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優れたエンジニアを引き付けているテック企業・スタートアップは?
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優れたエンジニアを引き付けているテック企業・スタートアップは?

2017.08.09

 
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Paysaが2017年度 (2016年4月〜2017年4月)のテクノロジー企業のCompanyRankレポートをリリースしました。同社は、ソーシャルアクティビティや履歴書、求人動向、転職動向などを収集・分析、機械学習を用いて能力のある人材を引き付ける企業の力をスコア化しています。テクノロジー産業において勢いのある企業・スタートアップ、成長しそうな分野を見極める指標として注目されています。

山下洋一

4億ドルのヘッドハント

囲碁の世界チャンピオンを圧倒して話題を呼んだ「AlphaGo」。そのプログラムを開発した英AI企業のDeepMindは、2014年に4億ドル以上でGoogleに買収されました。Googleが買収を持ちかけた時に、DeepMindの共同創業者CEOであるデミス・ハサビス氏は、苦労して資金を集めてようやく手にした自分の城を手放すつもりはありませんでした。ハサビス氏は自らの手で次代のGoogleを作りたかったのです。しかし、当時Google CEOだったラリー・ペイジ氏と会って、同氏から次のように説得されたそうです。

「私はGoogleを作り上げるのに15年を費やした。それは大変な経験だった。経験を要すること、そして幸運なことも、様々なことが起こった。そんな苦労を避けて、自分のミッションに集中できる近道があるのに、なぜその基盤をうまく利用しないんだ」。スタートアップ運営のためにAI研究に十分な時間を割けていなかったハサビス氏は、ペイジ氏の言葉で翻意しました。

現代の囲碁で最強と呼ばれる柯潔九段に完勝し、囲碁から引退。
昨年・今年と囲碁を通じてAIの力を強烈にアピールした「AlphaGo」

シリコンバレーの特徴の1つに、エンジニアの流れ、世代交代のペースが速いことが挙げられます。血を入れ替えるかのように若い才能に活躍の場を提供し、変化し続けることで、時代やその時に求められるテクノロジーが変わっても、変わらずイノベーションを生み出せる場であり続けています。

見方を変えると、シリコンバレーにおける優れたエンジニアの動きを知ることで、テクノロジー産業の潮流を予測することができます。

CompanyRank 1位はUberだが…

雇用に関するデータを収集・分析・提供するPaysaが、2017年度 (2016年4月〜2017年4月)のテクノロジー企業のCompanyRankレポートをリリースしました。CompanyRankは、ソーシャルアクティビティや履歴書、求人動向、転職動向などを収集・分析、機械学習を用いて能力のある人材を引き付ける企業のトレンドをランキング形式で紹介しています。

2017年度のトップ5は、1. Uber、2. Airbnb、3. Google、4. Snap、5. Facebookでした。

CompanyRankスコアの1位はUber。オンデマンドエコノミー、そして自動運転カーの開発でも市場をけん引するが、2017年に入ってから企業倫理の問題で創業者CEOが休職するというトラブルに直面している。

CompanyRankスコアでは、トップランクの企業に勤めていた社員が下位のスタートアップに転職した場合に、獲得したスタートアップのスコアがグンと上昇します。逆に社員の退職で空いたポジションを低いランクの会社からの採用で補った場合はスコアがダウンする可能性があります。会社が成長する勢いや今後の成長が期待される分野が表れるため、Paysaのランキングではトップランキングよりも順位の変化に注目が集まります。

今年収穫の時期を迎えそうなスタートアップ

トップ100の中で、前年度からスコアの伸び率の上位5社は次の通りです。

  • 1. Slack (95%増)
  • 2. Twitch (84%増)
  • 3. Spotify (82%増)
  • 4. Magic Leap (81%増)
  • 5. Jet (79%増)

トップ100では、それぞれ21位、20位、22位、68位、100位ですが、Slackはエンジニアのチームコミュニケーションツールを変え、Spotifyは上場間近、Magic LeapはMR市場の開拓が期待され、JetはAmazonに対抗し得るAIを活用したオンラインストアとして注目されています。いずれもスタートアップから開花し、今年から来年に大きな収穫を実現できるかが問われている企業です。

トップ100より下位を含む全体に視点を広げると、投資ロボアドバイザーのBetterment、インサイトプラットフォームのQualtrics、ユーザー生成ゲーミングコミュニティのRoblox、マッチングサービスのTinder、オンラインビデオクラスのUdacity、食材宅配サービスのBlue Apron、コワーキングオフィスのWeWorkなどが大きく順位を上げました。これらはトップ100入りを逃したものの、FacebookやUber、Snapのように社会を変える可能性を秘めたスタートアップです。さらにPaysaはスコアの変動から、注目の分野、開花しそうな会社として、パーソナルローンのAvantや、DNAスクリーニングのCounsyl、情報技術のProsper Marketplace、NoSQLベンダーのCouchbase、モバイルセキュリティのLookout、コーディングブートキャンプのGeneral Assemblyなどを挙げています。

人材の流出に直面する分野は?

逆に前年度からポイントを下げた会社は、1. Coursera (175%減)、2. Groupon (127%減)、3. SolarCity (121%減)、4. Zenefits (114%減)、5. Nest Labs (88%減)でした。トップ100の3位であるGoogleが50%減で下げランキングでも16位になっています。Googleの社員は、Facebook、Uber、Microsoft、Apple、Amazonに流れています。その一方で、オンラインコースのCoursera、投資ロボアドバイザーのWealthfront、デジタルHRプラットフォームのZenefitsなど、ポイントを下げたスタートアップからの移籍先のほとんどにGoogleが含まれており、「AIファースト」に舵を切るGoogleが変化の時期を迎えているのが分かります。そして半導体産業のトップ企業であり続けたIntelが11位 (66%減)でした。PCが減速し、データセンター向けが着実に成長しているものの、機械学習分野はNVIDIAのGPU、モバイルはARMベースのプロセッサがトレンドとなっている影響が現れています。

ここ最近テクノロジー産業では、GoogleやFacebook、Amazon、Apple、Microsoftといったプラットフォームを持つIT分野の大企業への集中が目立ちました。その傾向は続いているものの、CompanyRankレポートからは、これからの成長が期待される市場、大胆な取り組みを行うスタートアップに能力のある人材が集まり始めた傾向も読み取れます。「安定より挑戦」と呼べる段階ではないものの、歴史的にシリコンバレーは混乱の時期や低迷期に新たな芽を芽吹かせてきました。テクノロジースタートアップのダイナミズムが色濃くなり始めています。

原稿: 山下洋一
サブカルチャーとテクノロジーの交差点に軸足を置いて、人や会社、文化、時事問題など幅広く取材しています。シリコンバレーで暮らし始めて10数年。PC産業の街がウェブ・ITの一大拠点に姿を変えるのを目の当たりにしてきました。ダイナミズムと人の面白さに魅了されて、このカリフォルニアの田舎街から離れられずにいます。

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