ITエンジニアのための勉強会・イベントレポート情報メディア

知っていたらおじさん認定。アップル・レインボーロゴの秘密
trend

知っていたらおじさん認定。アップル・レインボーロゴの秘密

2018.05.28

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「アップルのロゴはレインボー」などと口にしたら、もうおじさん認定されてしまうほど、昔の話になっている。でも、おじさんはぜひ知っておいてほしいと願っている。アップルは、創業時から、ずっと革新を続けてきた企業だということを。

牧野武文

1998年まで使われていた懐かしのレインボーロゴ

MacBookの背面にあるスタイリッシュなアップルのロゴ。アップルの最初のロゴができたのは1976年。それから40年、実は6回もロゴを変更している。金属シャーシのiPhoneが登場するとロゴも金属っぽくするなど、重要な製品を発表するたびに、その製品のコンセプトを反映したロゴに変更している。

1977年から1998年までの22年間、アップルは6色を使ったロゴを使っていた。齧り跡のあるリンゴという形状は同じだが、カラフルなもので、通称レインボーロゴなどとも呼ばれている。

このロゴは、アップルの最初のヒット製品であるApple IIのイメージを反映したものだ。アップル IIは合計500万台も売れ、アップルはこの成功で株式上場を果たすことになる。

6色表示のApple IIは当時、革新的製品だった

Apple IIがヒットした原因はいくつもあるが、いちばん大きかったのは、280ドット×192ドットという高解像度で、6色ものカラー表示ができたということだ(初期モデルは4色)。

今から見るとびっくりするような低スペックだが、当時としてはありえない最先端ぶりだった。当時は、専用モニターにモノクロ表示というのが当たり前の時代で、家庭用テレビがモニターとして使え、しかも6色カラーというのは画期的すぎるコンピューターだった。iPodやiPhone、iPadなどの製品が登場した時と同じくらい衝撃的だったのだ。

これがあったため、Apple IIはゲームコンピューターとしてまず売れた。そこから「ミステリーハウス」などのキラーソフトが登場した。これでApple IIの市場が生まれ、世界最初のスプレッドシートソフト「VisiCalc」が登場し、Apple IIはパーソナルコンピューターの定番となっていく。

普通なら19.7Kのメモリーが必要なのに
8Kしか使わないApple II

なぜ、他社はカラー表示のコンピューターを作れなかったのか。一言で言えば、メモリーの価格が高すぎて、必要なビデオメモリーを搭載すると、価格が個人では買えないほど高くなってしまうのだ。

ビデオ映像を生成するには、まずメモリー上に色などを指定したデータを作り、これをビデオ信号に変換してテレビに出力する。計算を簡単にするために、8色表示させたいとしよう。すると、1ドットあたり3ビット(2×2×2=8)のメモリが必要になる。これが280ドット×192ドット分必要なのだから、合計で161280ビット=20160バイト=19.7K(注:1Kバイトは1024バイト)バイトのメモリーが必要になる。ちなみにモノクロ表示にしてもビデオメモリーは最低でも6.6Kバイト必要になる。

6色表示ができるApple IIは、なんと8Kバイトのビデオメモリーしか積んでいなかった。本来必要な容量の半分以下なのだ。

いったいどうやったのか?ここにチーフエンジニアであり、アップルの創業者の一人であるスティーブ・ウォズニアックの魔法があった。

補色のペアを組み合わせて、色と白を作る

ウォズが利用したのは補色のペアだった。補色とは混ぜ合わせると白になる組み合わせの色のことで、ウォズは(紫、緑)(青、橙)という2つの補色ペアを利用した。

(ウォズは、横一列の7ドットをひとつの単位として考えた。先頭のビットが0の場合は(紫、緑)が、1の場合は(青、橙)がセットされる。残りの7ビットでどのドットを点灯するかを指定する。これで7ドット分の色を8ビット=1バイトで指定できることになった。)

横並びの2ドットを一単位として考え、(紫、緑)を両方点灯すると、遠目には白く見え、(紫、×)にすれば紫に見え、(×、緑)にすれば緑に見え、(×、×)と両方消灯すると黒になる。同様に(青、橙)のペアを使えば、白、青、橙、黒が表示でき、合計6色が表現できることになる。

(色のペアはいずれも補色なので、全部を点灯すると、遠目からは白に見える。全部を消灯すると黒になる。これで、6色のカラー表示が可能になった。高価なビデオメモリーを通常のやり方の半分しか使わない。)

実際には7ドットがひとつの単位として扱われた。1バイト=8ビットの先頭ビットで(紫、緑)(青、橙)のいずれのペアを使う方を指定、そして7ドットを「紫、緑、紫、緑、紫、緑、紫」と点灯するように回路を作っておき、あとは残り7ビットでどのドットを点灯するかを指定する。例えば「1010101」とすれば紫だけが点灯して、「1111111」とすれば、すべて点灯して白に見えるというわけだ。

わずか7.5Kバイトしか使わないウォズの魔法

このウォズのテクニックでは、どのくらいのビデオメモリーが必要になるだろうか。7ドット分を指定するのに8ビット=1バイトが必要になる。画面の280ドット×192ドットに7ドットの列は40列×192ドットが必要なので、7680バイト=7.5Kバイトで済むことになる。Apple IIが搭載している8Kバイトのビデオメモリーでじゅうぶん間に合うことになる。

紫などの単色を表示するとき、全ドットが点灯するのではなく、1ドットおきに点灯することになるが、これがスクリーントーンのような効果をもたらして、Apple II独特の色彩表現となった。

アップルは創業当時からずっと革新的だった

その後、スティーブ・ジョブズが中心となって、アイコンをマウスで操作するという画期的な操作法のパーソナルコンピューターMacintoshが発売され、それがiMac、iPod、iPhone、iPadと革新的な製品が続々と生まれてくる。このアップルの革新の原点が、カラー表示可能なApple IIだった。

1998年、アップルに復帰をしたスティーブ・ジョブズが、ボンダイブルーの半透明筐体のiMacを発売。レインボーロゴは時代の役目を終えたとして、アップルロゴも、iMacのイメージに合わせ、透明感のあるボンダイブルー色のものに変更される。これ以降、「齧り跡のリンゴ」という形は変わらないものの、単色のロゴになっていく。

アップルは昔から製品にロゴのステッカーを同梱していた。アップルユーザーは、嬉々として、このステッカーを自分の持ち物に貼っていた。オールドユーザーにとっては、未だにアップルのロゴと言えば、レインボーロゴを思い浮かべてしまう。
しかし、レインボーロゴがなくなってから、もう20年。大学生ももはやリアタイ世代ではなくなっている。「アップルのロゴはレインボー」などと口にしたら、もうおじさん認定されてしまうほど、昔の話になっている。でも、おじさんはぜひ知っておいてほしいと願っている。アップルは、創業時から、ずっと革新を続けてきた企業だということを。

原稿:牧野武文(まきの・たけふみ)

テクノロジーと生活の関係を考えるITジャーナリスト。著書に「Macの知恵の実」「ゼロからわかるインドの数学」「Googleの正体」「論語なう」「街角スローガンから見た中国人民の常識」「レトロハッカーズ」「横井軍平伝」など。

知っていたらおじさん認定。アップル・レインボーロゴの秘密

この記事はどうでしたか?

おすすめの記事

キャリアを考える

BACK TO TOP ∧

FOLLOW