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シリコンバレーの原点がここにあった!!ものづくりの祭典Maker Faire Bay Area 2017
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シリコンバレーの原点がここにあった!!
ものづくりの祭典Maker Faire Bay Area 2017

2017.07.20

 
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ものづくり好きのお祭りMaker Faire。メイカー・ムーブメントの総本山、シリコンバレーで行われたMaker Faire Bay Area 2017に行ってきました。今年で12年目ですが、リピーターが多く、来場者数はなんと15万人超。シリコンバレーというと優秀なエンジニアや学生をイメージするかと思いますが、会場内にいたのは変なものでも構わずに、ひたすら、ものづくりに熱中する人たち。子供から大人まで一堂に会して、ものづくりを共有できる。シリコンバレーの原点を実感できるイベントでした。

山下洋一

15万人を超える、ものづくり好きが集結

シリコンバレーの北側に位置するサンマテオ市で、Maker Faire Bay Area(メイカーフェア・ベイエリア)が開催されました。メイカー・ムーブメントを後押ししてきたDIY(Do It Yourself)雑誌「Make:」が主催するメイカーたちのお祭りです。米国各地、欧州、そしてアジアでも開催されるようになりましたが、「Make:」が創刊されたシリコンバレーはメイカー・ムーブメントの中心地であり、ベイエリアは総本山での開催という盛り上がりになります。

驚かされるのは、その規模です。会場のサンマテオ・イベント・センターは大きなイベント施設ではありませんが、カリフォルニア州のイベント会場なので大きな駐車場を備えていて、駐車場も全てイベント会場に使っていました。だから、会場は広大です。昨年のメイカーフェア・ベイエリアには約1,300人のメイカーが出展し、来場者数は約15万人でした。今年は昨年を上回る来場者数だったそうです。

巨大な作品やプロジェクトも余裕で置ける広大な会場、
写真は「等身大のマウストラップ」

ヒッピー・ムーブメントのように自由

それほど多くの人たちが集まるのに、車必須のカリフォルニア州で駐車場を取り払ってしまったのだから会場へのアクセスは「最悪」と呼べるものでした。それでも開催時刻になると、遠くに路上駐車をして長い距離を歩いてきたり、自転車、鉄道、カーシェアリングなど様々な方法で、わらわらとメイカーや入場者が集まり、すぐに会場入り口が埋めつくされました。必要なもの、作りたいものは自分で作る、ハッカー精神に通じるメイカー・ムーブメントは「自由」で「独立」していて、かつてサンフランシスコを中心に起こったヒッピー・ムーブメントと比較されることがよくあります。1969年に行われたヒッピーのお祭り「ウッドストック・ミュージック&アート・フェア」もニューヨーク市から遠く離れた農場が会場でした。近くに鉄道の駅すらありません。そんな最悪のアクセスの会場なのに、40万人を超える人たちが集まったことがウッドストックを伝説にしました。メイカー精神に引き付けられるように、困難なアクセスを乗り越えて15万人以上もの人たちが集まったメイカーフェアは、現代のウッドストックと呼びたくなります。

子供からシニアまで、男性も、女性も、人種も様々、メイカーフェアの参加者は多様

食やヘルスケアが新たなトレンド

メイカーフェア・ベイエリアは今年が12年目。メイカーたちの興味はどんどん変化しており、毎年参加していても新しいメイカーフェアに出会えます。ほんの数年前は3Dプリンターが大ブームでしたが、それからアマチュアでも正確な切削ができるコンピュータービジョンによるCNCマシンも台頭し、ホビーレベルでも年々工作の幅が広がっているのが一目瞭然です。ここ数年目立っていたドローンは今年も元気で、ドローンレースやドローンコンバット、フリースタイル飛行といった競技が盛り上がっていました。

メイカーフェアの新しい動きとして、今年は食の未来をテーマにしたエリアが設けられていました。小さなスペースで効率的にミニ農園を作れる室内グリーンハウス、タンパク質豊富な昆虫食、ビールの搾りかすを使ったグラノラバー、アレルギーの原因になる食材(ナッツ類、卵、小麦など)を使わないエナジーバー、形や色が悪くてスーパーなどで販売されていない食材(米国では全体の3〜4割がはねられているそうです)を使った100%フレッシュジュース等々。サンフランシスコから日本に進出して話題になったダンデライオンチョコレート(シングルオリジンのカカオ豆とオーガニックのきび砂糖だけでつくるBean to Barチョコ専門店)も参加していました。健康的な食品や時短メニューからオリジナルのスーパーフード、継続的で無駄をなくした食材提供サイクルまで様々なアイディアが集まっていました。

メイカーたちの食や農業への関心の高まりが感じられた2017年

また、ヘルスケア関連のプロジェクトの増加も今年の特徴の1つでした。太陽光を用いた消毒ツール、Arduinoベースの口で操作できる低価格入力デバイス、片手の動きで操作できるタッチスクリーンUI、耳に装着して脳波からユーザーの精神状態をトラッキングするツールなど。子供が診察を楽しめるように聴診器につけるアクセサリなど、現場の人たちのアイディアによる小物もありました。

多種多様、ごった煮感こそメイカーフェア

メイカーフェア・ベイエリアの魅力を一言で表すと多様性です。東京のメイカーフェアをご存じの方は理科・工作が好きな子供や大人が集まるイベントを想像すると思いますが、メイカーフェア・ベイエリアはなんでもありです。企業のブース、優れた技術や知識を伝える作品やプロジェクトがたくさんある一方で、それらに混じって「俺が作ったんだ!」という意気込みだけが伝わってくる作品がごろごろしています。たとえば、はずみ車動力の人形をただ巨大にしただけのロボットとは言いがたいロボットとか、「なんじゃ、こりゃ!」と言うしかないものがそこら中に溢れています。クラフトの建物に入ると、ぼろ布が山と積まれて、どれが作品なのか分からない……。運動エネルギー回生システムの説明を聞いていたら、その横で巨大な火柱が打ち上げられて大歓声が起こったり、稲妻を発生させるテスラコイルも置かれていました。理科・工作のイベントというより、サーカスのような、なんでもありの雰囲気です。変なものであろうと、かまわずに作ってしまう、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に出てくるブラウン博士(ドク)の研究所みたいです。

だから、見て回るだけでもワクワクします。米国でこうした子供の知育になるイベントでは普通、アルコール類の販売は行われませんが、フードトラックや屋台が並ぶエリアではビールも飲めます。灼熱の太陽の下、駐車場でのイベントのため、冷えたビールがとてもウマい!大人のイベントであり、子供のイベントであり、ベテランも素人も、誰でも一緒になって存分に楽しめます。

屋外のイベントのオーディオシステムの電力を子供達が自転車で発電
大人気、メントス・コーラの噴水
スターウォーズの新作が続いて、こちらも新作が増えているR2-D2ビルダーズクラブ

メイカー・コミュニティがもたらす新たな産業革命

そんな老若男女を問わない繋がり、つまりコミュニティがメイカー・ムーブメントの核なのです。「何かを作りたい」と思って、すぐに作れる人はいません。でも、それぞれに知識、技術や経験を持った人たちのコミュニティがあって、情報交換を行い、協力し合っていけば、アイディアを現実にする道すじが見えてきます。

素人レベル丸出しの作品でも「オレが作ったんだ!」という価値が認められるので、子供たちや未経験者が気軽に入ってくることができます。メイカーの精神は「アクティブ・ラーニング」です。learning-through-doing、ソーシャルな環境の中で行動を起こしながら学び、成長します。特に子供たちは何かを作るのが大好きなので、実際に作らせるとユニークな力を発揮します。そして失敗から学び、チームワークを生かすことを身に付けていきます。

Googleによる、はんだ付けのワークショップ

「メイカーズ」の著者であるクリス・アンダーソン氏は、メイカー・ムーブメントを「新たな産業革命」と表現していました。インターネットの普及によって、メイカーたちのネットワークが広がって協創が容易になりました。3Dプリンターやレーザーカッターのようなデジタル工作機械がパーソナルなものになり、クラウドマニュファクチャリングを利用した本格的な製造も身近になっています。デジタルと製造が融合して、誰もが製造業の起業家になれる時代の到来です。

アンダーソン氏の指摘は的を射ています。インターネットなくして、今日のメイカー・ムーブメントの広がりは無かったでしょう。デジタルと製造の融合、ものづくりの共有 ……、小難しく表現するとそうなのですが、メイカーたちの心はもっとシンプルです。子供の頃に周りにいた変なものを手作りする大人が気になって、真似したり、教えてもらう内に自分も熱中してしまう。ものづくり好きが集まって、一緒にワイワイやることがメイカー精神なのです。それをメイカーフェアは思い出させてくれます。それはかつてシリコンバレーにあちこちで見られたガレージ起業に通じる精神であり、だから世代が変わって、ネット起業の時代になってもシリコンバレーからメイカー・ムーブメントが広がったのでしょう。

原稿: 山下洋一
サブカルチャーとテクノロジーの交差点に軸足を置いて、人や会社、文化、時事問題など幅広く取材しています。シリコンバレーで暮らし始めて10数年。PC産業の街がウェブ・ITの一大拠点に姿を変えるのを目の当たりにしてきました。ダイナミズムと人の面白さに魅了されて、このカリフォルニアの田舎街から離れられずにいます。

シリコンバレーの原点がここにあった!!ものづくりの祭典Maker Faire Bay Area 2017

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