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IoT ALGYAN新年明けまして勉強会「本気で語り合おうオープンソースのドローン開発とIoTの事」
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IoT ALGYAN新年明けまして勉強会
「本気で語り合おうオープンソースのドローン開発とIoTの事」

新年早々の勉強会の会場は、品川グランドセントラルタワー内のマイクロソフト社!新しいビジネスのネタとしてしばしば話題になっているドローンのオープンソース開発とIoTをテーマとしたIoT ALGYAN新年明けまして勉強会「本気で語り合おうオープンソースのドローン開発とIoTの事」に行ってきました。

Misa

IoT ALGYANって?

この勉強会を主催するIoT ALGYAN(あるじゃん)は、“日本から世界へ、明るく楽しくIoT(The Internet of Things)を広めよう!”という趣旨の有志によるコミュニティです。当日の運営スタッフも皆さん、ボランティアで参加されているそうです。
IoTあるじゃん(ALGYAN)は、北海道から沖縄まで全国に7つもの支部があり、各地でハンズオンやアイディアソンなど、ユニークな勉強会やイベントなどを開催されています。1,000人を超えるメンバーがFacebookなどで情報交換、交流しながら、IoTを盛り上げようと熱く活動されています。IoTに興味のある方なら誰でも参加でき、会費無料とのこと。ちなみに、ALGYANとは「All Gadget Your Alliance and Network」を略した造語だそうです。

IoT ALGYAN(あるじゃん)公式サイト
http://algyan-web.azurewebsites.net/

Facebookグループ「IoTあるじゃん(ALGYAN)本会」
https://www.facebook.com/groups/ioytjp/

受付を済ませると、アンケートや会場案内のフライヤーと一緒に駄菓子を渡されました。
これって……?

IoT ALGYAN(あるじゃん)理事長の
小暮敦彦さんの発声で勉強会がスタート!

今回は、講演とパネルディスカッションで、ドローンの技術的核心や展望などを通じてIoT技術の現在と未来を語り合おうという、新年にふさわしいテーマです。
そして、何と今回はスポンサー企業からビールの提供があり、パネルディスカッションは、登壇者、一般参加者、スタッフがアルコールを交えて語り合うという趣向。駄菓子はビールのお供だったんですね(笑)。

1.講演「本気で語り合おうオープンソースの
ドローン開発とIoTの事」

組込み技術からネットワーク技術まで意欲的かつ精力的に活動を続ける、ドローンワークスの今村博宣氏の講演です。本来なら3~4時間はかかるという密度の濃い内容です。

ドローンワークス株式会社 代表取締役 今村博宣氏

IoTの要「LPWA」として注目の「LoRaWAN」

そもそもLPWAって何?
LPWAは、IoT機器向けの低消費電力で長距離通信を実現するインフラとして注目されています。英語のLow Power, Wide Areaの略語で「低電力広エリア」を意味し、省電力と広いエリアのカバーを両立させます。LPWAネットワークにより、これまで無線通信ができなかった設備や機器などの通信接続が可能になります。だから「IoTの要」なんですね!

LoRaとLoRaWANの違いは何か?

「LoRa」はLPWAの一種である無線通信規格、「LoRaWAN」は通信システムです。
LoRa(Semtech社)のLoRa変調方式を使用したモジュールであるのに対し、LoRaWANはLoRaWAN を推進する業界団体LoRa Allianceによって標準化された通信システムで、通信プロトコルが規定されています。

LoRaWANの特徴

まずは、LoRaWAN以外のIoTの説明から。これまでのIoTは、デバイスから3G/4GLTEなどで送信したものを基地局から受け、サーバに送る形でした。LoRaWANは、デバイスからゲートウェイサーバまでの通信がLoRa変調で行われます。

LoRaWANの特徴は5km程度の長距離通信が可能なこと。従来は100m程度、100mと5kmですから使用範囲も用途も飛躍的に広がります。
ただし、LoRaWANは転送速度が600~900bps程度と遅いため、データを連続して送るのには向かず、毎分送信するといった使い方があっているそうです。

LoRaWANは、LoRaWANのデバイスからゲートウェイサーバ、ネットワークサーバまでの通信を規定するシステムです。
例えば、LoRaWANデバイスの送信可能な範囲に2台のゲートウェイサーバがあった場合、両方がデータを受信し、どのゲートウェイサーバのデータを採用するかはネットワークサーバで判断するという仕様になっています。LoRaモジュール、LoRaGPSBOXが用意されています。

LoRaWAN普及に向けたコミュニティーラボ

LoRaWANのコミュニティも発足しています。DMM.make AKIBAにLoRaWANのゲートウェイが常設され、LoRaWANのデバックができるコミュニティーラボとなります。全国10ヵ所ほどに作られるそうです。
オープンイノベーションラボ「KOIL」(千葉県柏市)にも、LoRaWANのゲートウェイが設置されています。KOILの会員でなくても利用することができます。

参考:KOIL (柏の葉オープンイノベーションラボ)
http://koil.jp/

例えば、KOILがある柏市に3ヵ所のゲートウェイを設置すると、柏市全域からデータを受信することが可能になります。今村氏はこの実証実験を柏市に提案しているそうです。柏市がドローン産業のインキュベーターになるかもしれません。

オープンソースで開発するドローンプロジェクト「DCoJA」の紹介

産業用では人が多い場所でドローンを飛ばしたいというニーズがありますが、現行の航空法では禁止されています。例えば、イベント会場などでドローンを飛ばすことができれば、新しいサービスができるようになります。

ドローンワークスは安全な産業用ドローンの普及とサービスの提供をめざし、ヘリウムを使用したバルーンタイプのドローンを開発しました。素材はビーチボールと同じ塩化ビニル、ヘリウムの効果で約6kgの機体が500g程度に軽量化され、落下時の危険が軽減されます。これなら当たってもケガはなさそうそうです。

現実のドローンの性能と求められる性能のギャップ

現実のドローンの性能について、ホバリングに必要な電力と飛行時間で説明されました。

<必要な電力>
 離陸重量15kg  48V/50A

離陸重量25kg  48V/100A ※電子レンジ4台分に相当
市販品で最大容量のリチウムポリマー電池20Ahを2個直列で使用、16~20Ahを確保。

<飛行時間>     理論上   実際の飛行時間
 15kgのドローン  約30分 → 15~20分程度
 25kgのドローン  約10分 →  7~8分程度

ドローンを空撮や農薬散布に使用する場合は、さらに撮影機材や農薬を搭載しなければなりません。 小型ウェアラブルカメラGoProの500g、農薬なら1反分800ccからと実用では800g~4kg程度の積載量が必要ですが、現実はペットボトル2本を積んで15分飛行するのが精一杯ということです。

どの分野ならドローンが使えるのか

物流では効率が悪いことがわかりました。では、ドローンは何に使えるのか?
現実のドローンの性能で効率がよいのは写真撮影です。写真撮影を活用した各産業分野向けのサービスを考えるのが現実的です。コンシューマ用PCの普及後に産業用PCが出現したように、産業用ドローンの登場が待たれているではないでしょうか。

産業用ドローンのあるべき姿

現在はドローン本体のサービス層だけが注目されています。安全な産業用ドローンでは、デバイスそのものの信頼性が重要です。
産業用ロボットにはデバイスに温度センサーや回転センサーが付いていて、デバイスの状況に応じた対処が用意されていますが、現在のドローンにはデバイスの状況を知る術がありません。
また、ドローンを有効活用するためのコネクタやプロトコルを標準化し、他社パーツや機材と連携できないと産業としては発展しない、というのが今村氏の考えです。

デバイスの情報を送信するセンサー付きコアデバイスと、デバイスからの情報を受け取れるフライトコントローラが揃って初めて、安全な産業用ドローンが作れるのです。

産業用ドローンには、デバイスの状況を把握するセンサーが40~50個は必要です。現在のドローンのセンサーは5~6個なので、10倍近くになります。今後、これらの情報を集積するクラウドサービスや安全運用のサービス、各種業務向けのサービスが必要になります。
センサーとクラウドがつながるドローンはIoTであり、ドローンのビッグデータを機械学習やディープラーニングすることでさまざまなサービスができるのではないかということです。
「ドローンそのものがIoT」という言葉に目からウロコが落ちた気分です。

ROSとAzureの通信デモ

実際にドローンのセンサーから情報をリアルタイムでクラウドに送ることができます。ROSを搭載したLinuxベースのドローン用フライトコントローラと、MicrosoftのクラウドサービスAzureを使ったデモです。

  • <デモの概要>
  • ①ROS(ロボットOS)上のトピックでセンサーの情報をとる
  • ②MicrosoftのIoT Hubクライアントを使用してAMQPでIoT Hubにデータを送る
  • ③Stream Analyticsを通して、EventHubやTableStorageに送る
  • ④Power BIで見る
フライトコントローラから送られたセンサー情報の画面

オープンソースでドローン開発ができる!

ドローン開発をやってみたい人がいてもゼロから開発するのは困難です。しかし、SDK(ソフトウェア開発キット)などを利用すればある程度は可能になります。

ドローン業界は、本体や搭載製品の設計・開発から製造、販売まで自社で行う中国のDJI社と、フライトコントローラをオープンソース化している3D Robotics社の2つの流れで、iPhoneとAndroidのような構造になっています。その中で発足したドローン用オープンソースプロジェクト「Dronecode」は分裂してしまい、現在はLinuxベースのArduPilot系のフライトコントーラがオープンソースとして存続しています。

日本発のオープンソースドローンプロジェクト
「DCoJA」

今村氏が中心となっている、オープンソースドローンプロジェクト「DCoJA」では、フライトコントローラから実際のコントローラ開発など3つのプロジェクトが進行しています。

デモ Yatagarasu、Hachidori

Yatagarasu(八咫烏)Linuxベースのフライトコントローラ

64bitマルチコアSoc、96Boards用のメザニンボードにフライトコントローラに必要な機能を搭載、気圧センサー、温度センサーなどを複数個ずつ搭載しています。条件の違うセンサーを組み合わせて信頼性を上げる実験を続けています。

Hachidori(蜂鳥)制御部分を96BoardsやPC上のLinux(Ubuntu)に置いた小型ドローン

センサーからのデータをWifiでPCに送り、PCで姿勢制御などを演算、結果をドローン本体に送って飛行、室内でも試験飛行ができるよう小型化されました。

Hachidoriはソフトウェアの開発人口を増やし、信頼性が高まることを願って開発されました。

  • <Hachidoriの特長>
  • ・本体ファームウェアはデータ送信機能のみ。バージョンアップの必要はほぼない。
  • ・制御部分のプログラムはPC上にあるので、容易にソフト開発ができる。
  • ・デバッグ時も比較的安全に試験飛行ができる。

Hato(鳩) RaspberryPiでプロポを作るプロジェクト

Hatoはロボット用の新電波帯域に対応する送受信機の開発プロジェクトです。ARMプロセッサを搭載したシングルボード コンピュータ、RaspberryPi(通称ラズパイ)にカメラ等を付けて、ドローン専用のプロポを作ることもできます。

本気のドローン、そしてまとめ

JASA(一般社団法人組込みシステム技術協会)、MCPC(モバイルコンピューティング推進コンソーシアム)で、ドローンに対応する会議が発足しています。その他にも、組込み技術に関連する団体と連携して、ドローン市場だけでなく、組込み業界全体で取り組む動きが始まっています。ここが、本気のドローンという点です!

  • ・物流などは効率が悪く、写真撮影が最も効率がよい
  • ・ドローンはプロペラがついたロボット
  • ・ドローン産業向けのデバイス、ソフトウェアなどの市場は大きい
  • ・ドローン本体だけでは売れなくなっていく

最後に、モバイル普及でWeb系技術者の人材移動が起きたように、組込み系技術者が大きく動くのではという予想で締めくくられました。

ビールスポンサーのライトニングトーク

休憩を挟んで、ビールのスポンサーのライトニングトークです。
株式会社リブセンス 転職ドラフトプロジェクト 新規事業企画 千田拓二氏
ITエンジニア向けのイベントにビールを提供するキャンペーンを実施しています。

2、来場者参加型パネルディスカッション

新たに登壇した太田氏、マラヴィタ氏のテーマについてのコメントで、パネルディスカッションがスタート。来場者の質問にパネラーが回答する形で進められました。

パネラー:
日本マイクロソフト株式会社 デベロッパーエバンジェリズム統括本部 オーディエンステクニカルエバンジェリズム部 エバンジェリスト 太田寛氏(左)
STマイクロエレクトロニクス株式会社 システム・ソリューション技術部部長 マッテオ マラヴィタ氏 (中央)
ドローンワークス株式会社 代表取締役 今村博宣氏(右)
モデレーター:IoT ALGYAN 理事長 小暮敦彦氏

太田氏からAzureのIoT向けのサービスやIoTに本気で取り組んでいきたいという想い、マラヴィタ氏から、アメリカや中国でドローンのアプリケーションの進歩が早かったのはオープンソースのプロジェクトが使われたから、というコメントがありました。

Q;ドローンという産業分野は
どのように変わっていくか

半導体メーカーから見たドローン市場(マラヴィタ氏)

半導体だけでなく、全ての技術を持つ自社の強みを出せると考えている。NIDEC(日本電産)とモータードライバを作り、EV(電気自動車)の技術を転用もできる。複数メーカーで製品が使われ、昨年のトップカスタマーにドローンメーカーが入っていた。技術だけでなく、ビジネスとしても良い顧客になっている。

ドローンの中身を開発する立場から(今村氏)

自分としてはロボットをやっているつもり、ロボット市場と考えれば100%広がる。
儲けどころは間違いなくクラウドサービス。国産にこだわる必要はなく、海外製品の中身の30%が日本製であるように、ドローンでも中国にどう使ってもらうかを考えるのが日本の組込みが生き残る道ではないか。

クラウドサービスについて(太田氏)

ドローンに数十個のセンサーが搭載されると、PCではダウンロードできないデータ量になる。だからこそのクラウド。データ自体は意味がないものだが、時系列で分析すれば有効になる。そのためにはまずデータの蓄積が必要。Azureは5TBまで保存でき、ペタ級のデータを格納し、クエリやAIも使用できるサービスもある。組込み系エンジニアは、VBAやポワーポイントと同じようにクラウドを活用してほしい。

Q;日本はドローン開発がなぜ遅れたか

日本のドローン開発が遅れたのはオープンソースを使用しなかったから。日本では責任問題を考えてオープンソースを使用しない。3Dプリンタも同じ現象が起きていて他の分野でも広がると思う。どこかで腹をくくらないと(日本の製造業は)負け続けることになる。リーン開発のような、試作から量産までのスピード重視した考え方も重要。

Q;日本品質で勝負するか、開発スピードか

自動車と同じく、ドローンにも日本品質が必要なはずだが、国産ドローンは中国のパーツを集めた製品を販売している。安全にしなければいけない部分こそ、日本が頑張らなければならない。オープンソースがいけないなら、AUTOSAR(車載ソフトウェアの標準化活動)のように、ドローンをいろいろな団体が認定できる状況を作る必要がある。

その他、ドローンの自動飛行、化石燃料や全天候型のドローン、ドローン専用デバイスの必要性、ドローン運用のガイドライン、免許制や法整備、DCoJAの活動など、予定時間を超えて活発なディスカッションが続きました。

ドローンの印象を変えた勉強会

これまでドローンはラジコン飛行機の延長にしか思えず、産業としても玉石混交で曖昧な印象を抱いていました。そもそも、IoTという視点でドローンを考えたことがありませんでした。ですから「ドローンはプロペラが付いたロボット」という言葉は印象的でした。ドローンのモヤモヤした印象が払拭されました!

原稿:Misa
ITベンチャーで企画、人材開発、広報などを経て独立。現在はコンサルタント、ときどきライター。
ライターとしては、IT系以外、アニメ・マンガ、車から美容・健康まで何でもチャレンジ中。

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