ITエンジニアのための勉強会・イベントレポート情報メディア

SF映画の空中ディスプレイが実現?~プロジェクションディスプレイ技術研究会2017
event

SF映画の空中ディスプレイが実現?
~プロジェクションディスプレイ技術研究会2017

2017.12.14

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

何もない空間に浮ぶディスプレイを操作する主人公。近未来を描いたSF映画などでよく見かけるシーンです。映画やアニメではお馴染みのこの「空中ディスプレイ」、実用化に向けて研究が進んでいるってご存じでしたか? プロジェクションディスプレイの最新技術を発表する「プロジェクションディスプレイ技術研究会2017」に行ってきました。

Misa

プロジェクションディスプレイ技術研究会とは

今回の会場は東京大学 生産技術研究所コンベンションホール。何と日本の最高学府のひとつである東京大学(目黒区駒場Ⅱキャンパス)の中です。あいにくの雨模様ですが、みどり豊かなキャンパス内のコンベンションホールをめざします。

「プロジェクションディスプレイ技術研究会」はその名のとおり、プロジェクションディスプレイにフォーカスした技術研究会で、ディスプレイ国際ワークショップ(IDW) PRJ (Projection and Large-Area Displays and Their Components) ワークショップの分科会です。IDWは国際学会で標準語が英語なので少し敷居が高めですが、プロジェクションディスプレイ技術研究会は研究者以外の人も比較的参加しやすいということで、取材してみました。このようにプロジェクションディスプレイの最新技術が日本語で発表される場は希少だそうです。

プロジェクションディスプレイ技術研究会の母体にあたる「ディスプレイ国際ワークショップ(IDW)」は、プロジェクション技術に関する世界有数の国際会議で、ウェアラブル・アプリケーション、車載ディスプレイ技術、ヘッドライト、固体素子光源、ホログラム、短焦点光学系、プロジェクションマッピング、AR(拡張現実)、3D計測、ウェアラブル/新光源の標準化などの最新のプロジェクション技術が発表されます。

今回の分科会はプロジェクションに関する講演プログラムとデモ展示があり、最新のプロジェクションディスプレイ技術に触れることができるイベントとなりました。

講演プログラム発表者
ダイナミックプロジェクションマッピングのデザイン 渡辺 義浩(東京大学)
プロジェクション技術が拓く空中ディスプレイの展開 山本 裕紹(宇都宮大学)
タッチ機能付きポータブル超短焦点プロジェクターXperiaTouchの開発 宮川 健太(ソニー)
VR酔いの人間工学的指針策定に向けた研究開発 氏家 弘裕(産業技術総合研究所)
ISAL2017:自動車用ライティング動向 岩本 滋人(本田技術研究所)
自動車用ヘッドライト技術 朝日 雅博(マツダ)
2017年マイクロLED産業動向とVR/AR用途の可能性 沖本 真也(グローバルインフォメーション)
電子ディスプレイ分野でのIEC国際標準化動向 倉重 牧夫(大日本印刷)
海外プロジェクションマッピングの特徴と最新動向
~ギネス認定・世界最大プロジェクションマッピングの衝撃~
吉田 ひさよ(ヘキサゴンジャパン)

プロジェクション技術が拓く
空中ディスプレイの展開

講演プログラムの中から、空中ディスプレイの実現に向けて研究されている宇都宮大学 山本裕紹先生の講演を受講しました。SF映画などに登場する「夢のディスプレイ」のプロトタイプの、空間プロジェクションでの実現をめざす研究の発表です。

宇都宮大学大学院工学研究科先端光工学専攻 准教授 山本裕紹先生 博士(情報理工学)

「ディスプレイ」という言葉には、テレビ、商品の陳列、デジタルサイネージなど幅広いものが含まれ、人類最古のディスプレイは何万年も前の壁画で、危険な動物の姿を仲間に知らせるために描かれたものといわれています。つまり、ディスプレイとは頭の中にある情報を誰かに伝えるために、可視化して表現する手段であるといえます。

●人間はどのように奥行きを知覚しているか?

私たちは、輻輳(ふくそう、輻輳眼球運動の略。両目が同時に内側を向く目の動き)、両眼視差(奥行きのある対象を見たときに左右の網膜像に生じるわずかな差異)、ピント調節、運動視差(身体・視線方向の変化によって、視野中の対象物の位置が変化すること)によって奥行きを知覚しています。こういった生理的な要因だけでなく、大きさ、重なり、重なりと大きさ、陰影、かすみ、模様の勾配、パースペクティブ(遠近感)などの状況を手がかりとして、心理的にも奥行きを判断しています。

●「夢のディスプレイ」実現への取り組みと活用

スターウォーズやマイノリティレポートなどのSF映画で登場する「夢のディスプレイ」は、透明である、空中に浮いている、移動できる、積層する(重ねる)という特徴があります。こういったディスプレイ技術の実現に取り組んでいます。
高い現実感、自由な視点位置、物理的な接触がないという特徴をいかし、高速道路の逆走防止の看板をつくりたいと考えています。逆走している車からは看板を認識できますが、正しい走行車は普通に通り抜けられるというイメージです。実現には、広い視野角、文字の可読性、大型化可能な構造が必要になります。

徳島大学に18年間在職した縁で、日亜化学工業株式会社のフルカラーLEDを3Dにする研究に取り組んできました。周囲の屈折率が高い環境で生息するザリガニの眼の構造を模した反射型結像光学素子(光学素子:ミラー・レンズ・プリズム・フィルタなど)、CMA(Crossed-Mirror Array)を製作しました。

LEDランプには発光しない領域があり、滑らかな画像のためには大量のLEDランプが必要になるのがLEDサイネージの問題点ですが、発光しない黒領域の塗りつぶし、粒度感の減少、色の混合により可読性を向上させ、LEDランプを減少させることができました。また、収束実験により、空中LED像1.5m、LED1mのとき、左右の目が安定して空中LED像に調節されることを確認しました。

CMAは遠赤外線の熱を収束し、空中ヒーターを形成することができます。
これを活用して、映像と一緒に熱を伝える温かい食べ物の看板や視覚障害者への注意喚起に使えるのではないかと考えています。ネオン管や白熱灯などの熱を発する照明が再注目されるかもしれません。

●再帰反射素子による空中結像 AIRR(Aerial Imaging by Retro-Reflection)
もうひとつは、再帰反射素子(道路標識や救命胴衣に利用されている光源に光を帰す特徴をもつ素材)をキーデバイスとした研究です。こちらはもっと簡単に製作できます。

光源からの光はハーフミラーで反射し、戻るときに虚像を作りますが、そこに再帰反射シートを置くことで、虚像(鏡やレンズなどに発散させられた光線によって結ばれる像)が、実像(反射・屈折した光が実際に交わって作られる像)に変わります。

これを利用してプロジェクターと再帰反射素子を使い、テーブル上やガラスの前などの何もない空中に映像スクリーンを形成することができます。3次元スクリーンを使った3D画像や、2台のプロジェクターを使った対面空中スクリーンも作れます。

AIRRと赤外線の収束を複合させたデモでは、空中に投影された炎の熱を感じる体験をすることができました。

デモ展示・プロジェクションディスプレイ関連の
最新技術

ロビーでは、プロジェクションディスプレイ関連のデモ展示が行われていました。

•空中ディスプレイ(宇都宮大学)
ヒーターの熱を収束し、AIRRにより投影された炎を温かく感じる空中ディスプレイ。
•光学シミュレーション技術をHUD開発シミュレーション(OPTIS JAPAN)
3D CADのデータから光学解析するシミュレーションソフト。自動車などの製品開発のシミュレーションに利用。
•Xperia Touch(エクスペリア タッチ)(ソニー)
Android OSを搭載し、赤外線の感知で接触した個所を認識するタッチプロジェクター。
•高速プロジェクター(東京大学・東京エレクトロンデバイス)
従来の約10倍の速度でのトラッキング、投影を実現する高速プロジェクター。3次元計測やプロジェクションマッピングなどの用途を想定。
•光学シミュレーションソフト (サイバネットシステム)
CADのデータから照明の機能や製品の形状、質感などを光学シミュレートするソフト。
•Coherent DILAS社製 ダイオードレーザー(ルクスレイ)
材料加工、印刷、プロジェクションから医療・防衛などの幅広いアプリケーションに利用されるダイオードレーザー。
•HUDユニット用マルチカラーLCDモジュール(スタンレー電気)
ヘッドアップディスプレイ(HUD)用のセグメント表示用のディスプレイと高輝度バックライトのマルチカラーモジュール。

空中ディスプレイ実用化に向け、
ITエンジニアの役割も?

プロジェクションディスプレイ技術は、ITとは少し離れた分野と思っていましたが、参加して印象が変わりました。遠い未来か夢物語のように感じていた空中ディスプレイが、実は「実用化目前の技術」であることにも驚きました。
山本先生のお話にあったように、「ディスプレイは情報を可視化して誰かに伝える手段」であり、ITとユーザーをつなぐ窓口の役割も果たしています。たとえば、東京オリンピックに向けて整備が進められている、効果的な「おもてなし」でも、こうした先端技術の活用が重要になるのではないでしょうか。そこでは、ITエンジニアにも何らかの役割が生まれると思います。
「この技術にITを絡めたら?」と積極的に考えることがシナジーにつながります。ITの最新技術を学ぶことはもちろん大切ですが、ときには他の分野の先端領域に触れて刺激を受けましょう!

原稿: Misa
ITベンチャーで企画、人材開発、広報などを経て独立。現在はコンサルタント、ときどきライター。ライターとしては、IT系以外、アニメ・マンガ、車から美容・健康まで何でもチャレンジ中。

SF映画の空中ディスプレイが実現?~プロジェクションディスプレイ技術研究会2017

この記事はどうでしたか?

おすすめの記事

キャリアを考える

BACK TO TOP ∧

FOLLOW