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「どこまで発展する!? 中国のびっくりIT最新事情」第3回中国人の「民度」を激変させた!?中国で受け入れられる社会信用スコア「芝麻信用」
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「どこまで発展する!? 中国のびっくりIT最新事情」第3回
中国人の「民度」を激変させた!?中国で受け入れられる社会信用スコア「芝麻信用」

2018.06.18

 
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中国でIT化が進む中、個人の信用度を民間会社がAIで点数化する仕組みができあがっている。中国人にとっては、不道徳な行為を働いた者が損をし、道徳的な人が得をするシステムとして受け入れられている。果たしてその実態とは!?

牧野武文

資産、収入、クレジット履歴などで、
AIが個人の信用度を点数化

中国では個人の信用度が点数化されている。最も有名なのは、アリババ系の「芝麻信用」(芝麻とはゴマのこと。ジーマ信用。セサミクレジット。ゴマ粒のように信用が積み重なっていくことからの命名)だ。

「身分特質」(社会的ステイタス)、「履約能力」(資産、収入)、「信用歴史」(クレジット履歴)、「人脈関係」(交友関係の信用スコア)、「行為偏好」(消費行動の偏り」の5つの観点で、人工知能が評価。総合得点を表示する。
総合得点は、最低で350点、最高で950点で、この点数によって様々な特典を受けることができるようになる。

最も身近なのは、一定得点以上だとホテルのデポジットが不要になる。中国ではホテルのチェックイン時に、クレジットカードを提示するか、数泊分の現金を預けるのが一般的。簡単に言えば、チェックアウトせずに逃げられた場合の予防、部屋の備品を壊された時の対応策だ。信用度が高い人は、このデポジットが不要になる。レンタカー、賃貸別荘などでもデポジットや敷金が不要になる。

また、中国では病院で治療を受ける際にもデポジットが必要だ。受付をすませて、簡単な診察を受けると、治療費の概算見積もりが提示され、デポジットを支払わないと治療が始まらないのだ。あまりにひどいと以前から社会問題になっていた。それが、信用スコアで一定得点以上があれば、デポジットを不要にする病院が増え始めている。

(スマホ決済アプリ「アリペイ」の中に芝麻信用の機能が組み込まれている。左下の「Zhima Credit」がそれだ。芝麻信用のスコアにより、分割払い、リボ払いなどの条件が変わってくる)

「道徳的な人が得をするシステム」として
公的機関が積極的に協力

さらに、公的機関も積極的に協力をしている。一定得点以上の人は、ビザの申請が簡素化される。また、出国時には専用の出国審査ゲートを利用して、スムーズに出国することができたりする。

なぜ、公的機関が積極的に協力するのか。この社会信用スコアが国の政策だからだ。中国人民銀行(中央銀行)は、8社を信用評価機関として認定をし、その8社に対して、政府が保有する市民のデータ(納税や交通違反金の支払いデータなど)を提供している。

では、なぜ中央政府は、ここまで社会信用スコアに力を入れるのか。以前の中国では、いわゆる「民度の低い」行為が横行していた。金を借りても返さずに逃げてしまう。借りたものを壊す、転売する。ホテルに泊まれば備品を盗む、部屋を汚す。消費者を騙して粗悪品を高く売りつける。日本では、このような状況を「民度」という言葉と結びつけて報道されることが多かったが、中国人はそれを民度の問題ではなく、社会システムの問題だと考えた。つまり、不道徳な行為を働いても、そのコストが低すぎるために、悪事が止まないのだと考えた。不道徳な行為を働いた者が損をし、道徳的な人が得をするシステムを作れば、このような問題は解決される。

それが社会信用スコアシステムで、2015年から各社がサービスをスタートさせて以来、わずか3年で、中国人の「民度」は激変をした。道徳的に行動することで、スコアがどんどん上がっていき、得をすることが多くなるからだ。最近では、結婚相手を探すときに、自分の芝麻信用のスコアを見せ合うというのが当たり前になっている。

プライバシーは守りながら、
自分の信用度を伝えることができる仕組み

日本人の感覚からすると、このような社会システムは、プライバシーの侵害であり、まるでジョージ・オーウェルの「1984」のような監視社会的な怖さを感じるかもしれない。もちろん、芝麻信用の場合、中央政府が主導していることもあり、いつなんどき、政治弾圧に利用されないとも限らない。そういう怖さはある。しかし、そこを別にすれば、日常生活の中では中国市民から歓迎をされている。

特に利便性が高いのが、ローンの申し込みが、一定得点以上であれば瞬時に行えるという点だ。日本の場合、自動車ローンや住宅ローンを組む場合、印鑑証明、納税証明、場合によっては健康診断書など、さまざまな書類を用意しなければならない。しかし、社会信用スコアがあれば、このようなことは一切不要だ。アリババは、自動車の自動販売機を各都市に出店している。スマートフォンから試乗の予約を入れ、その時間に行くと鍵を渡される。試乗をして気に入ったら、スマホの購入ボタンをタップ。芝麻信用のスコアに応じて、可能なローンのプランが表示されるので、問題がなければ購入。試乗車をそのまま家に乗って帰ることができる。あらゆることが簡素化され、スピーディーになっているのだ。

(アリババが展開している自動車の自動販売機。芝麻信用スコア750点以上(かなりの優良)であると、試乗をしてそのままローンを設定して購入まですることができる。ローンの書類審査などは一切必要ない)

また、多くの中国人が信用スコアをプライバシーの侵害だとは考えてなく、むしろ「プライバシーを保護しながら、信用度を社会活用できるシステム」と考えている。信用度といっても、公開されるのは得点のみで、その内容は公開されない。
この感覚は、日本人にとってのフェイスブックの実名公開のような感覚だ。ネットに実名を公開することで、未知の人からの連絡がつきやすくなる。しかし、住所や家族構成といったプライバシー情報まではネットでは公開しない。プライバシーを守りながら、連絡をつけやすくするという効果がフェイスブックにはある。

同じように、広い中国で、初めてあった人、あるいはネットだけでやりとりをする人と、信用スコアを伝えあうことで、安心感を得ることができる。信用スコアが極端に低い人は、点数の公開も嫌がるかもしれないが、平均以上の人であれば、公開することに問題を感じない。自分のプライバシーは守りながら、自分の信用度を他人に伝えることができる仕組みなのだ。

今後、ネットやビジネスが進化していくと、国境は溶けていき、言葉が違えば文化も違うという人と交流する機会が増えていく。そのとき、どうやって信用できる人を見極めるか。連絡先データに自分の信用スコアを添付して交換するのが当たり前になるというのは、決してSF小説の空想ではないように思う。

原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)

テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

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