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「どこまで発展する!? 中国のびっくりIT最新事情」第2回宅配便はドローンで!?中国で始まった「無人」「航空」「宅配ロッカー」の宅配物流革命
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「どこまで発展する!? 中国のびっくりIT最新事情」第2回
宅配便はドローンで!?中国で始まった「無人」「航空」「宅配ロッカー」の宅配物流革命

2018.05.17

 
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前回は中国で急速に進むキャッシュレス決済をとりあげたが、今回はこちらも日本のはるか先をゆく、ドローンや無人貨物航空機を使った中国の宅配物流技術と、その社会的背景についてお伝えしたい。

牧野武文

地球の宅配便の半分、401億件が中国の宅配便

この地球では、毎年800億個の宅配便が届けられている。2017年、中国の宅配便件数は401億件。なんと、この星の宅配便の半分は中国で届けられていることになる。さらに、中国には11月11日に「独身の日」がある。「独身の日」とは、お祭り騒ぎの大セールで、大多数の中国人がECサイトで爆買いをする。この日1日だけで、10億件以上の宅配便の需要が発生する。日本の宅配便件数が年間40億件であることを考えると、いくら人口が日本の10倍以上ある国だと言っても、ちょっと異常な状態だ。

実際、中国の宅配物流は常にパンク状態だ。各家庭に配達をする末端部分は、小規模業社が請け負うことが多いが、荷物が多すぎるのと、単価が安すぎて、物流業者の倒産がたびたびニュースになる。一方で、ドローン無人配送、自動運転車による無人配送、人工知能とロボットによる自動仕分けセンター、スマート宅配ロッカーなど、宅配物流に関する技術は急速に進んでいる。

中国の宅配物流は、常にギリギリの状態なので、このような進化が止まった時点で、物流網が崩壊しかねないのだ。近未来技術の導入は夢の物語ではなく、今の苦境から逃れる唯一の方法なのだ。これが中国社会を進化させる原動力になっていて、中国の強さの秘密にもなっている。

無人貨物航空機やドローンで宅配

大手宅配便企業「順豊」(日本ではSFエクスプレスという名称でサービスを提供している)は、貨物航空機、無人貨物航空機、ドローンを組み合わせて、全国ネットする計画を進めている。すで42機の貨物船用航空機を自社保有し、航空便で全国に配送を行っている。

(順豊が自社保有する貨物専用機は42機に達している(40機と記載されているが、この後、747ジャンボを2機購入している)この飛行機が全国を結び、36時間配送を実現する。写真は、順豊ウェブサイトの企業紹介ビデオより引用。http://www.sf-express.com)

そこから先は、従来はトラック輸送だったが、無人貨物飛行機AT200を自社開発し、これでドローン発着場まで輸送する。この無人貨物飛行機は、最大航行距離2000km、1.5トンの貨物が積載できる。

ドローン発着場から各家庭までは、航続距離数10kmから数100kmの各種ドローンにより配送する計画がすでに一部で始まっている。この計画により、順豊は中国全土で36時間以内配送を実現するとしている。

AT200やドローンは、高度1000m以下の低空を飛行する。そのため、大型航空機の飛行の妨げにはならず、今まであまり活用されていなかった空中資源を利用する。

(順豊が開発しているドローンは、形状、サイズなど多岐にわたる。すでに申請中、取得済み合わせて780の特許を保有している。このような小型ドローンが宅配ボックスに配送することになる。写真は、順豊ウェブサイトの企業紹介ビデオより引用。http://www.sf-express.com)

(順豊の仕分けセンターも無人化が進んでいる。中国の宅配企業では、拠点にある仕分けセンターの無人化が進んでいて、管理をするスタッフが数人というケースも珍しくなくなっている。写真は、順豊ウェブサイトの企業紹介ビデオより引用。http://www.sf-express.com)

航空輸送推進か陸上輸送推進か、政策判断に遅れ

ただし、まだまだ超えなければならないハードルはある。ひとつは安全性の問題だ。墜落、他の飛行物体との衝突などの危険性がある。このため、人口密度の低い地域から導入をしていく予定だ。墜落するという最悪の事態が起きても、人的被害の危険性が少ないからだ。

もうひとつは天候の問題。雨、風、そして中国特有の黄砂の嵐などで、航空機は飛行できなくなる。天候が荒れると、遅配が起きてしまう問題がある。

そして、最も大きな問題が、中央政府が航空輸送を推進するのか、トラックなどの地上輸送を推進するのか、どちらを優先させるのか政策判断がまだなされていないことだ。中国の現在の物流事情では、日本のようにあれもこれも支援するといった悠長なことをやっている余裕はなく、最も有望な方法にすべてを集中させて、一点突破をして前に進むしかない。中国共産党の機関紙である人民日報ですら、この政策判断の遅れが無人航空輸送への民間投資にブレーキをかけていると、批判的に論評するまでになっている。

スマホで鍵を開ける宅配ロッカーの設置進む

宅配ロッカーも都市部を中心に普及が進んでいる。ゲートコミュティ型のマンションで導入され始めているだけでなく、駅や広場といった公共の場所にも宅配ロッカーの設置が始まっている。

自分の都合のいい場所にあるロッカーを指定しておけば、自分宛の荷物が配送されるとスマートフォンに通知がくるので、スマートフォンを鍵として開けて、自分で持って帰るという方式だ。

中国の都市部では、戸建て住宅というのはほとんどなく、多くが集合住宅だ。しかし、古い集合住宅では、7、8階建てであっても、エレベーターがないケースが多い。これが宅配配送の効率を著しく低下させている。配送員は、受け持ち地区によっては、1日で高層ビルの階段を上り下りしたのと同じぐらい階段を上り下りするため、若く健康でないと務まらない。

このような事情があるため、宅配便企業は、宅配ロッカーを大量に設置して、ロッカーまで配送するように変えていこうとしている。

宅配ロッカー製造の大手「豊巣」では、すでにさまざまなタイプのスマートフォン対応宅配ロッカーを発売しているが、最新型は高さ4.2mのタワー型になっている。中にはエレベーターがあり、最大で600個の宅配便荷物を保管できる。また、タワーの上部はドローン発着場になっていて、ドローンで配送された荷物は自動でタワーの中に保存される。さらに、横には無人カート用の窓があり、無人カートで荷物を配送し、横づけ、自動で荷物を格納する。

(豊巣のスマート宅配ロッカー。少し見づらいが、マンションの塀の一部に設置をしているため、マンション住人だけでなく、近隣の人もこの宅配ロッカーを利用することになる。このようなパブリックな宅配ロッカーの普及が始まっている。写真は、豊巣ウェブサイトより引用。https://www.fcbox.com)

無人カートの開発も盛んで、アリババの本社がある杭州市の菜鳥物流では、すでに数km離れたアリババ本社と菜鳥物流の間の公道で無人カートの走行を行っている。一般の道路を走行し、ちゃんと赤信号で停止し、自動車やバイク、歩行者を認識すると、停止して安全を確保する。決められたルートを巡回するだけであれば、すでに実用レベルになっている。

また、同じ菜鳥物流では、屋内用のカートも開発していて、こちらはエレベーターに乗ることができ、部署内のメールや荷物を運搬しているという。

危機的状況に対応、
日本のはるか先を行く中国の宅配技術

中国の宅配物流は、有人の大型貨物航空機で全国をネット。空港から各地の拠点までは中型の無人航空機で輸送。そこからはドローンまたは無人カートで、スマート宅配ロッカーまで配送するということになる。

究極は、大型貨物航空機以外は、無人配送になるということだ。この無人配送ネットワークが完成するのは2025年頃と言われているが、もっと前倒しで実現すると見る専門家もいる。技術が思ったより早く開発できたこともあるが、前倒しで実現しないと、増え続ける宅配便に対応できず、パンクしてしまうということもあるようだ。

中国の宅配物流技術は、日本から見たら、はるかに先を行っている。しかし、それは先に進んで、効率をあげていかないと、宅配ネットワークが崩壊してしまうからなのだ。中国は、あらゆる分野で、崩壊しないために、最先端技術を活用し、未来に前のめりで進んでいく。昔に戻ることは許されないし、立ち止まることすら許されないのだ。

原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)

テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

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