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ギグ・エコノミーの成長、できるフリーランスに必要なもの
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ギグ・エコノミーの成長、できるフリーランスに必要なもの

2017.08.04

 
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オンデマンドサービスのプラットフォームの成長、ギグ・エコノミーの拡大によって、今後数年の間に、働き方のフリーランス化に加速がつくと予測されています。それは知識や技量を持った個人にとってチャンスですが、実力を発揮できる環境が整っているとは言いがたいのが現実です。そこでBehanceを成功させたスコット・ベルスキー氏が、フリーランスと顧客を結ぶ信頼ベースのネットワーク・サービスを開始しました。

山下洋一

加速する仕事のフリーランス化

「ギグ・エコノミー(gig economy)」の成長によって、2020年までに米国の労働力の40%がフリーランスになるとIntuitが予想しています。そのペースは加速していて、Freelancers Unionのデータだとすでに35%に達しています。

ギグは、ジャズやロックといった音楽シーンで使われていたミュージシャンが演奏する場所ごとに契約する演奏形態です。ギグ・エコノミーは、それをシェアリング・エコノミーに当てはめた新語です。単発の仕事を受けるフリーランスの就業形態を指します。配車サービスのUber、民泊仲介のAirbnb、便利屋サービスのTaskRabbitなど、個人がモバイル端末だけで仕事を請け負えるオンデマンドサービスのプラットフォームの成長によって、ギグ・エコノミーが急速に拡大しています。

完全独立が難しい現実

40%またはそれ以上の労働者がフリーランスになる将来、人々はより幸福に働けるようになるのでしょうか。残念ながら、そんな未来を想像しにくいのが現実です。会計士、弁護士、プログラマー、セラピスト、パーソナルトレーナー、家庭教師、家事代行、スタイリスト、技術や専門知識に長けた様々なプロフェッショナルが存在します。ところが、その多くはギグ・エコノミーのプラットフォームを活用するのではなく、今でも企業や店、またはエージェンシーと契約しています。

フリーランスに仕事を頼みにくい現実

クリエイター向けのソーシャルネットワーク「Behance」を成功させ(Adobeが買収)、ベンチャーキャピタルBenchmarkのパートナーを務めるスコット・ベルスキー氏は、「信頼関係」の構築というニーズが満たされていないからだと指摘します。たとえば、ベビーシッターは子供を他人に預け、会計士や弁護士には個人情報や財産の管理を任せるのだから、選択は慎重になります。アプリの5つ星レビューを見て、ポンと選ぶというわけにはいきません。サービスを提供する個人と、サービスを必要とする人たちを効率的に結ぶサービスが有効であるのは、UberやAirbnbなどいくつかのオンデマンドサービスの成功が証明しています。でも、それが会計士や弁護士といったプロフェッショナルサービスに広がらないのは、確かな信頼を担保する仕組みが組み込まれていないから。技量に優れ、誠実にサービスを提供していても、サービスを受けたことがない人にそれらを伝えるのは難しく、企業やエージェンシーの看板に頼らざるを得ないのが現状です。しかし、企業や店に所属すると自由は制限され、エージェンシーには少なからず仲介料金を取られます。

そんな古いスタイルから、プロフェッショナルのシェアリング・エコノミーへの移行を支援するために、ベルスキー氏が「Prefer」という新サービスを開始しました。専門的なサービスを提供する人たちと、そうしたサービスを必要とする人たちを結ぶ紹介(referrals)ネットワークです。

大きくサービスを展開するのではなく、小さく集中的に始めるのがスタートアップのサービス立ち上げの鉄則、現時点でPreferはニューヨーク市のみ、招待制で提供されています。

信頼できるプロを見つけられるネットワーク

ベルスキー氏がPreferを手がけたのは、友人の紹介で治療を受けたマッサージセラピストが、クライアント獲得に苦労してエージェンシーと契約し、仲介料として売上の30%を支払っていると知ったのがきっかけでした。腕前は素晴らしく、好感を持てるサービスで、「ソーシャルグラフとモバイルペイメントが普及している時代に、優れた技量を持つプロフェッショナルがなぜ自身のクライアント・ベースを拡大し、個人でビジネスを管理できないのか」というわけです。

Preferのキーポイントは「信頼関係」です。アドレス帳に基づいて、友達や家族、職場の同僚など信頼できる人のネットワークを構築します。利用者がスマートフォンを使ってプロフェッショナルを探すと、利用者のネットワークの中で友達や同僚などから勧められているプロフェッショナルだけが検索結果に現れます。そうしたサービスプロフェッショナルの信頼を裏付ける友達や知り合いのつながりを、ベルスキー氏は「紹介グラフ(Referral Graph)」と呼んでいます。スケジュールを確認して予約、支払いはスマートフォンのペイメント方法を利用可能。消費者の料金は無料。ビジネス側は、クレジットカードのマーチャントへの支払いが3%、新しいクライアントの予約に売上の2%を支払います。

「リアルのつながり」をサービスに生かす

テレビやインターネットの広告よりも友達からの情報を信頼する人が圧倒的に多いことが様々な調査で明らかになっています。だからといって、ソーシャルグラフからの情報が同じように信頼できるかというと、会ったことがあるけど普段ほとんど交流がない人でもFacebookでつながっている人がたくさんいます。友達がたくさんいる人でも、本当に信頼している人、困った時に助けてくれる強いつながりは5〜15人程度のグループです。そして密な交友関係を築けるのは心理的また脳がケアできる容量から150人程度が限界と言われています。

アドレス帳のデータが分析されることを嫌う人は少なくないと思いますが、人々が信頼感を抱く規模のつながりにフォーカスしたPreferの紹介グラフがもたらす価値に大きな可能性があるのも否めません。アドレス帳のデータをシェアするか、労働力の40%がフリーランスになる未来に向けてデータ共有とプライバシーの議論が再燃しそうです。

原稿: 山下洋一
サブカルチャーとテクノロジーの交差点に軸足を置いて、人や会社、文化、時事問題など幅広く取材しています。シリコンバレーで暮らし始めて10数年。PC産業の街がウェブ・ITの一大拠点に姿を変えるのを目の当たりにしてきました。ダイナミズムと人の面白さに魅了されて、このカリフォルニアの田舎街から離れられずにいます。

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