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Twitterのジャック・ドーシーCEOが「第二のジョブズ」と期待されるわけ
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Twitterのジャック・ドーシーCEOが「第二のジョブズ」と期待されるわけ

2017.09.08

 
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カリスマ的な人気を集める起業家でありながら、表舞台に出てくることが少ないジャック・ドーシー氏のインタビュー・イベントがシリコンバレーで行われました。ビットコインに代表されるデジタル通貨が台頭する中、8年前にお金や金融システムを変える取り組みに乗り出したSquareの創業者としてドーシー氏にスポットライトを当てるイベントでしたが、同氏の生い立ちから起業家の心得まで広範にわたるトークになりました。

山下洋一

若い層からカリスマ的な支持

世界的にデジタル通貨への注目が世界的に高まる中で、クレジットカードと現金が抱える問題の解決に、いち早く取り組んで成長してきた米Squareの共同創設者であるジャック・ドーシー氏(CEO)のインタビュー・イベントがシリコンバレーで行われました。同氏はTwitterの共同創設者、そして現CEOでもあります。
ここ数年Twitterの苦戦が続いているので、CEOであるドーシーのことを、さえない経営者と思っている人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。同氏は、シリコンバレーやテクノロジー業界の若者たちの間で絶大な人気を持つ起業家の一人です。それは彼が「哲学的な起業家」と呼ばれる、ちょっと変わった、いや、かなり変わった起業家であるのが理由の一つでしょう。インタビューは、そんなドーシー氏の起業家像を浮き彫りにするような内容になりました。

音楽・アート好き、大学ドロップアウト

シリコンバレーの起業家の変わり者というと、多くの人が真っ先に思い浮かべるのが、故スティーブ・ジョブズ氏ではないでしょうか。ジョブズ氏を失ったテクノロジー産業で「第二のジョブズ」という話題になった時に、Teslaのイーロン・マスク氏と共によく名前が挙げられるのがドーシー氏です。
ジョブズ氏がAppleとPixarを成功させたように、ドーシー氏もTwitterとSquareという二つの起業を成功させました。そして自分が起業した企業で一度は実権を奪われ(ジョブズ氏はApple、ドーシー氏はTwitter)、再びCEOに復帰というところまで同じです。
でも、ドーシー氏がジョブズ氏に重ねられる理由は、そんな表面的な共通点ではなく、生い立ち、考え方や思想といった内面の共通点にあります。まず、好奇心にあふれた人物であること。ミズーリ州のセントルイスで育ったドーシー氏は、独学でプログラミングを学び、高校生の時にタクシーの配車システムに興味を持ち、独自の自転車配達サービスを手がけていました。Appleを作る前のジョブズ氏が電話回線をハッキングして無料で世界中どこにでも通話できる「ブルーボックス」を作っていたのと似ています。

アジア文化に関心を持っていて、日本好きというのもジョブズ氏と共有点、
普通に「わび・さび」という言葉を繰り出します。

ドーシー氏は、プログラミングに関しては高校時代から飛び抜けた才能を発揮していました。でも、自身をプログラマーや起業家と思ったことは一度もないそうです。そして「作りたいものを作った、ただそれだけ」と述べています。若い頃のドーシー氏の写真を見ると、色を抜いてカラフルに染めた髪を立てたパンク好きの若者でした。音楽やアートが好きで、アーティストへの強い憧れを抱いていて、「どんな仕事を通してでも、誰でもアーティストになれる」を信条としています。
アートや音楽と起業家というと、ジョブズ氏が強い関心を持っていたのは有名な話です。それがAppleの製品作りにも色濃く反映されてきました。よく皮肉を込めて「ジョブズ氏はエンジニアではない」と言う人がいますが、同氏のビジョナリーとしての才能は疑う余地がありません。また、ジョブズ氏が技術者ではなかったからこそ、人間中心のデザインが求められ、シンプルに操作できる数々のアップル製品が誕生しました。
ジョブズ氏を語る上で必ず登場するのがMicrosoftのビル・ゲイツ氏という強力なライバルですが、ドーシー氏にもFacebookのマーク・ザッカバーグ氏という互いを認めるライバルが存在します。この四人は全員大学ドロップアウトです。でも、ゲイツ氏とザッカバーグ氏がハーバード大学に通って大学の寮で起業した華麗なドロップアウトであるのに対して、ジョブズ氏とドーシー氏はアイビーリーグではない普通の大学に通い、しかも大学にはなじめずに社会に出て起業しました。

人や社会の観察から生まれるアイディア

ドーシー氏が二つの起業を成功させられた理由を一つ挙げるとするなら、優れた「洞察力」でしょう。Squareはクレジットカード決済や短期の少額融資など、主にビジネスを顧客とした事業を行っています。でも、ドーシー氏はビジネスとビジネスの付き合いだとは考えていません。「私たちは、私たちの顧客の顧客である」と述べていました。
Squareを始めたのは、ドーシー氏の古くからの友人であったジム・マッケルビー氏が吹きガラスの会社を始めた際に、顧客のクレジットカードに対応できないことが大きな痛手になっていたためでした。個人やスモールビジネスがクレジットカードの決済システムに申し込んでも承認されるのは3割程度です。クレジットカード決済に対応できずに、作品に興味を持ってくれた人たちを、顧客にできなかった悩みをマッケルビー氏から聞いたドーシー氏は、多くの人が使うクレジットカードを一部のビジネスしか受け付けられない矛盾に気づき、原因とソリューションを考え、アイディアを試し、そしてスマートフォンをPOSシステムに変えるサービスにたどり着きました。誰でもクレジットカードの支払いを受け付けられるようにすることで、たくさんの人にビジネスチャンスが広がります。それはまた、普段ドーシー氏が通っている小さなカフェや、のみの市などが、もっと便利に使えるようになることを意味します。だから「自分たちは顧客の顧客」なのです。

イベントのタイトルは「Squareのような発想」

ドーシー氏が手がける事業は全て、人々や社会をよく観察し、問題点を見いだすところから始まっています。そうして生み出した製品やサービスがどんなに「素晴らしいか」とか、誰が「発明者か」といった評価は無用です。ソリューションがうまく機能し、人々の生活や社会が良い方向に変わっていくことが、ドーシー氏にとって重要なのです。

ブロックチェーンは未来を切り開くカギ

そんなドーシー氏が今、期待している技術が仮想通貨の根幹となっている分散型台帳「ブロックチェーン」です。Squareはいち早くビットコインに対応しましたが、仮想通貨のプロトコルとして注目しているのではありません。ブロックチェーンが非中央集権的な仕組みだからです。
「金融は(ブロックチェーンの)明白な可能性の一つだけど、金融関連に限らず、 (ブロックチェーンを使って)私たちが解決を手助けできる問題はたくさんあります」 とドーシー氏。
ブロックチェーンを活用すれば、中央で管理する人がいなくても色々なアプリケーションが作れます。もちろんまだ成熟していない技術なので、ビットコインの処理速度のような問題も起こってしまいます。セキュリティ要件や安全を確認する方法も定まっていません。
トラブルも覚悟で、将来の可能性を見通して、技術的な成長を支えていかなければならない段階です。草創期のインターネットに近いと言えるでしょう。今の段階でブロックチェーンの価値を示したビットコインのようなデジタル通貨は、差し詰めインターネットにおける電子メールのような存在です。メール、そしてブラウザでホームページを閲覧するだけだった初期のインターネットから混沌とした時期を経て、Web 2.0以降にショッピング、エンターテインメント、ゲーム、ファイナンス、人のコミュニティなど、様々な分野でウェブが活用されるようになりました。ブロックチェーンも今は不便なことが多く、スケーラビリティも限られますが、いずれ速度や利便性が改善されたら、様々な用途を支える技術になるでしょう。その頃には、デジタル通貨のプロトコルとは呼ばれないはずです。
ただ、今ビットコインが望ましい形で使われているかというと、ドーシー氏は疑問符を付けます。最近デジタル通貨のことを全く知らない親戚や友達からデジタル通貨の買い方を聞かれるようになったそうです。デジタルに興味がない人でも知っているのだから、その知名度の上昇に驚かされますが、「儲けるチャンスなんでしょ?」というように、金や株と同じ投資の対象として関心を持っている人ばかり。スマートフォンだけの処理で簡単に買い物の代金を支払えるとか、遠くの人に短時間で送金できるというような、デジタル通貨としての可能性に興味を持っている人は、ほとんどいません。話題のビットコインでもそのような状況ですから、ブロックチェーンが本当の価値を開花させられるまで、もうしばらくかかるでしょう。でも、いずれブロックチェーンは「新たな未来を切り開く重要なカギになる」と明言していました。

原稿: 山下洋一
サブカルチャーとテクノロジーの交差点に軸足を置いて、人や会社、文化、時事問題など幅広く取材しています。シリコンバレーで暮らし始めて10数年。PC産業の街がウェブ・ITの一大拠点に姿を変えるのを目の当たりにしてきました。ダイナミズムと人の面白さに魅了されて、このカリフォルニアの田舎街から離れられずにいます。

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