ITエンジニアのための勉強会・イベントレポート情報メディア

IT x スポーツ プロ野球界におけるIT活用の現在と未来
event

IT x スポーツ プロ野球界におけるIT活用の現在と未来

2017.08.18

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

6月28日、株式会社PE-BANK主催のイベント、「IT x スポーツ プロ野球界におけるIT活用の現在と未来」に参加してきました。今年の3月にはプロ野球の世界大会WBCが東京など世界各地で行われ、日本代表が史上初の6連勝をして準決勝に進みました。また、国内のプロ野球観客動員数も、球界全体で右肩上がりになっています。盛り上がりを見せるスポーツ界、とりわけ野球の世界で、ITが現在どのような場面で使われ、今後どのように発展していくのか、本稿ではデータスタジアム株式会社の須山晃次氏による講演をレポートします。

鶴田 展之

IT活用の過去から現在

日本プロ野球界では、2000年以降から現在まで、チームの強化のためにさまざまなIT活用の取り組みが行われてきました。大きく「強化系(次の試合にいかに勝つかを目的としたもの)」「編成系(継続的な強化を目的としたもの)」に分けて、その流れを振り返ってみましょう。

2000年ぐらいから、強化面では、「ベースボールアナライザー」「Play On Search(POS)」が各球団で使われはじめました。ベースボールアナライザーは、1球毎の球種やその投球の結果、打球の方向などを入力することで、ピッチャーやバッターの分析に役立てるもの。POSは、ベースボールアナライザーで入力したデータを基に映像を検索する機能を提供するものでした。ベースボールアナライザーは紙のスコアブックを置き換え、他に競合する製品のないデータスタジアム社が独占的に市場を形成することになります。一方、編成系では、査定には査定専用、メディカルチェックにはメディカルチェック専用など、用途に特化したシステムを個別に導入していて、統合的なシステムは存在していませんでした。

2008年から2013年ごろは、編成面でも強化面と同じようにシステムを使いたいという要望が増え始めましたが、まだ現実的にはExcelを使って分析を行うことが多く、複合的な分析や情報の蓄積が不十分でした。強化面では、ベースボールアナライザーに代わるツールを独自に作ろうという各球団も現れ、同社の独占状態が崩れはじめます。そこで2014年以降、プロ野球のデータ活用へのニーズや激化する競争を見据えて、データスタジアム社でも「ITの力で一緒に強い球団を作るパートナー」を目指した統合的なシステムへの刷新が進められてきました。

新しいシステムでは、球団各部署に情報が点在していて相互に活用できていなかった点を改善しています。スコアラーの入力するデータや、データスタジアム社が提供する映像・データを球団の各部門、たとえば選手の査定に活用したり、球団Webサイトに掲載したりといった仕組みが提供されています。また、複数ツール利用によるアカウント管理の煩雑さを解消し、各担当者の業務に合わせたパーソナライズも可能になりました。選手やスタッフにとっても、試合の映像・データが試合終了後30分程度で確認できる等、現場の要望を取り入れたシステムになっているそうです。

これからのIT活用

IT界ではディープラーニングやAI、センサーの利用等がトレンドになっていますが、その流れはプロ野球界も無関係ではなさそうです。これからのプロ野球へのIT活用について、すでにトレンドを踏まえた様々なアイデアが考えられているようです。

1.トラッキングシステム
スポーツにおけるIT活用というと、最近は「トラッキングシステム」の話もよく耳にするようになりました。「Trackman」「Statcast」といったトラッキングシステムを利用することで、テレビ中継の配球チャート表示を自動化したり、盗塁の際の走者のスピードや歩数、守備選手の落下点への移動経路や距離などをデータ化したりといったことが可能になります。メジャーリーグではすでにトラッキングシステムの各球場への導入が進んでいますが、日本のプロ野球でもテレビ中継で試験的に利用されたり、各球団が試合や練習に活用しはじめています。
2.VR
打つのが難しい球を投げる投手は敵チームにとって死活問題ですが、トラッキングシステムでデータを収集し、VRを使って軌道やボールの回転を再現すれば、より効率的なバッティング練習が行えるかもしれません。
3.AI
トラッキングで収集したデータを蓄積し、AIに学習させることで、これまで自力で考えなければならなかった練習メニューを、システムに「サジェスト」してもらえるようになるでしょう。また、AIによって選手のタイプを分析することもできれば、強化に必要な選手を的確にスカウトできる可能性があります。さらに、一流選手のノウハウや行動をAIで学習して指導に役立てることもできるでしょう。
4.ウェアラブルデバイス
スポーツに怪我は付きものですが、怪我はチームにとって大きな損失になるだけではなく、個々の選手の人生にも関わる大問題です。そこで、ウェアラブルデバイスを活用して選手のバイタルデータを収集することで、怪我を未然に防ぐことが考えられています。身体のデータをみながら、選手個々に異なる許容量を考慮した練習が可能になれば、故障の可能性を大きく縮小できるかもしれません。

まとめ

強いチーム、勝っているチームの試合は、球場まで足を運ぶ人が多いとデータが証明しています。入場者数が増えれば球団の収入が向上し、チーム強化に使えるお金が増え、さらに強くなるという好循環が生まれます。この好循環を生むためには、今後ますますITの活用が重要になってきます。映像を含め、現場で収集したデータを効率的に分析し、選手にいち早く提供することは、チームの強化にダイレクトに繋がって行きます。ピッチャーが投げたボールのスピンや軌道、バッターが打ったボールの角度などのデータをファンに向けて公開すれば、野球中継や各球団のWebサイトは今よりさらに楽しいエンターテインメントになるでしょう。純粋にスポーツ観戦を楽しむのもいいものですが、スポーツの裏側で活用されるIT技術を知ることで、熱い戦いが尚一層熱く見られるのではないかと思います。

原稿: 鶴田展之
qnote代表取締役。オープンソースソフトウェアを用いたシステムインテグレーション及びコンサルティングの傍ら、技術書を中心に多数の著述活動を行う。
なお、オフィスには7匹の猫がいる。

IT x スポーツ プロ野球界におけるIT活用の現在と未来

この記事はどうでしたか?

おすすめの記事

キャリアを考える

BACK TO TOP ∧

FOLLOW