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富士急ハイランドはもはやアジアの遊園地、「WeChatPay」の海外戦略とは!?
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富士急ハイランドはもはやアジアの遊園地、
「WeChatPay」の海外戦略とは!?

2018.08.27

 
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富士急ハイランドは、日本の遊園地というよりも、アジアの遊園地になっている。この富士急ハイランドのアジア化の背景には、WeChatPay(ウィーチャットペイ)を運営する中国深圳市のテンセントの積極的な海外進出策がある。中国のキャッシュレス決済比率は70%前後で、都市部に限ると90%を超えているとも言われている。

牧野武文

ハイテク化・アジア化している
「富士急ハイランド」

絶叫ライドで有名な、富士急ハイランド(山梨県富士吉田市)に最近行かれたことはあるだろうか。半年ほど行っていない人が行くと、あまりの変貌ぶりにびっくりするだろう。7月14日からそれまで1500円だった入園料が無料になった(その代わり、ライド料金は値上げになる)。ところが、なぜかチケット売り場(受取所)はそのままあり、チケットを受け取り、セルフチェッカーで自分の顔を登録する。顔認証技術を応用し、フリーパス所有者は顔パスでライドに乗れたり、事前にウェブから顔写真を登録しておけば、スムースに入園できるようになった。また、園内のセキュリティを守る意図もある。顔写真は10ヶ月後に自動的に削除される。なんだか、ものすごくハイテク化をしているのだ。



(富士急ハイランドバス停前のチケット売り場兼ギフトショップもWeChatPay(ウィーチャットペイ)に対応。人民元建てで商品を購入できる。「微信支付」とは、WeChatPay(ウィーチャットペイ)の中国名。)

それだけではない。まるでここは日本ではないかのように国際化している。来場者を見渡しても、中国人、韓国人だけでなく、欧米の人も多い。さらに、ギフトショップなどでは中国で普及しているスマホ決済「WeChatPay(ウィーチャットペイ)」が利用でき、人民元建てで買い物ができる。購入時に人民元から日本円への両替も自動的に行われ、売店側は日本円で受け取れる仕組みだ。さらに中国人向けギフトコーナーでは、無人レジまで用意されている。商品をレジに読み取らせ、スマホでWeChatPay(ウィーチャットペイ)決済するものだ。



(富士急ハイランド内のギフトショップには、WeChatPay(ウィーチャットペイ)の体験コーナーが出現。WeChatグッズが無人レジを使って購入できる。)



(体験コーナーにある無人レジ。商品のバーコードを読み込ませ、あとはWeChatPay(ウィーチャットペイ)で決済するだけ。商品はそのまま持っていっていい。日本人にはなじみのない購入体験だが、中国人観光客は慣れた様子でセルフ決済して商品を購入していっている。)

さらに駐車場には、シェアリング自転車「Mobike」も用意されている。自転車についたQRコードを専用アプリで読み取ると、30分120円で利用できる。これも中国生まれのサービスだ。



(富士急ハイランドの駐車場の空きスペースを利用して、中国のシェアリング自転車サービス「Mobike」が運営されている。専用アプリを利用することで、30分120円で自転車を利用できる。)

富士急ハイランドは、日本の遊園地というよりも、アジアの遊園地になっている。



(富士急ハイランドのゲートでも、WeChatPay(ウィーチャットペイ)のキャンペーンの準備をしている。)

WeChatPay(ウィーチャットペイ)は、
海外旅行をする中国人に伴って進出

この富士急ハイランドのアジア化の背景には、WeChatPay(ウィーチャットペイ)を運営する中国深圳市のテンセントの積極的な海外進出策がある。中国のキャッシュレス決済比率は70%前後で、都市部に限ると90%を超えているとも言われている。スマホ決済のシェア1位はアリババが運営する「アリペイ」、2位が「WeChatPay(ウィーチャットペイ)」で、この2つで90%を超える。たいへんな普及率だが、裏返して言えば、すでに国内の成長空間は乏しくなっているということでもある。そのため、アリペイ、WeChatPay(ウィーチャットペイ)とも海外進出が大きなテーマになっている。

と言っても、キャッシュレス決済の海外進出というのは簡単ではない。その国の法規、商習慣などの壁があるからだ。アリペイは今年4月から、日本人向けのアリペイを日本でサービスインする予定をアナウンスしていたが、日本の銀行の協力を取り付けることができず、サービス開始時期は現在のところ無期延期となっている。

一方のWeChatPay(ウィーチャットペイ)は、海外旅行をする中国人に伴って進出をしようとしている。つまり、中国人訪日客に人気の観光スポット、人気の店舗にWeChatPay(ウィーチャットペイ)を導入してもらい、中国人訪日客の利便性を高め、同時に日本の企業も利益を上げられるというウィンウィンの関係で、海外に出ていこうという戦略だ。

WeChatPayとのフラッグシップ提携で、
「毎日が爆買い」状態

テンセントでは、WeChatPay(ウィーチャットペイ)に3種類の提携プログラムを用意している。「一般」「年度」「フラグシップ」の3つだ。

「一般」は、ごく一般的な提携プログラムで、WeChatPay(ウィーチャットペイ)利用客のビッグデータが提供されたり、販促物などが提供されるというもの。その上が「年度」プログラムで、1年単位の契約となる。WeChatアプリ内に広告が出せるようになる他、テンセント側がプロモーションまで行ってくれるようになる。

さらにその上にあるのが「フラッグシップ」で、無人レジ、顔認証などのスマートソリューションまでテンセントがサポートしてくれるようになる他、共同で大規模なプロモーション展開ができるようになる。このフラグシップ提携は、「一業種一社」の原則がある。

日本では、富士急ハイランドの他、新千歳空港、ドン・キホーテなどがこのフラグシップ提携を行っている。

このフラッグシップ提携は、抜群の効果をあげている。最近、「中国人の爆買い」という言葉を聞かなくなったが、ある小売関係者によると「それが普通の状態だから」というほど中国人の購買力は旺盛だ。WeChatPay(ウィーチャットペイ)などを軸として、きちんと中国人訪日客とのチャネルを構築できている企業にとっては、「毎日が爆買い」状態になっている。

新しい発想を先取りした新千歳空港

ドン・キホーテでは、2017年7月にWeChatPay(ウィーチャットペイ)を導入以降、中国人免税客数は165%になった。ポイントになったのが、WeChatのミニプログラムだ。ミニプログラムというのは、WeChatPay(ウィーチャットペイ)アプリ内の「アプリ内アプリ」のようなもの。WeChatを開くと、簡単にドン・キホーテのミニプログラムにアクセスできるようになり、キャンペーンなどのプッシュ通知もできるようになる。このミニプログラムやWeChatの公式アカウントを活用し、訪日前からクーポンやキャンペーン情報などをプッシュし、日本のドン・キホーテで買い物をするときにクーポンを利用してもらい、帰国後も越境ECサイト経由でドン・キホーテの商品をプッシュするという来日時だけではないマーケティングを行っている。WeChatは決済アプリであるとともに、日本のLINEのようなSNSアプリでもある。ドン・キホーテの購入体験、キャンペーン情報は、SNSのソーシャルマップを経由して拡散し、大きな広がりを持つプロモーションになっている。

新千歳空港でも2017年9月に国際線ターミナル、11月に国内線ターミナルにWeChatPay(ウィーチャットペイ)を導入して、空港内店舗の売上が右肩上がりで上がっている。導入前と比べて大きな違いは、現金決済の比率が大きく減少したことだ。WeChatPay(ウィーチャットペイ)導入前(2017年9月1日から19日まで)と、導入後(2018年2月)のデータ比較では、WeChatPay(ウィーチャットペイ)決済比率は0%から17%と上昇し、現金決済は49%から38%になった。その他のクレジットカード、銀聯なども微減している。

空港では、帰国する前に、手元に残った現地通貨を使い切ってしまうために土産物を買うというのはどこの国でも同じだ。しかし、日本国内でもWeChatPay(ウィーチャットペイ)や銀聯カードといったキャッシュレス決済が使える場所が増えてくると、訪日客は次第に日本円への両替額が抑えられるようになる。帰国前に空港に着いた時は、日本円はほとんどなく、欲しい物があっても買わなくなる。このような時、WeChatPay(ウィーチャットペイ)が利用できれば、欲しいものは購入するようになる。また、中国から空港についたばかりの時には、日本円への両替が済んでいない人がほとんどで、空港での消費はしないが、WeChatPay(ウィーチャットペイ)が利用できれば購入をする機会が増える。

「余った日本円で買い物をしてもらう」という古い発想の空港のギフトショップから、「欲しいものをWeChatPay(ウィーチャットペイ)で購入してもらう」という新しい発想へ転換している最中で、新千歳空港の取り組みはこの新しい発想を先取りしていることになる。

今後もテンセントは、
日本企業との提携戦略を積極的に展開

今後もテンセントは、日本企業との提携戦略を積極的に進めていき、機能が異なっているWeChat中国版と国際版の差異も数年以内に解消して、事実上の統合をしていく計画だ。そうなれば、日本人も中国の銀行に口座がなくても、国際クレジットカードや日本の銀行口座でWeChatPay(ウィーチャットペイ)が利用できる可能性もある。

日本の空港、鉄道、遊園地、百貨店、小売店などは、WeChatPay(ウィーチャットペイ)などのキャッシュレス決済を軸に、アジア化、グローバル化していくのかもしれない。

原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)

テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

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