市にあるので、生活費は大都市に比べて安い。実質的な使い手という点では、かなりの高給に感じている人が多いのではないだろうか。



(主要IT企業の平均給与。トップはアリババの3万2570元(約53万円)。これも日本のトップ企業の半分程度。しかし、さまざまな福利策があり、杭州市は生活費が安いので、使い手では日本のトップ企業の倍ぐらいの感覚かもしれない)

生活費と福利施策の充実で
実質的には日本よりも上、ただしハードワーク

結論としては、中国IT企業の初任給、平均給与は絶対額の比較では日本のトップ企業の半分程度。しかし、生活費が安く、福利施策も充実しているので、お金の使い手にとっては日本よりも高いといっていいのではないだろうか。読者の中には、中国企業で働きたいと感じた方もいるかもしれない。しかし、中国のIT企業は例外なくハードワークだ。深夜にタクシーやライドシェアで帰宅をするというのが当たり前の世界。それは米シリコンバレー企業も変わらない。そこは覚悟しておく必要がある。

中国のIT企業は、平均勤続年数も5年以下と、次々と転職を繰り返す人が多く、転職をするたびに給与を上げていく。会社に長く居続けるサラリーマン的な感覚は薄く、どちらかというとプロ野球選手のようなアスリートの感覚に近い。

日本のような同じ会社に長く勤めるのが幸せなことか、中国や米国のIT企業のように次々と転職を繰り返してスゴロクのように収入が上がっていくのが幸せなことなのか、それはなんとも言えない。しかし、日本も次第に勤続年数が短くなり、転職を繰り返す人が、IT企業を中心に増えていっていることだけは間違いない。

よく中国人は「1年目は仕事を覚え、2年目は転職先を考え、3年目は転職先の人と面談する」というようなことをいう。この感覚は日本人にとってもこれから重要になるかもしれない。実際に転職をするしないに関わらず、常に自社と他社を比較し、「自社に留まるべき積極的な理由」が明確になっていれば、仕事にも必ずいい影響を与えるからだ。転職感覚を持つことは、今の仕事にもプラスになる。

原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)

テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

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