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「GMOエンジニアトーク 先端IT技術を学ぶ会」に行ってみました
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「GMOエンジニアトーク 先端IT技術を学ぶ会」に行ってみました

2017.07.19

 
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深層学習、ブロックチェーン、AR/VR、旬の技術テーマを一度に学べる勉強会!
旬の技術キーワード「深層学習」、「ブロックチェーン」、「AR/VR」の3つのテーマを一度に聞ける勉強会って、実はめったにないですよね?ここはやっぱり聴いておかねば!ということで、「GMOエンジニアトーク 先端IT技術を学ぶ会」(主催 : GMOインターネット株式会社)に行ってみました。

Misa

会場は渋谷セルリアンタワー11階のGMOインターネットグループ内のシナジーカフェ「GMO Yours」。普段は従業員向けのカフェテリアですが、今日はセミナー会場になっています。かなりの席数が用意されていましたが、定刻を少し過ぎたところでほぼ満席となりました!

GMOエンジニアトークとは

GMOエンジニアトークは、同社の次世代システム研究室の研究開発の成果を一般向けに情報提供する機会として、春・秋の年2回程度のペースで開催されています。GMOインターネットが新技術を実サービスに利活用するために行っている研究開発なので、テーマに多様性があるんですね。納得です!

IoT領域でのブロックチェーン実践

最初のテーマはブロックチェーン技術の応用事例です。ブロックチェーンは、ビットコインなどの仮想通貨を運用するための台帳技術として注目されているものです。

GMOインターネット株式会社 次世代システム研究室 Mさん

ブロックチェーン技術は、トランザクションを集中管理する従来技術とは異なり、複数ノードに分散して情報を記録管理します。これによって実現される3つの特徴があります。

○一極集中ではなく、複数ノードで情報を記録管理するので「落ちない」
○構築されたブロックやトランザクションを共有するので「消えない」
○各ブロックがハッシュ値によって繋がっていて「改ざんできない」
このうち「改ざんできない」仕組みについて補足します。ブロックチェーンでは、新しいブロックに対し、前のブロックのハッシュ値が入力されます。ハッシュ値には1ビットでも元データに変更があると算出される値が大きく変わり、不可逆であるという特徴があるため、ブロック内のデータに対して1ビットでも「改ざん」があると後続のブロックの整合性が全て崩れてしまいます。そのため、改ざんできないのです。

こうした特徴を持つブロックチェーン上で、契約をプログラム化するスマートコントラクトには、以下の機能が備わっています。

・いつ
・だれが
・何を記録したかが
第三者の保証なしに証明される。

こうした特性を生かそうとした取り組みが、本人だけが受け取れる宅配ボックス「スマート宅配ボックス」の実証実験です。GMOインターネットで提供しているプラットフォーム「Z.com Cloud ブロックチェーン」(https://cloud.z.com/jp/products/blockchain/)を活用して、GMOインターネット株式会社、GMOグローバルサイン株式会社、株式会社セゾン情報システムズの3社が共同開発しました。

【紹介動画】「本人のみが受け取れる宅配ボックス」の実証実験
https://www.youtube.com/watch?v=84UZeNhXgxI

スマートコントラクトでのプログラミングでは、デプロイ(deploy)されたプログラムに対してアドレスが振られますが、そのアドレスに対して呼び出しを行うという点だけを見ると、Java等の一般的なプログラムと大きな差異はありません。

しかし、コントラクトを一つずつトランザクションに入れてデプロイしなければならないなど、プログラミング自体がとても大変であり、バグ改修が困難であり、確定に時間がかかります。その他、データの記録に仮想通貨が必要(つまり書込みを行うエンドユーザが仮想通貨を保持しなければならない)というスマートコントラクト特有の課題があります。
「Z.com Cloud ブロックチェーン」では、これらの課題をほとんど解消し、スマートコントラクトアプリケーションを構築しやすいプラットフォームを提供しています。

ブロックチェーンは、世界ではSpells of Genesis(ゲーム)、Ujo Music(音楽配信)、PINS(オープンなポイント基盤)、不動産登記、公文書管理、投票(株主総会、直接民主主義投票)、医療データ管理などに利活用が検討されています。

GMOインターネットでもこれらの事例を参考にしながら、スマートコントラクトアプリケーションのプラットフォーム構築に求められる機能を洗い出すため、様々なスマートコントラクトアプリケーションの検討を行ってきました。実証実験を成功させたスマート宅配ボックスの他に、ゲームのコンテンツ管理、画像や動画などの個人所有データの管理、サービスポイントの管理、KYC(Know Your Customer、顧客確認)、特許アイデアの保管、遺言の保管、お薬手帳・カルテ管理などを検討しました。

有用性が認められない分野もありますが、現状で事実の確認に一定の費用をかけている分野に対してブロックチェーンが適しているのではないかと考えています。

モバイルAR技術の最先端 Google Tangoを
活用してバーチャル道案内スタッフを実現してみた

続いては、モバイルAR技術「Google Tango」の活用事例です。Google Tangoの強みを生かしたバーチャル道案内スタッフの開発事例です。

左:GMOインターネット株式会社 次世代システム研究室 Kさん
右:ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社製 オープンソース系アイドル ユニティちゃん

ご自身が来日して何度も道に迷った経験からこのテーマを選ばれたそうです。案内してくれるスタッフの少なさや言葉の壁があって、説明されても伝わりづらい外国人旅行者などに役立つものが目指されました。
今回はバーチャル道案内スタッフとして無料で使えるオープンソース系アイドル、「ユニティちゃん」を採用し、「Google Tango」を利用して目的地までバーチャル道案内スタッフが誘導してくれるシステムを開発しました。
マーカーレスAR/MRプラットフォームであるGoogle Tangoは「奥行感知」「モーショントラッキング」「領域学習」の技術で、屋内のナビゲーション向けトータルソリューションとして提供されています。

・奥行感知機能:赤外線センサーで環境内の物体を感知し、奥行きを把握
・モーショントラッキング:ユーザが端末を持って移動すると、その動線を追跡
・領域学習機能:空間領域の特徴を学習し、空間領域を認識

ハードウェアは、Tango対応モデル「Lenovo Phab2 Pro」を使用しました。奥行感知のための赤外線センサーとモーショントラッキングセンサーが搭載されています。

開発で解決すべき課題は以下の通りでした。

①バーチャル案内スタッフを地面に立たせる、動かす、喋らせること
実装:ユーザが端末画面にタッチしたときにバーチャル案内スタッフが現れること。
奥行感知機能を活用し、Google Tangoは赤外線を使ったTOF(Time Of Flight光の到達時間)で距離を計測し、ポイントクラウドの形で奥行情報を保存する。画面にタッチした位置を記録し、ポイントクラウドから投影すること。

②奥行きのレンダリング
従来は端末カメラのキャプチャ画像に画像を重ねるために現実感が薄かったのですが、Google Tangoの奥行き感知機能を生かして、実物体の後ろにレンダリングすることが簡単にできました。ポイントクラウドデータと深度のbufferingをかけて、重なっている部分だけをレンダリングしないように判断させることができます。

③デバイスの動き、位置、向きを把握してバーチャル空間に反映すること
実装:ユーザが端末を持って、後ろからバーチャル案内スタッフについて行くこと。
Tangoのモーショントラッキング(動線追跡機能)を活用。魚眼カメラと慣性計測ユニット(IMU)により、カメラが撮影した場所の視覚的な特徴に基づいて、画像フレーム地点からの移動距離を計算する領域特徴ベースのトラッキング手法を使用しています。

Tango端末を開始したときに撮影した画像フレームがスタート地点となり、そのフレームからの移動で計算するため、途中でシャッターを押したり、再起動するとトラッキングできなくなり、記録されません。端末に内蔵されたIMUで端末がどの方向に向いているかをトラッキングできます。

④目的地への経路を学習して道案内できるようにすること
手順:端末を持って周りの空間を記録し、その空間にマーカーを追加すること。
Tangoの領域学習を利用。人間の空間学習と同じスキームで、特徴的な場所をランドマークとして記憶し、特徴が多いほど認識の精度は上がります(逆に言うと、特徴が乏しい場所では正確なトラッキングが難しい)。ユーザが再びそこを訪れたとき、領域記述ファイル(ADF)に保存した情報とランドマークの特徴をマッチングして同じ場所であることを認識できます。学習した空間にはバーチャルマーカーを追加することができ、バーチャルマーカーを案内先まで追加し、空間とマーカーの情報を読み込み、バーチャル案内スタッフを動かすことができます。

バーチャル案内スタッフ デモ
空間を記録し、追加したマーカーに沿ってバーチャル案内スタッフが動きます。

この事例を通して、以下の点がわかりました。Tangoに対応するデバイスが増えれば、Tangoはさらに広がっていくと考えています。

<長所>
・学習速度、空間認識が早い
・動線追跡、ナビゲーションの精度が高い
・GPSが機能しない場所での案内に役立つ

<課題>
・Tangoをサポートするデバイスが少ない

深層学習は金融市場を
シミュレーションすることができるか?

本日最後のテーマは、AIの金融市場での活用です。既存の画像の模倣ではなく、自然な特徴を押さえた画像を自動生成できるGAN(Generative Adversarial Networks)の画像生成能力を生かし、マーケットの値動きをシミュレーションすることができるかという実験の発表です。

GMOインターネット株式会社 次世代システム研究室 Tさん

まず、AIというテクノロジーが、金融業界にもたらすインパクトについて、ヘッジファンド業界の動向を例としてご説明します。
2016年、ヘッジファンド業界の明暗を分けたのはAIの活用でした。AIを活用したヘッジファンド群が利益を上げ、従来の伝統的手法のヘッジファンドは軒並み赤字という対照的な結果が出ています。

今回の研究では、どんな市場環境になっても生き残れる強いAI、いわば“金融分野のAlphaGO”というべき強い資産運用AIを開発することを最終目標としています。

強いAIを作るためにはシミュレーション環境の整備が必須です。

今回の発表では、強い資産運用AIを育てるための金融市場のシミュレーション環境を構築すべく、挑戦した結果を皆様にお伝えします。

まず、従来の金融市場のシミュレーションには2つの方法があります。
・ヒストリカルシミュレーション → 過去の値動きを利用して学習させる。現在の主流。
 特徴:実装は楽、再現性は確実だが、過去の値動き以外は再現できない。

・モンテカルロシミュレーション → 統計的なアプローチ
 特徴:さまざまなパターンが作れる。現実とは乖離した値動きもしてしまう。

いずれのアプローチでも、AIの育成に使用できるトレーニングデータ量は不足してしまうのです。この課題を解決すべく、深層学習の新技術GANを活用した新しいアプローチを試みました。

GANは、これまでは困難だった、絵や写真、イラストなどを「創造する」処理を実現したAIの実装手法です。Generator(創造する側)とDiscriminator(見抜く側)という2つのAIが競い合って成長するのが特徴です。このようなAIの構造を生成的対立ネットワーク(Generative Adversarial Networks、頭文字を取ってGAN)と呼びます。
2つのAIが競い合うことで勝手にレベルアップしていくので、人間がデータを作る手間が大きく軽減されるのです。

今回の研究では、GANを活用して、視覚的なアプローチで金融市場をシミュレーションするという試みで、外国為替市場の値動き(ドル円相場)をGANに学習させ、ドル円のチャートの自動生成および、チャートの真贋を判定させる実験を実施しました。

人間は視覚を通して(=具体的には、チャートの形を見て)市場の値動きを判断しています。そのことを踏まえ、人間の感覚に近いアプローチで市場の値動きを再現できないかと考えたのです。

実験環境ですが、開発言語はPython3.5、深層学習フレームワークにはTensorFlow、GPUはNvidia GeForce GTX1070を用いました。そして、アルゴリズムにはDCGAN(=Deep Convolutional Generative Adversarial Networks)を使いました。

Generator、Discriminatorの役割は以下の通りです。
・Generator:ノイズベクトル(乱数)から画像を生成
・Discriminator:Generator が生成した画像を判定

Discriminatorは、本物を本物と判定し、ニセモノ画像をニセモノと判定するように最適化処理を設定します。一方、Generatorは、Discriminatorを欺くことができるほど評価されるように最適化処理を設定します。

それぞれの最適化処理を設定した後、学習を実施します。学習データには、外国為替市場の2001年1月1日から2015年12月31日までの約15年分のドル円市場のチャート画像を用いて、一度に64枚ずつチャート画像を読み込んで学習しました。バッチ学習というもので、一度に複数の画像を学習させることができるので、スピードの改善につながります。今回の場合、バッチサイズ(=一度に読み込む学習データの数)は64となります。

その結果、半日程度の学習で自然なチャートを生成できるようになりました。

次に、チャートの識別能力を検証しました。Discriminatorが、実物を実物と判定し、偽チャートをニセモノだと見抜くことができるのか確かめます。

まず、プログラムを用いて生成した偽チャートをランダムに抜粋し、検証した結果、実物は正答率98%に達し、偽チャートを100%見抜くことができました。

さらに、モンテカルロシミュレーションで作成したチャートでも、実物の正答率96%、偽チャートを100%見抜くという素晴らしい結果でした。
CNN(畳み込みネットワーク)を用いているため、画像認識に関しては人間レベルを超えているのではないかという印象を抱きました。

参考:モンテカルロシミュレーションで生成したチャート

結論

金融市場の値動きシミュレーション能力に関しては自然な値動きを再現できているので(=少なくとも、人間の感覚では違和感を覚えない)、トレーニングデータとして使えるのではないかと考えています。
ディープラーニングを応用することで、資産運用AIをつくることはできそうだという手ごたえを感じました。このシミュレーションを使って、金融市場がどんな値動きをしても生き残ることができる最強の資産運用AIを作りたいと考えています。

話題の技術を利活用して
何ができるかを考える取り組み

それぞれのテーマで旬の技術を利活用した実験を行われていますが、いずれも最新技術をどのように生かせるかという可能性の模索、発見のためのチャレンジだと感じました。成果物そのものではなく、その過程で得られた知見こそ重要であり、それを共有させてもらえる貴重な機会だったと思います。

原稿: Misa
ITベンチャーで企画、人材開発、広報などを経て独立。現在はコンサルタント、ときどきライター。
ライターとしては、IT系以外、アニメ・マンガ、車から美容・健康まで何でもチャレンジ中。

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