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「どこまで発展する!? 中国のびっくりIT最新事情」第5回中国のスターバックスがすごいことになっている!!「ラッキンコーヒー」との対決で進化
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「どこまで発展する!? 中国のびっくりIT最新事情」第5回
中国のスターバックスがすごいことになっている!!
「ラッキンコーヒー」との対決で進化

2018.08.09

 
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中国市場は、どの分野でも競争が激しい。昨年あたりまでの中国のスターバックスは、圧倒的に中国市場の中で強いことにあぐらをかいて、中国人消費者のニーズへの対応も遅れがちだったが、これに対して台頭したのが、まったく新しい感覚のカフェ「ラッキンコーヒー(luckin coffee)」だ。だが、スタバも高級業態である「リザーブ・ロースタリー」を開店するなど逆襲に転じた。こうした競争が、中国都市独特の活気とエネルギーになっている。

牧野武文

崩れ始めた中国カフェの"スタバ一強"、
スマホ決済や「外売」への対応遅れ

中国でも大都市には日本と同じようにたくさんのカフェがある。いちばん目にするのは、1999年に北京市故宮博物館の中に開店して以来、中国ではカフェの代名詞ともなっている米スターバックス。さらに、2007年には英コスタコーヒーが上陸。これを見て、国内系のパシフィックコーヒーなどが加わり、中国の都市にカフェが急速に普及していった。

スターバックスは、将来中国が米国に並ぶ重要な市場になると考え、2021年までに5000店舗にする計画を進めている。対抗する英コスタコーヒーも2022年までに700店舗にする計画を進めている。

中国のカフェ市場はスタバ一強が続いているが、それが崩れ始めた。中国のカフェ市場は、2020年に1兆元(約17兆円)市場、2030年には3兆元市場と力強く成長する中で、中国のスタバは、2017年の第三四半期既存店売上が2%減少するというとマイナスに転じた。

理由はいろいろある。ひとつはスタバの店舗が飽和して、ただ店舗数を増やすだけでは成長が難しい状態になっていることもある。もうひとつは、スタバがグローバルな運営方式を採用し、中国独自のローカルな運営方式に対応してこなかったことがある。

例えば、中国ではどこでもQRコードスマホ決済で支払いができるが、つい最近まで、中国人はよく「スタバ以外どこでも支払いができる」という言い方をしていた。スタバはスマホ決済になかなか対応しなかったのだ。ようやく昨年1月に「WeChatペイ」、昨年9月に「アリペイ」に対応をした。

また、中国で急速に普及した「外売」にも対応してこなかった。外売とは、スマホから注文をすると、配達員が代わりに買いに行って届けてくれる出前サービス、買い物代行サービスだ。多くの飲食店が外売に対応していく中で、スタバは対応をしてこなかった。

この隙に、日系コンビニやケンタッキーがいわゆる格安の「コンビニコーヒー」を始め、客が流れてしまったのではないかと言われている。

まったく新しい感覚のカフェ
「ラッキンコーヒー」が急成長

さらに、強烈だったのが、まったく新しい感覚のカフェ「ラッキンコーヒー」の急成長だった。ラッキンコーヒーはスマートフォンアプリから注文をする。できあがり時間を見てカウンターに行き、アプリのQRコードを見せるだけ。これで、商品が受け取れ、決済は自動的にスマホ決済で済んでしまう。レジの行列に並んで注文をする必要がない。

店内で飲むときもレジは使わない。先に席を探して座ってしまう。そこで、スマホから注文。コーヒーができあがるとプッシュ通知がくるので、それから受け取りにいけばいい。支払いはもちろんスマホ決済で自動的に済んでしまう。

ラッキンコーヒーは「行列ができないカフェ」として、多くの人に歓迎され、急速に店舗数を伸ばし、スタートアップであるにも関わらず、すでに500店舗を展開している。

(中国で急成長しているラッキンコーヒーのモデル店。スマホで注文をするため、行列ができないカフェとして歓迎されている。原則、店内にレジがないので、カウンターもすっきりしている。)

ラッキンコーヒーは販売方式にIT技術を導入して、「レジの行列に並ぶ」というカフェにありがちな悪い体験を排除しただけではない。レジ要員が不要になるなどコストダウンができるため、ラッキンコーヒーによると「スターバックスよりも2割から3割高価な豆を使用」し、世界第3位のバリスタを招聘、中国人好みのコーヒーを研究し提供しているという。

さらに、専用アプリの中では「1杯買うと1杯無料」クーポンを大量に配布して、これがファンを拡大している。オフィスなどで「コーヒーおごるよ」といって、クーポンを使って2杯を注文し、取りに行って、1杯は同僚に渡す。同僚は無料でラッキンコーヒーを味わって、その美味しさに惹かれて新たなファンになるという広がりが生まれている。

(ラッキンコーヒーの専用アプリの注文画面。できあがり予想時間が表示されるので、それを見て、店に取りに行けばいい。店内で注文する場合は、先に席に座ってから注文。できあがるとプッシュ通知で教えてくれる。レジに並ばなくていいというのが最大の利点だ。)

専用アプリから注文させることで、このようなキャンペーンが簡単にできるようになったことも急成長の要因のひとつだ。

スタバが逆襲、ドリンクのテーマパーク
「リザーブ・ロースタリー」開店

しかし、世界中でセルフカフェブームを起こしたスタバが手をこまぬいているわけがない。スタバの逆襲が始まっている。

2017年12月、スターバックスは上海市に高級業態である「リザーブ・ロースタリー」を開店した。焙煎工場を中心としたドリンクのテーマパークだ。新鮮なコーヒーが飲めるだけでなく、紅茶や中国茶などさまざまなドリンクコーナーがあちこちにある。流行好きな上海の若者に人気で、すでに上海の観光名所ともなっていて、いつ行っても多くの人で賑わっている。

(スターバックスが上海市に昨年末にオープンした高級店「リザーブ・ロースタリー」。焙煎工場が併設されているので、最高品質のコーヒーを味わうことができる。)

(店内にはあちこちにカウンターコーナーがあり、中国茶や紅茶なども楽しむことができる。美味しい飲料の作り方などのイベントもほぼ毎日行われている。カフェというよりも飲料のテーマパーク。)

焙煎工場を上海に持ったということで、中国のスターバックスのコーヒーの品質もあがった。このリザーブ・ロースタリーは米シアトル市に次ぐ2店舗目で、それだけスタバが中国市場に力を入れているということがわかる。

さらに、スタバは中国アリババと業務提携をした。コーヒーの外売に対応したのだ。しかも、単なる外売サービスだけではなく、配達してもホットコーヒーは温度が下がらないように、コールドドリンクは温度が上がらないように、厳密な温度管理をする特別なパッケージを利用する。

(写真ではわかりづらいが、あらゆるものがきらきらと輝く高級感に溢れていて、初めて行った人は感動する。コーヒーも焙煎したての豆を使っているので、圧倒的に味が違う。)

さらに、浙江省杭州市のビジネスパーク「夢想小鎮」のスターバックスでは、近隣のオフィスビルに、ドローンで配送する出前を始めている。実証実験などではなく、正式運用されている営業運用だ。

(浙江省杭州市のビジネスパーク「夢想小鎮」のスターバックスでは、近隣のオフィスビルにドローン配送を行っている。スターバックスの逆襲が猛スピードで始まっている。)

どの分野でも競争が激しい中国市場、
中国都市独特の活気とエネルギーに

昨年あたりまでの中国のスタバは、圧倒的に中国市場の中で強いことにあぐらをかいて、中国人消費者のニーズへの対応も遅れがちだった。スマホ決済にも対応せず、出前サービスである外売にも対応せず、コーヒーの焙煎品質も米国に比べれば決して良好だったとは言えない。

そこに隙があると見たスタートアップのラッキンコーヒー、日系コンビニなどが一気にコーヒー市場に侵食してきた。

スタバはこれで目が覚めたようだ。昨年暮れの上海リザーブ・ロースタリー開店以降、中国市場に猛スピードで適応してきている。

中国市場は、どの分野でも競争が激しい。

息つく暇はなく、常に走り続けている。これが中国都市独特の活気とエネルギーになっているのだ。

原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)

テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

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